「IwaiCosmo Weekly Letter」
2024年8月 5日日本株~パニック感強まるなか、業績期待が支えに~
岩井コスモ証券投資調査部
■日本株~パニック感強まるなか、業績期待が支えに~
■予想レンジ(8/5〜8/9) 日経平均株価 37,500円~38,600円
先週の日経平均株価は1757円安と大幅に3週続落。前半こそ値頃感や業績期待を支えとした個別物色により見直し買いが優勢でしたが、31日日銀利上げを巡る円相場の急伸を受け再度急失速、パニック的な下値模索で、週末2日には2216円安と歴代2位の下げ幅となり、主要国全般が軟調のなか日本の下げがより際立つ状況です。
企業決算は全体の3割が発表を終え、トヨタの影響で予想経常利益(合計)は前期比7%減ながら、企業数・利益合計では上振れ優勢の結果を示しています。通期予想に対する1Q実績の進捗率は30%超と今後に上方修正期待を繋ぐ状況で、増益企業数も6割を超えています。TOPIXの予想PERは15倍付近に低下したことと合わせ、ファンダメンタルズ面からは調整一巡となる可能性は低くないと見られます。
思わぬ急落の余波で、為替動向を睨みつつの乱高下がしばらく続く懸念はありますが、値幅的にもバリュエーション上も下値到達感は強く、中長期目線では仕込みの好機と捉えたいところです。好決算銘柄を中心に徐々にポジションを積み増すべきタイミングと考え、高利回り系の金融、海運、商社や成長期待の半導体などに注目します。■日本株~週間注目銘柄~
・三菱UFJ(8306)
最高益更新が続く、金利上昇追い風、増配・自社株買い
・三菱重(7011)
ガスタービン好調、防衛・原子力に注力で中期成長へ
・日本郵船(9101)
運賃市況上昇などで業績上方修正、利回り3%超
・良品計画(7453)
衣料品好調、価格改定効果で収益性が改善が進む
注)上記、個別銘柄コメントのA、B+などの表記は当社アナリストの投資判断、目標株価を示します。詳細はアナリストレポートをご参照ください。■ドル円~米景気への関心高まる展開に~
■予想レンジ(8/5〜8/9)ドル円相場 1㌦=145.00~150.00円
先週は、一段と円買いが膨らむ展開となりました。日銀は量的引き締めの開始を決めると同時に追加利上げを実施、植田総裁が予想以上に「タカ派的」な姿勢を示したとの受け止めも広がる一方、FRBはハト派的との見方が強まり、日米金利差が想定以上のペースで縮小するのではとの疑念が生じたことが背景です。
日本の低金利に着目し、積極的にリスクを取って円を売る戦略を進めづらい地合いに傾いたうえ、「円キャリー取引」の逆回転も続いた模様です。そうしたなか、米景気懸念の高まりなどに乗じて投機筋の円買い仕掛けも加わったことから、およそ半年ぶりとなる146円台半ばに上昇する場面がありました。
今週は、改めて米景気への関心が高まることになりそうです。投機筋の「円売り」ポジションの調整は相当程度進んだと推測されるうえ、構造的な円安要因が解消されたわけではないことから、過度の警戒が後退すれば、円の上値の重さが意識される展開も十分にあり得るとみています。■主な注目イベント
◇5日(月)
7月の財新中国非製造業購買担当者景気指数(PMI、10:45)、
決算=JFE、ローム、SUBARU、伊藤忠、オリックス、郵船 米ISMサービス業景況感指数(23:00)
◇6日(火)
6月家計調査(8:30)、6月毎月勤労統計(8:30)、10年物利付国債入札(10:30)、
4~6月期決算=ダイキン、三菱重、川重、IHI、スズキ、東京海上、ソフトバンク
◇7日(水)
6月の景気動向指数速報値(内閣府、14:00)、消費活動指数(日銀、14時ごろ)、
決算=レーザーテク、SUMCO、資生堂、フイルム、住友鉱、太陽誘電、ホンダ、オリンパス、NTT、ニトリHD、ソフトバンクG
7月の中国貿易統計、米10年物国債入札
◇8日(木)
日銀金融政策決定会合の主な意見(7月30~31日分、8:50)、7月貸出預金動向(日銀、8:50)、
7月オフィス空室率(三鬼商事、11:00)、7月景気ウオッチャー調査(内閣府、14:00)、
決算=INPEX、花王、フジクラ、リクルート、TOWA、コクサイエレ、ミツイE&S、名村造、東エレク、菱地所、住友不、
インド準備銀行(中央銀行)が政策金利を発表、米30年物国債入札
◇9日(金)
株価指数オプション8月物の特別清算指数(SQ)算出 決算=楽天G、ブリヂストン、三越伊勢丹、
ENEOS、日本郵政、ゆうちょ銀、SOMPO、MS&AD、第一生命HD、T&D、豆蔵デジHD、
7月中国消費者物価指数(CPI、10:30)、7月中国工業生産者出荷価格指数(PPI、10:30)
(注)時間は日本時間
■米国株~景気減速懸念が一気に強まる、地政学リスクにも警戒~
■予想レンジ(8/5〜8/9) NYダウ 39,000~40,400ドル
8月第1週の主要株価3指数は、週間ベース(カッコは年初来騰落率)で大幅下落。NYダウが2.10%安(+5.43%)で5週振りに大幅反落した一方、S&P500が2.06%安(+12.09%)、ナスダック総合が3.35%安(+11.76%)、フィラデルフィア半導体(SOX)指数はインテルの失望決算が響き週間9.71%安と大幅続落、前週まで3週連続上昇していたラッセル2000指数が週間6.67%安と大幅反落、ナスダック総合やSOX指数は高値から10%以上下落する調整相場入りとなりました。FOMCやアップル等のハイテク主要企業決算、景気指標等を消化しながら、株式市場では持ち高調整売りや投げ売りなどのリスクオフ商状が強まりました。 S&P500・11業種別週間騰落率では公益、不動産、通信、生活必需品、ヘルスケアの5業種が上昇した半面、一般消費財、情報技術、金融、資本財など6業種が下落、景気敏感株業種が売られ、ディフェンシブ業種が買われる展開が鮮明となりました。発表された経済指標はISM製造業や雇用統計等をはじめ軒並み市場予想に下振れ、31日のFOMC(2日目)では9月利下げについてパウエル議長は「検討中」とし、利下げ濃厚の見方が広がりました。市場では急速に景気減速懸念が強まり、債券市場では短・中・長期債幅広く買われ、政策金利に連動しやすい2年債利回りは23年5月以来の4%を割り込みました。
S&P500種構成の企業業績は8月2日までに376社が業績報告を終え(リフィニティブ集計)、総じて堅調、実績・市場予想比で上回った企業比率が利益で79%(過去平均以上)、売上で57%と(同未満)。第2四半期の1株利益増減率見通しは前年同期比12.9%増と7月1日時点の同10.6%増に伸長し、アナリストによる業績予想も足下は上方修正数が下方修正数を上回っている状態です。政治では正式に民主党の候補者となったハリス氏が次回選挙戦で勢いを増しており、副大統領候補が指名される見通しで注目されそうです。ハマス代表の暗殺事件を受けて中東情勢が緊迫化して地政学リスクの悪化には注意、防衛関連、ディフェンシブ銘柄が目先は選好されそうです。下げの厳しいハイテク株は好決算・優良株で値ごろ感の出始めた銘柄から反発する展開が想定されます。
■外国株・週間注目銘柄
・エヌビディア(NVDA)
AI用半導体最大手、IT大手の設備投資増加の勢い変わらず・追い風
・ロッキード・マーティン(LMT)
防衛元請大手 決算好調・見通し上方修正 改良F-35納入再開へ
・ファイザー(PFE)
米製薬大手、がん・心臓病治療薬が成長、今期見通しを上方修正