「IwaiCosmo Weekly Letter」
2023年7月31日日本株~日銀イベント通過で決算発表が焦点に~
岩井コスモ証券投資調査部
■日本株~日銀イベント通過で決算発表が焦点に~
■予想レンジ(7/31〜8/4) 日経平均株価 32,700円~33,400円
先週の日経平均株価は454円高と反発。中銀イベントや決算発表を巡り、レンジ内で落ち着かない値動きが続きましたが、海外株高や半導体関連の見直しムードを支えに下値買い姿勢を改めて示しました。日銀YCCの運用柔軟化を受け28日に急落を含む乱高下に見舞われましたが日本株の出遅れ修正気運は保たれていると見ます。
本格スタートした企業決算では第1四半期の増益や通期見通しの上振れ傾向を確認、円安や自動車挽回生産、良好な国内消費が支えとなり、先行き業績への期待が維持されています。欧米株式堅調のなか、日本はひと月程日柄調整を強いられましたが、良好なファンダメンタルズを支えに再度上値追いとなる可能性は十分ありそうです。
今週はトヨタ、メガバンク、商社や鉄鋼などハイテク以外の主力企業決算が注目です。全体がもたつくなか、高配当50指数、内需株指数、東証バリュー指数が相次いで高値を更新する等、例年通り9月末配当に向けた割安株物色の気運が高まっています。好業績を確認することで、こうした流れも日本株の底堅さに寄与すると見ています。
■日本株~週間注目銘柄~
・三菱UFJ(8306) 収益高水準、利回り等還元姿勢魅力。日銀政策思惑も意識。A
・ホンダ(7267) 自動車挽回生産、円安メリットで大幅増益期待。PBR0.6倍割れ。A
・H2O(8242) 関西の百貨店主軸に食品スーパー展開も急。インバウンド恩恵大。A
・NTT(9432) 次世代通信IOWN構想で海外も視野。高利回り、高財務支え。A
注)上記、個別銘柄コメントのA、B+などの表記は当社アナリストの投資判断、目標株価を示します。
詳細はアナリストレポートをご参照ください。
■ドル円~あらためて日米の金利動向を注視~
■予想レンジ(7/31~8/4)ドル円相場 1㌦=138.00~142.00円
先週は、再び円が強含む展開となりました。日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール:YCC)の運用柔軟化を打ち出したことが背景です。最近の植田総裁のハト派発言等を受けて、修正見送り観測が強まっていただけに市場は円買いで反応、一時138円近辺まで円売り・ドル買いが進みました。
日銀が今回の措置に至ったのは、米欧が追加利上げを実施するなかで政策を据え置けば、円安が大きく進みかねないとの警戒が強まったためと推測されます。新たな長期金利の上限が1%に引き上げられたことが憶測を呼ぶ場面もありましたが、物価見通しなどを踏まえ、日銀が粘り強く緩和を続けるとの見方は大きくは揺らいでいない模様です。
今週は、改めて日米の金利動向に関心が高まることになりそうです。米国では、週末の雇用統計に向けた一連の主要経済指標への反応が焦点となる一方、国内においては落ち着きどころを探ることになる見込みですが、一気に新たな上限に接近するとは思われず、円先安観が極端に後退する可能性は低いと捉えています。■主な注目イベント
◇7月31日(月)
6月の鉱工業生産速報値(経産省、8:50)、東証グロース上場=Laboro.AI、
決算=塩野義、日精工、パナHD、村田製、三井住友FG、みずほFG、大和、商船三井、
7月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI、10:30)、中国非製造業PMI(10:30)、
7月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値、4~6月期のユーロ圏GDP速報値
◇8月1日(火)
6月有効求人倍率、6月失業率(8:30)、QUICKコンセンサスDI(7月末時点、8:30)、
決算=双日、ローム、トヨタ、三井物、三菱UFJ、野村、JR西日本、阪急阪神、JAL、
7月の財新中国製造業PMI(10:45)、豪中銀が政策金利を発表(13:30)、
7月米ISM製造業景況感指数(23:00)、6月の米雇用動態調査(JOLTS、23:00)、
2日(水) 決算=イビデン、エーザイ、住友電、NTN、TDK、SUBARU、H2Oリテイ、川崎汽船、
7月の国内ユニクロ既存店売上高(15:00すぎ)、7月のADP全米雇用リポート(21:15)
◇3日(木)
決算=三越伊勢丹、JFE、任天堂、住友商、三菱商、ヤマトHD、郵船、花王、
7月の財新中国非製造業PMI(10:45)、英中銀が金融政策委員会の結果と議事録を発表、
6月の米製造業受注(23:00)、7月の米ISMサービス業景況感指数(23:00)
◇4日(金)
決算=三井化学、UBE、日本製鉄、三菱重、スズキ、伊藤忠、丸紅、
7月の米雇用統計(21:30)
(注)時間は日本時間■米国株~8月相場スタート、S&P500最高値を意識~
■予想レンジ(7/31~8/4) NYダウ 34,800~35,900ドル
7月第4週の米主要株価3指数は続伸。週間ベース(カッコは年初来騰落率)でNYダウが0.66%高(+6.98%)、S&P500が1.01%高(+19.34%)と3週続伸、ナスダック総合は2.02%高(+36.79%)と反発しました。NYダウは決算発表を消化しながら26日までに1987年1月以来となる13日続伸を記録、今後の先高感を醸成しました。 S&P500週間騰落は全11業種中、通信、素材、エネルギー、情報技術など7業種が上昇、公益や不動産、ヘルスケアなど4業種が下落しました。25~26日開催のFOMCでは市場予想通り、0.25%利上げを決定、9月以降の政策についてはデータ次第との姿勢を強めました。27日発表の4-6月期GDP成長率(速報値)は前期比年率+2.4%と堅調さを示しました。主要企業の決算では、マイクロソフトがクラウドの成長鈍化が嫌気され軟調となった半面、アルファベットやメタが広告事業の回復がサプライズとなりました。ほかインテルやKLA、ラムリサーチなど半導体関連の好決算を受けてフィラデルフィア半導体指数は週間4.1%高となりました。
今週は週初7月31日にFRBによる銀行上級融資担当者の調査が発表され、貸出態度の厳格化が見られるかどうか注目、また1日ISM製造業景況指数や週末4日に7月雇用統計などの公表を予定しており9月のFOMC以降の利上げ打ち止め期待が高まるか注目されそうです。特に雇用統計は前月に事前予想以上の減速を見せてさらに雇用増ペースの減速が確認されると金利低下、株価上昇要因となる可能性があります。S&P500の水準は28日時点で2022年1月に付けた最高値まであと4.7%まで迫っており、8月相場は最高値を意識した展開となりそう。インフレ鈍化を確認しつつ金融引き締めの最終盤を意識しながら、景気のソフトランディングを見据えて業績の底打ちの期待を強める好条件に恵まれ、相場の大幅調整はなさそうです。実質金利の低下や業績改善が株価の押し上げに繋がるため、実質後半戦に入る第2四半期決算シーズンの業績上振れに期待したいこところです。今週はS&P500構成企業でアップルやアマゾン・ドット・コム、AMDなどを含む169社が決算発表を行う予定です。
■外国株・週間注目銘柄
・アドビ(ADBE) 画像生成AI「ファイアフライ」を発表・実装、客単価と定着率上昇へ
・ブロードコム(AVGO) AI半導体(ASIC=特定用途向け集積回路)で再評価
・メルク(MRK) 米製薬大手、がん免疫療法薬「キイトルーダ」の成長続く