「IwaiCosmo Weekly Letter」
2024年5月27日日本株~業績期待を支えに出遅れ修正へ~
岩井コスモ証券投資調査部
■日本株~業績期待を支えに出遅れ修正へ~
■予想レンジ(5/24〜5/31) 日経平均株価 38,500円~39,400円
先週の日経平均株価は141円安と小幅に反落、幾度か39000円台を回復する動きを見せつつも、欧米市場のもたつきなどを横目に、荒い値動きが継続しました。米エヌビディアの決算後の急伸を受けても、上値再トライに向けた明確なトレンド転換には至らず、むしろ金利上昇や商品市況安をやや警戒するムードに押されました。
もっとも心理的節目38500円や25日移動平均線を意識した下値の堅さは保たれています。自社株買いの加速が好感されているほか、根強い円安地合いを確認するなか、業績期待も持ち直しつつあると考えます。TOPIXベースの予想EPSは169と決算シーズン直前に比べ4%拡大(過去最高)、米企業以上の上振れ傾向を示しています。
今週も金利動向を睨みつつ、経済指標への反応を探る展開が続きそうです。商いがやや細るなか、神経質な値動きが想定されますが、4-5月に主要国で最弱のパフォーマンスとなった日本株には見直し余地は大きいと考えます。業績拡大や還元強化の流れを追い風に、内外投資家の注目を再度集める可能性が高いと見ています。■日本株~週間注目銘柄~
・三井住友(8316)
今期も最高益更新で増配も、事業環境は好転へ
・TOWA(6315)
メモリメーカーの相次ぐ増産投資でHBM向け需要拡大
・富士電機(6504)
電力需要の急拡大で蓄電池や分散電源など伸びる
・岩谷産業(8088)
コスモエネHDと資本業務提携、水素インフラ整備を加速
注)上記、個別銘柄コメントのA、B+などの表記は当社アナリストの投資判断、目標株価を示します。詳細はアナリストレポートをご参照ください。
■ドル円~引き続き米金利を注視~
■予想レンジ(5/24〜5/31)ドル円相場 1㌦=155.00~158.00円
先週は、次第にドル買いの勢いが増す展開となりました。22日に公表された「FOMC議事録はタカ派的な内容だった」との受け止めが広がるなか、予想を上回る米経済指標の発表が相次ぎ、FRBによる早期利下げ観測が再び後退したためで、およそ3週間ぶりに157円台に乗せる場面がありました。
一方、日銀による金融正常化加速への思惑が台頭し国内金利にも上昇圧力が掛かりましたが、「高水準の日米金利差は保たれる」との見方を揺るがすには至りませんでした。イエレン米財務長官の為替介入を牽制する発言が改めて伝わったことなども、円売りを後押しする方向に作用した模様です。
今週も引き続き、米金利の動向を注視することが肝要となる見通しです。FRB高官発言や4月のPCEデフレータ(31日)などへの関心が高まるとみられますが、円先安観が拭えそうにないだけに、円安進行が加速した際には本邦当局の言動からも目を離せないことになりそうです。■主な注目イベント
◇27日(月)
日銀の植田総裁が2024年国際コンファランスで開会挨拶(9:05)、5月の月例経済報告、
1-4月中国工業利益(10:30)、5月独Ifo企業景況感指数、英休場、メモリアルデーで全米市場休場◇28日(火)
4月企業向けサービス価格指数(日銀8:50)、基調的なインフレ率を捕捉するための指標(14:00)、
三菱重が事業計画説明会(15:30)、東証グロース上場=学びエイド、
3月米S&P住宅価格指数(22:00)、5月米消費者信頼感指数(23:00)、米2年物、5年物国債入札
◇29日(水)
5月消費動向調査(14:00)、森田日証協会長会見(14:30)、米ベージュブック、30日3:00)、
2~4月期決算=セールスフォース、ウィリアムズニューヨーク連銀総裁が講演(30日2:45)
◇30日(木)
ソニーGが事業説明会(8:00)、4月の建機出荷(建設機械工業会、13:00)、
1-3月期米実質国内総生産(GDP改定値、21:30)、ウィリアムズNY連銀総裁講演(31日1:05)
◇31日(金)
4月の失業率(総務省、8:30)、ソニーGが事業説明会(9:00)、5月都区部CPI(8:30)、
4月鉱工業生産速報値(8:50)、商業動態統計(8:50)、4月住宅着工統計(国交省14:00)、
5月の為替介入実績(財務省、19:00)、5月中国製造業PMI、中国非製造業PMI(10:30)、
インドの1~3月期GDP、5月ユーロ圏消費者物価指数(HICP、速報値)、
4月の米個人所得個人消費支出(PCE、21:30)
(注)時間は日本時間
■米国株~さらなる利下げ期待の後退に警戒、PCEデフレーターに注目~
■予想レンジ(5/27〜5/31) NYダウ 38,300~40,200ドル
5月第4週の主要株価3指数は週間ベース(カッコは年初来騰落率)でまちまち。NYダウが2.33%安(+3.66%)と6週ぶりに反落した一方、S&P500が0.03%高(+11.21%)、ナスダック総合は1.41%高(+11.78%)と共に5週続伸。注目された22日発表のエヌビディアの2-4月期決算は実績・売上見通し共に市場予想を上振れ良好な結果。次世代チップ投入が今期業績に本格貢献することや現最新半導体の買い控えの懸念も払拭されました。また150%増配と1対10の株式分割の発表も好感され、同社株価は1,000ドルを超えました。フィラデルフィア半導体指数はアナログ・デバイセズの好決算もあり、週間4.77%高と軒並み買われる展開。S&P500業種別・騰落率(週間)では、大型ハイテク株や半導体関連株が選好され、情報技術や通信2業種のみが上昇した半面、利下げ期待の後退を背景にエネルギーや不動産、金融を筆頭に9業種が下落しました。個別ではフリーキャッシュフローの今期の黒字達成が難しいと幹部が明らかにしたボーイングが週間5.6%安と急落。他方、開発者会議でAIパソコンや内製半導体などを発表したマイクロソフトは週間2.37%高、そのAIパソコンに搭載される自社の半導体採用が決まったクアルコムが週間8.51%高と急伸しました。
今週は27日が米国市場は「メモリアルデー」のため祝日休場、休み明けの28日より米株市場は約定から受渡日までの日数が短縮され、現地の決済が約定の翌営業日(T+1)に変更されます。米国の国内投資家は投資待機資金の節約につながる半面、国外投資家はドル資金を余裕を持って預け入れる必要がありそうです。特段の混乱は想定されていませんが、月末予定のMSCI指数の定期入れ替えに伴う売買が円滑に行われるのか注視されそうです。注目のマクロ指標ではFRBが重要視するコアPCEデフレータが31日に発表され、前月比+0.25%へ減速すると見込まれます。ただ想定以上の上振れは、さらなる利下げ期待の後退につながるため注意が必要です。個別企業の決算発表では29日にセールスフォース、オクタ、30日にコストコホールセール、モンゴDB、マーベル・テクノロジー、ゼットスケーラー、アルタ・ビューティ等が予定されています。■外国株・週間注目銘柄
・エヌビディア(NVDA)
AI用半導体最大手、前回決算良好、6月10日付で1対10の株式分割
・マイクロン・テクノロジー(MU)
超高速DRAMが業績改善に寄与、6月下旬に次回決算予定
・ネクステラエナジー(NEE)
環境配慮型の公益大手 AIデータセンター電力需要拡大の恩恵享受