コスモ・ネットレ ブログ「徒然なるままに」
2024年10月15日東証の取引時間変更について
ネット取引統括部長 山形 光
11月5日から、東京証券取引所において、次期株式売買システム(arrowhead4.0)の本稼働に伴い売買制度「①取引時間の変更②クロージング・オークションの導入③特別約定方式の導入」が変更されます。
変更点1:取引時間
現物市場の後場の取引時間が30分延長され、取引終了時間は15時30分になります。
それに伴い大阪取引所のデリバティブ市場の先物指数および先物OP取引の日中取引時間の立会終了時間が30分延長され、15時45分までとなり、ナイト・セッションの開始時間が17時00分に30分後ろ倒しされます。
補足ですが、当社では、先物OP等取引の値洗いの時間、投資信託の注文受付時間、入出金受付時間も変更になります。変更点2:クロージング・オークションの導入
国内株式の取引終了時間前の5分前(15時25分)にザラバ方式*⑥参考を終了し、5分間(15時25分から15時半)の即時約定されない注文受付時間帯「プレ・クロージング」を設け、15時半に板寄せ方式*⑥参考により終値が決定する「クロージング・オークション」が導入されます。「プレ・クロージング」は、A:売買は成立せず注文受付のみが行われ、B:注文受付状況(売気配・買気配)が配信され、「クロージング・オークション」は、取引終了時刻15:30にC:板寄せ方式*参考⑥で終値が決められます。
・大引けで売買が成立する値幅は、現行同様、直近約定値段(ザラバ最終値段)の更新値幅の2倍までです。
・寄り付きや、売買停止後の板寄せは、時間優先の例外が適用される*③参考ので、例えば前日に継続注文で出した注文も、8:59に出した注文も同じ寄り前に受け付けたとする「同時呼び値」*参考③で板寄せされますが、クロージング・オークション導入後の大引けの板寄せでは、時間優先が適用され、同じ価格における優先される注文の順位は以下の通りです。
1.後場始値決定前の注文(同時呼び値)
2.後場ザラバ中の注文(時間優先)
3.プレ・クロージング開始時取り込まれた引け注文・不成注文、プレ・クロージング中の注文(同時呼び値。ただし1とは別の同時注文)
尚、同時呼び値注文は、取引参加者毎に名寄せし、約定数量を決定します。
・プレ・クロージングでは、注文、訂正、取消は受け付けますが、執行条件の変更および不成注文*参考②の値段訂正はできません。
■変更前と変更後の大引け制度とクロージング・オークション導入の目的*JPX HPより引用
変更前の大引け制度も、引け条件付き注文を取り込む板寄せ方式でしたが、取引終了時間間際に、その日の内にどうしても買いたい人が、引けの執行条件付きの注文を多く出すと、終値がザラバ中と比較して大きく変動するという事がありました。引けで大きい価格変動があると「誰かが仕掛けたのでは?」などの疑念も生まれ、市場の信頼性も損なうことになりかねませんでした。
クロージング・オークションの導入は、下記枠囲の通りの効果が期待されます。変更点3:特別約定方式の導入
クロージング・オークション導入とともに「特別約定方式」も導入されます。
大引けで売買が成立する値幅は、直近約定値段(ザラバ最終値段)の更新値幅の2倍までですが、その値幅において、大引けで通常の板寄せができない場合、「特別約定方式」により売買を成立させます。板寄せ方式は、いくつかの条件をクリアすることで価格が決まるため*⑦参考、条件に満たない場合は取引が成立せず、ザラバ引け(ザラバにつけた最後の値段)となり、引けの気配値と価格が大きく乖離することがありました。
「クロージング・オークション」の導入に伴い、現在の立会終了時に適用されている売買成立可能値幅(特別気配の更新値幅の2倍)を超えて注文が対等している場合にも、売買成立可能値幅の上下限で、売り注文と買い注文がそれぞれ1単位以上存在する場合は、売買成立可能値幅の上限若しくは下限で約定が成立させるのが「特別約定方式」です。
「特別約定方式」では、価格優先の原則は適用されず、時間優先の原則により約定が割り当てられますので、下記2点にはご注意ください。
・大引け成行注文が不出来となる場合がある
・証券会社ごとの配分はない
■特別約定の例
板寄せ方式は、⑦に記載したとおり、最初に累計の株数を集計し、売りと買いが逆転する値段を基準にして、条件に沿って約定を成立させます
上記のケースだと、ザラバ最終値段は180円、売りと買いの累計が逆転する値段は195円で売買成立可能値幅の上限(190円)を超過しているので、通常の板寄せでは売買不成立となりますが、「特別約定」制度により約定値段を更新値幅上限の190円で、売り注文の累計である50単位分だけ売買を成立させます。
➡更新値幅上限の190円までの売り注文が50株(成行10株+190円×20株+185円×10株+180円×10株)に対して、190円以上でも買いたいという注文が入っているため、時間優先の原則で発注時間が早い買い注文から順次割り当てを行ったものです。
・証券会社ごとの名寄せは行いません。
■クロージング・オークション導入後のお取引に関するご注意点
JPXは「予想対当値段に影響を与えるような注文の変更や注文取消しがみだりに行われた場合、終値の予見可能性を低下させ、円滑な終値形成を阻害するだけではなく、他の投資家の注文を誘引する恐れがあるなどは、終値操作(不公正取引)」の疑念を抱かせるため、不適切な発注形態を重点監視対象として明確化し、円滑かつ適切な終値形成を図る」として、不適切な発注形態への対応も公表しています。
例えば、不適切な訂正や取り消しへの対応として、終値決定の板寄せ直前の1分間を重点監視対象としてモニタリングがされます。また「特定の市場参加者だけがニュースに反応して注文を取り消す」・「裁定取引を目的とした注文」などもモニタリングの対象になり、お客様にも訂正・取消しの意図をお尋ねすることとなりますので、下記URLを開き、ご一読の上、ご注意くださいませ。
クロージング・オークションにおける注文取消し等重点監視に関するガイドライン
https://www.jpx.co.jp/equities/strengthening/cg27su00000054qm-att/ja.pdf■ご参考 株式の注文が成立し、「株価」が決まるためのルールや仕組みの例
①注文の種類は、成行と指値の二種類があり、投資家は、どちらかを指定することができます
②注文は、条件付きで発注する事もできます
③取引は、優先される注文から成立します
④注文をする際の値段の刻みを「呼値の単位」といいます。呼値の単位は、銘柄及びその値段の水準に応じて決められています
*500万円以上5000万円超は省略
⑤「制限値幅・更新値幅」 大引けの更新値幅は通常の2倍になります
*15,000円以上5,000万以上は省略
⑥東証が売買を成立させる方法は、2種類あります
⑦板寄せ方式の具体例
上の表の通り、寄り付き前や大引け等は、板寄せ方式で売買されますが、取引成立には3つの条件があります。
条件に当てはまらず取引が成立しない場合は「売買不成立」となります。IPOで上場初日に初値が付かない!というケースはこれにあてはまります。・取引成立のための条件
条件①「成行の売り注文と買い注文のすべてを約定する」
条件②「約定値段より高い買い注文と、約定値段より低い売り注文をすべて約定する」
条件③「約定値段で、売り注文若しくは買い注文のどちらか一方すべて約定する」
例:下記の様な板がどうなるか解説します。
最初に、成行を最優先にし、次に、売りは安い値段から、買いは高い値段から累計していくと、499円と498円で売りと買いの累計が逆転します。
このどちらかで始値が決まります。
STEP1:条件①「成行の売り注文と買い注文を約定させる」
498円で始値が決まると仮定して、条件①「成行の売り注文と買い注文のすべてを約定する」を満たすために、売りと買いの成行をぶつけ300株を約定させます。この時点で売り注文は400株残ります(成行の売り700株-成行の買い300株=成行の売り400株が残る)。
STEP2:条件②「約定値段より高い買い注文と、約定値段より低い売り注文」をすべて約定させる
成行の売り注文400株と、条件②の498円より低い売り注文(497円×100株)の合計500株と、498円より高い買い注文(499円×300株+500円×200株)の合計500株を約定させます。この時点で、成行注文と約定値段(仮)の498円より低い497円以下の売り注文と、約定値段(仮)498円より高い499円以上の買い注文は残らない為、条件①・②を満たします。
STEP3:条件③「約定値段で、売り注文若しくは買い注文のどちらか一方すべて約定する」
最後に、498円の売り注文100株と買い注文500株を約定させます。498円で100株取引が成立し、買い注文は400株残ります。
ご参考:
■日本証券取引所グループJPX HP
https://www.jpx.co.jp/equities/strengthening/cg27su00000054qm-att/document.pdf
■9月26日ブログ
https://www.iwaicosmo.net/report/post_476.html
■ショート動画
https://youtube.com/shorts/32wJPXtGZww?si=ADqpEyIjemAY61eV