「IwaiCosmo Weekly Letter」
2023年6月19日日本株~材料不足で一服感、下値限定か~
岩井コスモ証券投資調査部
■日本株~材料不足で一服感、下値限定か~
■予想レンジ(6/19〜6/23) 日経平均株価 33,000円~34,000円
先週の日経平均株価は1440円高と10週続伸、1990年3月以来33年ぶり水準を回復し、バブル崩壊後高値を更新しました。アベノミクススタート時の12週続伸に次ぐ連騰で、過熱感を孕みながらも先高気運を感じさせる展開が依然継続しています。海外投資家の買い越しは11週連続、当時の18週買い越し以来の記録となりました。
予想PERは15倍台と過去10年平均水準に回帰しましたが、円安効果や想定より堅調な内外景気を支えに今後の上振れ期待は相応に高く、アベノミクス当時の16倍=35000円程度は十分に許容範囲と考えます。ここにきて、出遅れ感のあったトヨタ、ソフトバンクG、鉄鋼、メガバンクなどに循環物色の流れが波及し、引き続き下げづらい地合いも保たれていると見ています。
今週は中銀ウィーク後のイベント端境期にあたり、高値圏で方向感の乏しい展開と見ます。一方、株主総会が集中する6月末が接近し、既に総会を終えたトヨタ等をはじめ配当再投資の思惑が意識されるタイミング。急伸相場に乗り遅れた感のある個人投資家等の押し目買いも支えとなり、日柄調整的なレンジ相場を想定します。■日本株~週間注目銘柄~
・三菱UFJ(8306) 収益高水準、利回り等還元姿勢魅力。日銀政策思惑も意識。A
・ホンダ(7267) 自動車挽回生産、円安メリットで大幅増益期待。PBR0.6倍割れ。A
・H2O(8242) 関西の百貨店主軸に食品スーパー展開も急。インバウンド恩恵大。A
・NTT(9432) 次世代通信IOWN構想で海外も視野。高利回り、高財務支え。A
注)上記、個別銘柄コメントのA、B+などの表記は当社アナリストの投資判断、目標株価を示します。
詳細はアナリストレポートをご参照ください。
■ドル円~円を買い進みづらいムードが尾を引く公算~
■予想レンジ(6/19~6/23)ドル円相場 1㌦=139.50~142.50円
先週は、円売りに傾きやすい地合いを辿る格好となりました。日米欧中銀の金融政策決定会合を経て、改めて日銀の政策スタンスの方向性の違いに焦点が当たったことが背景です。とりわけ追加利上げの可能性を拭えない欧州通貨の上昇が顕著で、対ユーロでは15年ぶり、対英ポンドでも7年半ぶりの円安水準を付けています。
FRBは大方の予想通り11会合ぶりに政策金利を据え置きましたが、メンバーの政策金利見通し(ドットチャート)においては今年中にあと2回の利上げを見込む姿が示され、サプライズを呼ぶ場面がありました。もっとも、足元の物価・雇用関連指標の落ち着きなどから、市場には利上げ打ち止め観測も浮上している模様です。
今週も引き続き円を買い進めづらいムードが尾を引くなか、FRB高官発言などを受けた米金利の動向が注目されることになりそうです。本邦通貨当局による介入警戒を指摘する向きもありますが、当時とは異なり、米金融引き締め局面が終盤に差し掛かっていることなどを踏まえれば、さほど気にする必要はないと判断しています。
■主な注目イベント◇19日(月)
奴隷解放記念日(ジューンティーンス)の祝日で米全市場が休場
◇20日(火)
ソニーG(6758)株主総会、5月コンビニ売上高(日本フランチャイズチェーン協会、14:00)、
6月の中国最優遇貸出金利(LPR、10:15)、5月の米住宅着工件数(21:30)
◇21日(水)
ソフトバンクG(9984)株主総会、5月訪日外国人客数、通常国会の会期末、
グロース上場=シーユーシー、スタンダード上場=オービーシステム、
5月の英消費者物価指数(CPI)(16:00)
◇22日(木)
対外対内証券売買契約(週間、財務省、8:50)、コスモHD(5021)の株主総会、
6月の月例経済報告、グロース上場=アイデミー、リアルゲイト、
香港、中国、台湾が休場、フィリピン、インドネシア、トルコ、スイス、ノルウェー中銀が政策金利を発表、
英中銀が金融政策委員会の結果と議事録を発表(21:00)、
5月の米中古住宅販売件数(23:00)、パウエルFRB議長が米上院銀行委員会で証言(23:00)
◇23日(金)
5月の全国消費者物価指数(総務省、8:30)、5月全国百貨店売上高(百貨店協会、14:30)、
グロース上場=ARアドバンストテクノロジ、中国(上海、深セン)、台湾市場が休場、
5月の英小売売上高(16:00)、6月仏製造業PMI速(16:15)、独製造業PMI速(16:30)、
6月米製造業購買担当者景気指数(PMI速報値、22:45)
(注)時間は日本時間■米国株~21、22日パウエル議長証言あり、高官発言が利益確定売り誘うか~
■予想レンジ(6/19~6/23) NYダウ 34,000~35,300ドル
6 月第3週の米主要株価3指数は続伸。週間ベース(カッコは年初来騰落率)でNYダウが1.25%高(+3.48%)と3週続伸。S&P500が2.58%高(+14.85%)と5週連続高。ナスダック総合は3.25%高(+30.79%)となり、上昇記録を8週連続高に伸ばしました。 S&P500週間騰落ではエネルギーを除く10業種が上昇、情報技術、素材、一般消費財が大きく上昇。前週上昇が一服していたエヌビディアなどの生成AI関連銘柄が再び値を伸ばし、週末は下げて終えたものの、S&P500は週後半に4400ポイント台に到達しました。注目の14日~15日の開催されたFOMCでは実に約1年半(11会合)振り政策金利の引き上げが見送られましたが、FOMCメンバーの23年末の政策金利見通しはあと2回の利上げを示唆し、タカ派的でした。株式市場の反応はAIブームによるグロース株物色が金融引き締め継続の弱材料を勝った格好です。空売り上位のグロース株が買戻し主導で急騰する銘柄も多く、RSI(相対力指数)等のテクニカル指標で短期過熱を示しているものの、利益確定売りが優勢となる場面が少ない印象です。週末16日は個別株オプション、株式指数先物・オプションの特別清算日に当たり、個別株の出来高が膨らみました。
今週は19日が現地祝日(奴隷解放記念日)のため、休場となり4営業日の商いとなる中、株式市場では7月半ばの次回決算シーズンまでやや材料不足に陥りやすい状況で金融政策・景気/物価動向睨みの展開となりそうです。市場でのソフトランディングへの期待は強まった感があり、物価指標が順調に鈍化すればFRBはタカ派的からハト派的に転じるとの見方が根強くあるようです。21~22日にはパウエル議長議会証言など多くのFRB高官発言が予定されており、市場の利上げ期待が高まるようなタカ派発言が相次げば、株式市場の上値が抑えられる可能性がありそうです。経済指標では23日の6月総合PMIや各種住宅関連指標などが重要視されそう。企業イベントでは、6月19~25日にパリ国際航空ショーがあり、ボーイングの受注報道に注目、21日にはインテルが投資家向け説明会を開催する予定です。
■外国株・週間注目銘柄
・アルファベット(GOOGL) 生成AI「バード」に対する評価高まる 出遅れ妙味
・ブロードコム(AVGO) AI半導体(ASIC=特定用途向け集積回路)で再評価
・マクドナルド(MCD) 高い既存店売上高の伸びを実現、値上げとリオープン恩恵が継続