「IwaiCosmo Weekly Letter」
2024年7月16日日本株~一服感浮上も下値限定~
岩井コスモ証券投資調査部
■日本株~一服感浮上も下値限定~
■予想レンジ(7/16〜7/19) 日経平均株価 41,000円~42,000円
先週の日経平均株価は278円高と3週続伸、幾度か史上最高値を更新しつつも、週末12日に1000円超え急落を見せるなど高値波乱の様相を呈しました。米利下げ観測や企業決算などへの期待が世界的にリスク選好姿勢を支えるなか、日本株優位を取り戻す気配を示しましたが、短期過熱を警戒した手仕舞い売りも膨らみました。
初の42000円台乗せの局面では米株同様、半導体関連の強さが目立ちましたが、日銀政策など意識した金融株買いや、百貨店の上値追い、出遅れディフェンシブの見直し買いなど、物色の厚みも海外市場以上に増していると見られます。企業経営改革やデフレ脱却期待といった日本独自の強みも健在で、先高気運は保たれています。
今週も内外の経済指標を注視しつつ、史上最高値圏でのもたつきが長期化するかを探る展開となりそうです。買い遅れた投資家(個人等)の下値買い姿勢や、7月下旬に本格化する企業決算への期待が早期出直りを促す可能性がある一方、円相場や海外市場の混乱継続で、一段安の懸念も残ります。好業績銘柄を中心に丹念な押し目買いを心がけたいタイミングです。
■日本株~週間注目銘柄~
・三菱UFJ(8306)
最高益更新が続く、金利上昇追い風、増配・自社株買い
・日立(6501)
再生可能エネルギーの送配電設備関連が収益をけん引
・HOYA(7741)
EUVマスクブランクスやHDD用ガラス基板の在庫調整完了
・寿スピリッツ(2222)
徹底した高付加価値戦略で収益性の向上が続く
注)上記、個別銘柄コメントのA、B+などの表記は当社アナリストの投資判断、目標株価を示します。詳細はアナリストレポートをご参照ください。■ドル円~本邦通貨当局の言動を注視する展開~
■予想レンジ(7/16〜7/19)ドル円相場 1㌦=156.50~160.50円
先週は、11日に発表された6月米CPIを受けて円が急伸する場面がありました。パウエルFRB議長のハト派発言が伝わっていたことも手伝って、米早期利下げシナリオの実現可能性が高まったとの受け止めが広がり、投機筋が高水準に積み上がった円売り・ドル買いポジションの巻き戻しに動いたことが背景です。
本邦通貨当局による介入観測が浮上したことも、円買いを後押しする格好となりました。介入の有無は現時点では不明ですが、日銀が12日午前の東京市場で(為替介入の準備のために市場参加者に相場水準を尋ねる)「レートチェック」を対ユーロで実施したと伝わったこともあり、市場は疑心暗鬼に駆られている模様です。
今週は、本邦通貨当局の言動を注視する展開が見込まれます。円買い介入への警戒は容易には収まらず、円を売り込みづらい地合いに傾く公算が高そうですが、米小売売上高やベージュブック、FRB高官発言などを受けた米金利の動向にも引き続き留意する必要があると判断しています。■主な注目イベント
◇16日(火)
5月第3次産業活動指数(経産省、13:30)、7月ZEWの独景気予測調査、
6月の米小売売上高(21:30)、6月の米輸出入物価(21:30)、
7月の米全米建設業協会(NAHB)住宅市場指数(23:00)
◇17日(水)
6月の訪日外国人客数(日本政府観光局、16:15)、インド市場が休場、
6月のユーロ圏消費者物価指数(HICP、改定値)、6月英消費者物価指数(CPI、15:00)、
6月の米住宅着工件数(21:30)、6月の米鉱工業生産(22:15)、米ベージュブック、3:00)
◇18日(木)
6月の貿易統計(財務省、8:50)、4~6月期決算=ディスコ、スタンダード上場=カドスコーポレーション、
海外4~6月期決算=台湾積体電路製造(TSMC)、6月の豪雇用統計(10:30)、
6月英失業率、ECB理事会の結果発表(21:15)、ラガルド総裁が記者会見(21:45)、
海外4~6月期決算=ネットフリックス
◇19日(金)
6月の全国CPI(総務省、8:30)、4~6月期決算=光世
(注)時間は日本時間
■米国株~逆CPIショックで9月利下げ濃厚に、主要ハイテク決算に注目~
■予想レンジ(7/16〜7/19) NYダウ 39,300~41,200ドル
7月第2週の主要株価3指数は、週間ベース(カッコは年初来騰落率)で続伸。NYダウが1.59%高(+6.13%)、S&P500が0.87%高(+17.73%)となり、2週連続上昇。ナスダック総合は0.25%高(+22.56%)で6週連続の上昇となりました。9-10日に開催されたパウエルFRB議長の議会証言では利下げ時期について明言を避けましたが、11日発表の6月消費者物価が市場予想に下振れ、前月から鈍化傾向を鮮明にしたことで、市場では9月FOMCで20年3月以来の利下げが濃厚との見方が広がりました。政策金利に連動しやすい2年国債利回りは12日、前週末比0.15%ポイント低下の4.46%で終了、利下げによる金利低下局面を見据えてこれまで市場をけん引し、金利高止まりでも成長が期待できる大型ハイテク株を売って、その他業種や中小型株を買うローテーション動きが活発化しました。S&P500均等加重指数は週間2.9%高、中小型株のラッセル2000指数が同5.39%高となりました。 S&P500・11業種別週間騰落率では金利敏感の不動産や公益をはじめヘルスケア、金融、資本財などを業種を中心に10業種が上昇した一方、通信のみが下落しました。個別では4-6月期決算を発表したデルタ航空は利益率悪化を嫌気して下落、JPモルガンやシティグループは実績が市場予想を上振れたものの、見通しは慎重な発言が目立ち株価は決算後軟調となりました。
今週は重要マクロ指標と主要ハイテク決算が焦点となりそうです。16日の米6月小売売上高は個人消費の動向を知る手がかりとなるほか、17日公表の地区連銀経済報告で労働市場の弱さに言及があれば利下げ期待につながりそうです。企業決算では蘭ASMLホールディング(17日)、台湾TSMC、ネットフリックス(18日)の主要ハイテク企業が予定され、市場予想を上回る好決算を通じたグロース株の反発材料となるのか注目されます。その他、ジョンソン&ジョンソンをはじめ今週はS&P500構成企業で46社が4-6月期業績を報告します。政治では15~18日に共和党全国大会があり、13日に暗殺未遂事件があったトランプ大統領候補の正式承認と副大統領候補の指名が予想されます。同情も加わりトランプ候補と共和党の優勢が強まりそうです。
■外国株・週間注目銘柄
・エヌビディア(NVDA)
AI用半導体最大手、6月台湾IT見本市で27年までの製品計画を公表
・マイクロン・テクノロジー(MU)
半導体メモリ大手、HBM(超高速メモリ)量産化で収益大幅改善へ
・シスコシステムズ(CSCO)
配当利回り3%超、2013年以降、増配基調を堅持のバリュー株