「IwaiCosmo Weekly Letter」
2023年5月22日日本株~短期波乱の懸念あるも下値限定~
岩井コスモ証券投資調査部
■日本株~短期波乱の懸念あるも下値限定~
■予想レンジ(5/22〜5/26) 日経平均株価 30,000円~31,200円
先週の日経平均株価は1420円高と、大幅に6週続伸して節目3万円を1年8ヵ月ぶりに回復しました。国内景気や先行き業績の安心感を支えとした投資環境の優位性が改めて意識され、内外からの資金流入が加速、終盤には米債務上限問題への警戒緩和を受けた海外株復調も追い風に一段高の展開となりました。
TOPIXは16日にバブル崩壊後高値を更新、日経平均も19日にあっさりと更新し、ともに33年ぶり水準に上昇しています。出揃った企業決算でも業績の上振れ傾向、今期連続増益の方向が確認され、還元強化の動きと合わせ株価上昇を支えています。海外景気への警戒感や短期過熱感を背景とした高水準の利食い売りを吸収して、2年強続いたレンジ相場を突破した格好となりました。
今週はさすがに目標達成感、急ピッチ上昇に対する恐怖感が短期調整を促す可能性がありそうです。海外景気に明確なアク抜け感が出づらいとみられるだけに、スピード調整もかねて3万円台の値固めのタイミングと考えます。買い遅れた投資家、追い詰められた売り方の買いが下値に待ち構えているなか、下値は限定的と見ます。
■日本株~週間注目銘柄~
・三菱UFJ(8306) 収益高水準、利回り等還元姿勢魅力。日銀政策思惑も意識。A
・JR西日本(9021) インバウンドや構造改革で業績回復。うめきた地下駅も話題。A
・日本製鉄(5401) 逆風下でも実質最高益水準確保。PBR1倍割れ等割安修正へ。A
・ダイキン(6367) 環境性能で圧倒的技術力。インド成長取り込み。増益基調。A
注)上記、個別銘柄コメントのA、B+などの表記は当社アナリストの投資判断、目標株価を示します。
詳細はアナリストレポートをご参照ください。
■ドル円~改めて米債務上限問題への関心高まる見込み~
■予想レンジ(5/22~5/26)ドル円相場 1㌦=136.00~140.00円
先週は、主要通貨に対してドルが強含む展開となりました。米国の債務上限問題を巡る楽観論が台頭、良好な経済指標の発表が相次いだことも手伝って、米景気安心感が広がったことが背景です。FRB高官からのタカ派発言も止まず、市場では金融引き締め長期化への警戒が強まる方向のようです。
一方、日本サイドからは円売りを促すいくつかの材料が飛び出しました。日銀の政策修正後ズレ観測の浸透などで国内金利に上昇圧力がかかりにくくなっているほか、海外勢による日本株大量購入に伴うヘッジ目的の円売りに注目が集まる展開となっており、ドル円はおよそ半年ぶりに1㌦=138円台後半で推移する場面がありました。
今週は、改めて米連邦政府の債務上限問題への関心が高まることになるとみています。資金繰りが行き詰まる「Xデー(6月上旬⁈)」までなお時間があるだけに、米議会が最終合意に至るまでにはなお相応の波乱場面も予見され、引き続き相場の主役を担うことになりそうです。■主な注目イベント
◇22日(月)
3月の機械受注(内閣府、8:50)、4月主要コンビニ売上高(14:00)、
5月の中国最優遇貸出金利(LPR、10:15)
◇23日(火)
4月の食品スーパー売上高(13:00)、4月全国百貨店売上高(日本百貨店協会、14:30)、
5月の仏製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値、5月の独製造業PMI速報値、
5月のユーロ圏製造業PMI速報値、5月の英製造業PMI速報値、
5月の米製造業PMI速報値(S&Pグローバル、22:45)、4月米新築住宅販売件数(23:00)
◇24日(水)
4月の英消費者物価指数(CPI)(15:00)、5月の独Ifo企業景況感指数、
米FOMC議事要旨(5月2~3日開催分、25日3:00)、海外2023年2-4月期決算=エヌビディア
◇25日(木)
韓国中銀、インドネシア中央銀行、トルコ中銀、南アフリカ中銀が政策金利を発表、
1~3月期の米実質国内総生産(GDP)改定値(21:30)、4月米仮契約住宅販売指数(23:00)
◇26日(金)
5月の都区部CPI(総務省、8:30) 、4月の企業向けサービス価格指数(日銀、8:50)、
3月の景気動向指数改定値(内閣府、14:00)、香港市場が休場、4月の豪小売売上高(10:30)、
4月英小売売上高、4月米個人所得個人消費支出(PCE、21:30)、4月米耐久財受注額(21:30)、
5月の米消費者態度指数(確報値、ミシガン大学調べ、23:00)
◇27日(土)
1~4月の中国工業企業利益(10:30)
(注)時間は日本時間
■米国株~債務上限問題は楽観許さず、24日にエヌビディア決算~
■予想レンジ(5/22~5/26) NYダウ 32,500~34,400ドル
5月第3週の米主要株価3指数は上昇。週間ベース(カッコは年初来騰落率)でNYダウが0.38%高(+0.84%)、S&P500が1.65%高(+9.18%)と反発。一方、ナスダック総合が3.04%高(+20.94%)と4週連続で大幅に上昇しました。週末こそ下げたものの、18日にかけて債務上限問題の進展期待からハイテク株中心に上昇し、ナスダック総合は昨年8月以来9ヵ月振りの高値を付けました。19日のパウエル議長の発言はタカ派的ではなく、 CMEのFEDウォッチの6月FOMCの利上げ確率が週半ばの36%から17%へ低下しました。S&P500週間騰落では7業種が上昇、4業種が下落、情報技術、通信サービス、一般消費財、金融などが高く、公益、不動産、生活必需品等ディフェンシブ業種が安くなりました。個別では小売各社の2-4月期決算があり、ホームデポが売上不振で売られたものの、ウォルマートをはじめ他の小売大手は予想を上回る決算で株価は総じて堅調となりました。
市場の焦点は引き続き債務上限問題の進展となりそうです。共和党のマッカーシー下院議長は近く合意に達するとしていたものの、22日時点ではホワイトハウス側との何らかの合意を発表には至っていません。仮に今週に合意に達したとしても、共和党内の保守強硬派の反発の声が出ており、議会採決での造反リスクが残っており、採決の可決まで楽観は禁物と考えます。その他、経済指標では23日のS&Pグローバル・総合PMIや26日のコアPCEデフレータ等が注目されるほか、24日には前回FOMCの議事要旨から6月半ばのFOMCの利上げの可能性を探ることになりそうです。来週明け29日は戦没者追悼記念日のため米国市場は祝日休場となり、週末はポジション調整が進みそうです。
個別企業では生成AIの注目銘柄であるエヌビディアの2-4月期決算が24日引け後にあり、株価動向が周辺銘柄に影響が及ぶことが予想されます。エヌビディアの2-4月期業績予想は売上高が前年同期比21%減の65億ドル、1株利益が同32%減の0.92ドル、AI向けが含まれるデータセンター部門売上は同4%増の39億ドル、ゲーム部門が同46%減の19億ドルが市場コンセンサスです。
■外国株・週間注目銘柄
・アルファベット(GOOGL) 生成AI「バード」に対する評価高まる 出遅れ妙味
・サービスナウ(NOW) 内勤業務効率化ソフトウエア企業、生成AIでMS提携、15億ドル自社株買い
・アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD) AI半導体でエヌビディア追随、市況の底打ち期待も