「IwaiCosmo Weekly Letter」
2024年8月19日日本株~戻り一服も、好業績支えに下値限定~
岩井コスモ証券投資調査部
■日本株~戻り一服も、好業績支えに下値限定~
■予想レンジ(8/19〜8/23) 日経平均株価 37,400円~38,400円
先週の日経平均株価は3037円高と5週ぶりに大幅反発、週間上昇幅は史上最大を記録し、月初急落以降の順調な値戻しが継続しました。企業決算の好調に加え、15日には名目GDP初の600兆円超えなどデフレ脱却を窺わせる国内景気の持ち直しを確認、海外では米小売売上の上振れで過度な米景気懸念も和らぎました。
日経平均は5日続伸でチャート上の節目が重なる38000円水準を回復、7月高値からの急落分の半値戻しを達成しました。依然やや海外主要国に見劣りするものの、過去のショック安に比べ安定度の高い復元過程を辿っています。銀行はじめ下げが厳しかったバリュー株にも出遅れ物色が広がり、下げづらい地合い形成に寄与しています。
今週はFRBメンバーの発言等が注目です。ただ、景気見通しを含め強弱双方の見方を一旦消化した状況で、経済指標等への反応も含めサプライズは生じづらいと考えます。戻り一服感が浮上する水準なうえ、決算発表一巡で手掛かり材料難となる可能性もありますが、再度厳しい下押しとなる懸念も小さいと見ています。■日本株~週間注目銘柄~
・三菱UFJ(8306) 最高益更新が続く、金利上昇追い風、増配・自社株買い
・三菱重(7011) ガスタービン好調、防衛・原子力に注力で中期成長へ
・日本郵船(9101) 運賃市況上昇などで業績上方修正、利回り3%超
・良品計画(7453) 衣料品好調、価格改定効果で収益性が改善が進む
注)上記、個別銘柄コメントのA、B+などの表記は当社アナリストの投資判断、目標株価を示します。詳細はアナリストレポートをご参照ください。■ドル円~ジャクソンホール会議に注目~
■予想レンジ(8/19〜8/23)ドル円相場 1㌦=147.00~150.00円
先週は、ドル買いの勢いが増す場面がありました。投機筋の『円売り・ドル買い』ポジションの調整が一巡したとの見方が広がるなか、良好な経済指標の発表が相次いだことで米景気のソフトランディング期待が息を吹き返し、「FRBが急ピッチで利下げを進める」との行き過ぎた思惑が後退したことが背景です。
一方、7日の内田日銀副総裁の『ハト派』発言が尾を引き、「日銀は追加利上げを急がない」との観測がくすぶり続けたことは、円を買い進めづらい地合いを演出する格好となりました。にもかかわらず、円安・ドル高進行が3円程度に留まったのは、日米の金融政策の方向性の違いを意識する向きが多いことの証左と捉えています。
今週は、ジャクソンホール会議におけるパウエルFRB議長講演(23日)が最大の焦点となる見通しです。足元のデータを踏まえてどのような見解を示すのか、20年3月以来となる利下げ実施が見込まれている9月FOMCの行方を占ううえでの手掛かりを探ることになりそうです。■主な注目イベント
◇19日(月)
7月機械受注(内閣府 8:50)、7月米景気先行指標総合指数(23:00)、海外決算=パロアルトネットワークス
◇20日(火)
20年物国債入札(財務省、10:30)、7月首都圏マンション販売(不動産経済研究所、14:00)、
8月中国最優遇貸出金利(LPR、10:00)、バーFRB副議長が討議に参加(21日3:45)
◇21日(水)
7月貿易統計(財務省8:50)、7月外日外国人客数(15:30)、東証グロース上場=オプロ、
インドネシア中銀が政策金利を発表、タイ中銀が政策金利を発表、米20年物国債入札、
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月30~31日分、22日3:00)
◇22日(木)
対外・対内証券売買契約(週間、財務省、8:50)、7月仏購買担当者景気指数(PMI)速報値、
独PMI、ユーロ圏PMI、英PMI速報値、週間の米新規失業保険申請件数(21:30)、
7月の米中古住宅販売件数(23:00)、8月の米PMI速報値(S&Pグローバル、23日22:45)、
ジャクソンホール会議(米ワイオミング州、24日まで)
◇23日(金)
7月全国消費者物価指数(CPI、総務省8:30)、7月全国百貨店売上高(14:30)、
7月の米新築住宅販売件数(23:00)、パウエルFRB議長が講演(23:00)
(注)時間は日本時間
■米国株~ジャクソンホール講演は週末、出遅れ修正継続の公算~
■予想レンジ(8/19〜8/23) NYダウ 39,700~41,250ドル
8月第3週の主要株価3指数は、週間ベース(カッコは年初来騰落率)で大幅反発、7月PPIやCPI、小売売上高の結果が物価鈍化や景気堅調を示唆し、買い安心感が強まりました。NYダウが2.94%高(+7.88%)、S&P500が3.93%高(+16.45%)、ナスダック総合が5.29%高(+17.46%)となり、S&P500やナスダック総合は週末まで7日続伸、主要3指数は8月上旬の急落前の水準に回復しました。株式の変動性を示すVIX指数は、5日に一時65.73ptを記録した後、16日は14.8t(週間▲27%)まで低下しました。調整幅の大きかったフィラデルフィア半導体(SOX)指数は週間9.78%高と大幅続伸して終了。 S&P500・11業種別週間騰落率では全11業種が上昇、値上り上位には情報技術、一般消費財、金融、素材、資本財などが並び、相対的に不動産やエネルギーが下位にとどまりました。個別では上方修正のあった小売大手のウォルマート決算が消費関連全体にポジティブに影響を与えたほか、アクティビストによる株式取得や業界の大物CEO就任が報じられたスターバックスや化粧品・バークシャー新規保有が明らかになった美容小売のアルタ・ビューティや素材の銅、アルミ関連が目立ちました。一方、日用品や鉄鋼、食肉、スーパー、林業、通信は総じて低調な値動きになりました。
今週注目されるジャクソン会合のパウエルFRB議長講演は23日(金)の米東部時間午前に実施され、彼の発言論旨から9月FOMCで利下げの値下げ幅が0.25%か0.50%を探る展開になりそうです。経済指標では22日のPMI速報値でサービスPMIの堅調が維持されるか注目、政治では19~22日に民主党全国大会が開催され、ハリス副大統領の勢いが一段と加速するかどうか関心が高まる可能性がある。株式市場では民主党政策の恩恵を享受しそうな環境関連や住宅関連などに動意があるかもしれません。決算発表ではセキュリティのパロアルトネットワークス、アナログ・デバイセズ、スノーフレーク、ズームビデオ等が予定されています。週末に重要イベントを控える中、出遅れ物色が継続する展開を想定します。■外国株・週間注目銘柄
・エヌビディア(NVDA)
AI用半導体最大手、IT大手の設備投資増加の勢い変わらず・追い風
・アップル(AAPL)
アップル・インテリジェンスが起動する次回アイフォーンへの期待根強く
・ファイザー(PFE)
米製薬大手、がん・心臓病治療薬が成長、今期見通しを上方修正