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2024年4月 4日

【米国株調査隊#01】巨大投資テーマとなるか?「肥満症薬ブームを調査!」

米国株調査隊・N子 米国株調査隊・N子

  • 調査報告ファイル♯01

    巨大投資テーマとなるか?

    「肥満症薬ブームを調査!」




    皆様こんにちは!岩井コスモ証券2018年入社のN子と申します。いつもコスモ・ネットレをご利用くださり、誠にありがとうございます。先日、上司の何気ない一言で米国調査隊員を任命され、この連載を始めることとなりました。米国では今何が流行っているの?そもそもどんな銘柄が?といったテーマで、不定期ではありますがお届けしてまいります。新米調査員の私ですが、皆様、隊長のような広い心で報告を受け取って下さると幸いです...!


    早速ではございますが、初回は昨年からマーケットで話題となっている「肥満症薬」について調査しました。どこが販売しているの?日本でも処方される?関連銘柄は?ぜひお読みください。


    薬で痩せられる時代に?


    昨年10月、国内製薬株の時価総額首位に中外製薬が浮上しました。開発中の肥満症薬「オルフォルグリプロン」が収益に貢献すると期待が高まったためです。海外市場では一足先に肥満症薬が話題となっていましたが、日本国内でもこれを機に一気に関心が高まった印象です。


    私も先日、かかりつけの病院で「メディカルダイエット」というメニューがあるのを見かけ、気になっていたところでした。今日まで様々なダイエット方法が出現してきましたが、医療で痩せられるというのは驚きですよね。マーケットで話題となっている製薬会社がいくつかあるので、簡単にまとめてみました。

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    元々は糖尿病の治療薬


    表の通り、先行しているのはデンマークの製薬大手・ノボノルディスクの「ウゴービ」です。2021年にアメリカで実用開始し、今年2月には日本でも販売開始。保険適用の肥満症薬としては1992年以来です。そして、23年11月にはアメリカのイーライリリー「ゼプバウンド」が米食品医薬品局から承認。


    両社とも「GLP_1受容体作動薬」という肥満症薬で、元々は2型糖尿病治療に使用されていました。比較的痛みの少ない皮下注射を週に1回行うことで、食欲がなくなり、食べてもすぐに満足感を覚え、接種カロリーが減り、痩せる仕組みです。費用は、日本だと1カ月一人当たり最大4万円程度だそうです。結構しますね...。



    実際にウゴービの日本人を対象とした臨床試験によると、2.4ミリグラムを週に1回皮下投与した人は68週間後に平均13%の減量効果が確認されました。ゼプバウンドも、72週使用して体重減少率が平均2割という治験結果が出ています。これまでも肥満症に関するサプリや漢方等はありましたが、比較的副作用が少なく、しっかりと効果が出るという面で注目されています。


    様々な企業が後を追うも、新規参入が難しく、米ファイザーに至っては先日2度目の開発中止を発表。今後数年間は、ノボとイーライリリーの2強状態と言われています。日本では、冒頭触れた中外製薬が経口タイプの新薬候補を(開発・販売権はイーライリリーに譲渡)、塩野義製薬がGLP_1とは異なる種類のものを、それぞれ開発中です。(個人的に、皮下注射よりも口から飲む経口タイプの方が人気が出そうな気がします。)



    時価総額がテスラ超え、新たな市場誕生?


    ノボの経営陣は23年12月期の決算説明会で「需要に供給が追い付かない」と明かしました。ウゴービの売上高は前期比の5倍強となり、連結純利益は51%も増加。イーライリリーも2月6日に決算発表を行い、発売間もないゼプバウンドの販売額が1億7580万ドルにも及んだと発表。


    両社とも株価が好調。足元の時価総額はノボが約5800億ドル、イーライリリーは約7000億ドル前後で推移しており、今年に入ってマグニフィセント・セブンの1つである米テスラの時価総額を追い抜きました。そのテスラ社CEOであるイーロン・マスク氏も「ウゴービで痩せた」とX(旧Twitter)で明かしており、"投資家はEVから「肥満症薬」に心移り"というニュースも流れました。


    肥満症薬市場は、世界的に多く使用されるとの見方から2030年にかけて年平均3割成長が見込まれています。また、世界の肥満人口(BMI130以上の成人)は2030年までに10億人に達するという予測から、AIに次ぐビックテーマになると期待されています。



    既に様々な連想ゲームが


    23年後半の米国株市場では、肥満症薬発展の期待が先行し幅広いセクターに物色が広がりました。最も影響を受けたのは食品で、食べる量が減る懸念でお菓子メーカーなどに売りが入りました。また肥満症薬であらゆる病気が改善され、手術例が減少するという見方から医療機器銘柄も下落。意外にも好感されたのは空運株で、体重が減ることで燃料代が浮き、コスト削減につながる期待が浮上しています。


    現状、業績面で大きな変化はなく、今年に入り悪影響を避ける動きは落ち着いていますが、ありとあらゆるセクターに連想買い・売りが波及したことは、影響力の高さがうかがえます。



    リスクもある


    魅力的な肥満症薬ですが、ウゴービはあくまで「肥満症」の方に処方される薬であり、
    厚生労働省が設けた厳しい適用ガイドラインで、日本での保険適用処方はハードルが高い印象です。


    私が見かけた「メディカルダイエット」は、ウゴービと同じ成分の国内未承認薬を使用した自由診療のようでしたし、日本肥満学会も美容やダイエット目的での利用に対して注意喚起を促しています。GLP_1には吐き気や嘔吐、続けないとリバウンドするといった副作用も報告されていますし、出始めの薬にはまだまだわからない事が沢山ありそうです。


    とはいえ、株価は常に期待で動くもの。チャットGPTも2022年11月末に突如として現れ、2023年のマーケットは生成AI一色となりました。肥満症薬では一歩先行く米国株。注目してみはいかがでしょうか?


    以上、初回の調査ファイルでした♪また暖かくなるころに、ご報告いたします。


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    登場した銘柄>

    米国株

    ノボノルディスクADR(NOV)、イーライリリー(LLY)、ファイザー(PFE)、テスラ(TSLA)

    日本株

    中外製薬(4519)、塩野義製薬(4507)


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    参考資料>

    https://www.iwaicosmo.net/pdf/202403_us_obesity.pdf



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