「IwaiCosmo Weekly Letter」
2023年7月10日日本株~短期需給悪一巡か~
岩井コスモ証券投資調査部
■日本株~短期需給悪一巡か~
■予想レンジ(7/10〜7/14) 日経平均株価 32,300円~33,000円
先週の日経平均株価は800円安と反落、週明け一段高で年初来高値を更新しましたが、その後は景気懸念を背景とした海外株安やこの時期特有の国内需給悪などから手仕舞い売りが加速、節目の33000円をあっさり割り込みました。第一三共、ソシオネクストのストップ安など個別材料に対する厳しい反応も投資家心理を冷やした格好です。
もっとも月替わりのタイミングでの1000円級の調整は今年幾度も繰り返され、そのたび早期に上昇トレンドに回帰しています。3日の日銀短観の良好な内容や自動車生産の軌道化などで、国内景気や企業業績への安心感も高まりつつあり、短期過熱が解消されれば、個人投資家等の押し目買いが徐々に広がり、下値を支えると見ています。
今週も米物価指標を睨みつつ、海外では利上げ警戒や景気懸念が重荷となりそうです。一方、景気安心感の強い日本株は相対優位の流れを早期に取り戻す可能性は小さくないと見ます。成長期待の半導体、インバウンド追い風の国内消費、挽回生産の自動車関連、高利回り株等への見直し買いを支えに、修正高となる公算が高いと考えます。■日本株~週間注目銘柄~
・三菱UFJ(8306) 収益高水準、利回り等還元姿勢魅力。日銀政策思惑も意識。A
・ソフトバンクG(9984) 傘下英アーム社を軸にAI関連の話題豊富。ファンドも復調。A
・キヤノン(7751) 自社株買いなど還元姿勢を強化、ユーロ中心に円安メリット大。A
・岩谷産(8088) 強みの水素関連事業の将来性に期待。国策を支えに中計積極化。A
注)上記、個別銘柄コメントのA、B+などの表記は当社アナリストの投資判断、目標株価を示します。
詳細はアナリストレポートをご参照ください。
■ドル円~あらためて米長期金利の動向注視~
■予想レンジ(7/10~7/14)ドル円相場 1㌦=141.00~145.00円
先週は、円安・ドル高進行が一服する展開となりました。本邦通貨当局による(円買い)介入警戒感がくすぶるなか、日銀の金融政策正常化の先送りを囃した円売りにブレーキが掛かったうえ、世界景気の先行き懸念の強まりによってリスク許容度が低下した投機筋が高水準に積み上がった円の売り持ち高を減らし始めたためです。
もっとも、円先安観が大きく揺らいだわけではなさそうです。良好な米景気指標や「タカ派」的なFOMC議事要旨などを受けて、金融政策の方向性の違いが強く意識される状況に変わりはなく、低金利の円を売って高金利の他通貨を買うことで金利差収益を狙う「キャリー取引」が活発となる環境が整っているとの見方も健在です。
今週は、改めて米長期金利の動向に焦点が当たることになるとみています。市場では7月FOMC(25~26日)における米利上げ再開をほぼ織り込んだ格好となっており、6月米CPI(12日)などの物価関連指標やFRB高官発言を受けて、さらなる利上げの可能性が高まるか否かを注視していくことが肝要となる見通しです。■主な注目イベント
◇10日(月)
日銀支店長会議、7月の日銀地域経済報告(さくらリポート)、 3~5月期決算=ウエルシア、
5月特定サービス産業動態統計(経産省13:30)、6月景気ウオッチャー調査(内閣府14:00)、
6月の中国消費者物価指数(CPI、10:30)、6月の中国卸売物価指数(PPI、10:30)、
5月の米卸売在庫売上高(23:00)、5月の米消費者信用残高(11日4:00)◇11日(火)
3~5月期決算=ローソン、6月英失業率(15:00)、7月ZEW独景気予測調査
◇12日(水)
6月企業物価指数(日銀8:50)、5月機械受注(8:50)、決算=ABCマート、イオン、吉野家HD、
6月米CPI(21:30)、米地区連銀経済報告(13日3:00)、カナダ中銀政策金利を発表(23:00)
◇13日(木)
3~5月期決算=セブン&アイ、東宝、22年9月~23年5月期決算=ファストリ、
5月のユーロ圏鉱工業生産(18:00)、6月の中国貿易統計、6月の米PPI(21:30)、
14日(金) 株価指数オプション7月物の特別清算指数(SQ)算出、
20カ国地域(G20)財務相中央銀行総裁会議(18日まで、インド)、
7月の消費者態度指数(速報値、ミシガン大学調べ、23:00)、
海外4~6月期決算=JPモルガンチェース、シティグループ
(注)時間は日本時間■米国株~12日のCPI鈍化確認を好感できるか、週後半決算シーズン入り~
■予想レンジ(7/10~7/14) NYダウ 33,000~34,800ドル
7月第1週の米主要株価3指数は反落。週間ベース(カッコは年初来騰落率)でNYダウが1.96%安(+1.77%)、S&P500が0.96%安(+14.57%)、ナスダック総合は1.16%安(+30.52%)とそれぞれ反落しました。 S&P500週間騰落では全11業種中が不動産を除く10業種が下落、とりわけヘルスケアや素材、情報技術等の業種の下落が目立ちました。週前半は中国景気懸念を背景に軟調な展開、週後半は米国の強い経済指標を受けて10年国債利回りが3月上旬以来のとなる4%台乗せ、2年国債利回りが一時5%台に乗せ、金利上昇が嫌気されました。週末の6月雇用統計の結果は雇用者の増加が市場予想以下の20.9万人にとどまり、失業率は前月の3.7%から3.6%へやや低下しました。CMEのFEDウォッチでは7月・9月のFOMC利上げ確率を93%、24%と予想しています。個別では好調な4-6月期の新車販売台数が各社より公表され、テスラやリビアンなどを中心に自動車関連が買われました。一方、エーザイと共同開発したアルツハイマー病薬「レカネマブ」がFDAより完全承認されたバイオジェンは週末、利益確定売りに押され安値引けとなりました。
今週は12日に6月の消費者物価の発表があり、事前予想では総合が5月の前年同月比4.0%増から→3.1%増へ、エネルギー・食品を除くコアが同5.3%増から→5.0%増へ鈍化する見通しです。市場予想以下であれば、景気は底堅さを維持しながらインフレ鈍化が進行するとの見方が強まり、改めて株式市場はポジティブ材料視されると考えます。一方、CPIが市場予想を上振れすれば、複数会合の追加利上げの見方が強まり、特にグロース株には逆風となりそうです。週後半は23年4-6月期の決算シーズンが事実上スタート、13~14日にかけて大型株ではデルタ航空、ペプシコ、シティグループ、JPモルガン、ユナイテッドヘルス等が業績報告を行います。S&P500構成企業の第2四半期の1株利益変化率は、リフィニティブ集計ベースで同6.4%減となっていますが、第1四半期が最終的に同0.1%増となった経緯もあり、今回も事前予想をある程度の上振れが期待されます。
■外国株・週間注目銘柄
・アドビ(ADBE) 画像生成AI「ファイアフライ」を発表・実装、客単価と定着率上昇へ
・ブロードコム(AVGO) AI半導体(ASIC=特定用途向け集積回路)で再評価
・メルク(MRK) 米製薬大手、がん免疫療法薬「キイトルーダ」の成長続く