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2026年10月 5日

第521回 AI需要が変えるメモリー市場―マイクロン躍進と設備投資(CAPEX)

ファンドマネージャー 石原 順 ファンドマネージャー 石原 順


  • エヌビディアをも上回る粗利益率を誇るマイクロン・テクノロジーの直近決算


    メモリー半導体大手のマイクロン・テクノロジー(MU)は9月30日、2026年第4四半期(2026年6-8月期)の売上高が前年同期比4.8倍の542億ドル、純利益は377億ドルと一年前の12倍に拡大したと発表した。四半期ベースでいずれも過去最高を更新した。

     

    ●マイクロン・テクノロジー(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    ●マイクロン・テクノロジー(週足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    ●マイクロン・テクノロジー(月足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    マイクロン・テクノロジーは、DRAM(データを一時的に記憶する、揮発性の半導体メモリー)およびNAND型(不揮発性メモリの方式のひとつ)フラッシュメモリで世界屈指のシェアを持っている。マイクロンの最大の強みは、生成AI(人工知能)の学習、推論に欠かすことのできないDRAMの一種であるHBM(高帯域幅メモリー)市場での躍進だ。AIモデルの高度化に伴い、処理を高速化する大容量、超高速のHBM需要がかつてないレベルに達している。

     

    ●マイクロン・テクノロジーの売上高と最終損益の推移
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    出所:決算資料より筆者作成

     


    従来のメモリー市場は、PCやスマートフォンの需給バランスで価格が激しく乱高下する「シリコンサイクル」に支配されていた。しかし現在のHBMは、顧客企業との長期契約に基づいて生産、出荷されており、業績の予見可能性(手堅さ)が劇的に向上するという構造変化が起きている。

     

     

    今年6月、米アップル(AAPL)が、パソコン「Mac」やタブレット型端末「iPad」などの製品について世界で販売価格を引き上げた。アップルは「AIデータセンターの急速な拡大により、メモリー需要が異常なまでに急増している。部品価格がこれほど短期間に大きく上昇したことはなかった」とコメントし、値上げに踏み切らざるを得なかった理由を説明した。

     

    生成AIの急激な普及に伴い、ビッグテック各社は巨費を投じてデータセンター向け高性能メモリの確保に動いている。サムスン電子やマイクロンなどの主要半導体メモリメーカーは、ウエハー当たりの利益率が極めて高いAI向け製品に生産能力を最優先で割り当てている。そのしわ寄せとして、パソコンやスマートフォンに使われる汎用メモリーの生産が後回しとなり、汎用メモリーの需給が逼迫して価格の急上昇を招いている。

    世界最強のサプライチェーンを築き上げてきたアップルでさえ、そのコスト上昇を自社で吸収しきれなくなった。この現象は単なる一企業の価格改定という話題にとどまらず、生成AI投資の急拡大がコンシューマーエレクトロニクス業界全体の原価構造を塗り替える象徴的なイベントだと言える。


    価格決定力を表す売上総利益率(粗利益率)率は87%と一年前(2025年第4四半期は59%)から大幅に上昇した。AI半導体の世界シェアで7割超を握る米エヌビディア(NVDA)の75%(26年5~7月期)をも上回る水準だ。

     

     

    ●マイクロン・テクノロジーの粗利益率の推移
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    出所:決算資料より筆者作成

     

     

    AIの普及によって構造的に変革を遂げたメモリー業界は、2027年も需給逼迫は続く!?

     

    以下はAI企業のパランティア(PLTR)の決算発表資料に掲載されていた時価総額上位100社の「40%ルール(Rule of 40%)」をプロットしたものである。「40%ルール(Rule of 40%)」は企業の売上高成長率と営業利益率を合計した値だ。

     

    これを見ると、HBM市場で過半数のシェアを持つSKハイニックスは270%、マイクロン・テクノロジーは265%と、半導体大手のエヌビディア(141%)やパランティア(145%)をも大きく突き放している。需給逼迫を背景にHBMの値上げが進んでいることが分かる。

     

     

    ●時価総額上位100社の「40%ルール(Rule of 40%)」
    (横軸が営業利益率、縦軸が売上高成長率)
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    出所:40%ルール(売上高成長率と営業利益率を合計した値)より筆者作成

     

    ●SKハイニックス(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)20261005_7.png

    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    ●パランティア(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)20261005_8.png

    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    需要が急増しているのであれば、製造ボリュームを増やせばいいだけではないかと言うと単純にそうはいかない事情がある。HBMの供給が増えない、あるいは需要に追いつかない理由は主に製造技術の難易度と生産能力(キャパシティ)の拡張スピードが追いついていないためだ。

     

    台湾の市場調査会社TrendForceは先月29日、広帯域メモリ(HBM)の供給不足が2027年も継続し、HBM全体の平均販売価格が前年比121%上昇するという予測を発表したTrendForceによると、次世代製品についても歩留まりの向上や生産量の拡大には時間がかかることから、メモリーの供給逼迫は2027年まで続く見通しだという。

    HBMはDRAMチップを垂直に何層も積み重ね、それを数千の微細な穴で接続する「3D積層」技術を使う。この工程は、従来のメモリー製造よりもはるかに難易度が高く、完成品になる割合(歩留まり)を高く保つのが難しい。また、設備投資と増産の物理的、時間的限界もある。新しい工場や生産ラインを建設し、最先端の製造装置を導入して安定稼働するまでに、1年半〜2年以上かかる。

     

    マイクロン・テクノロジーは、2027年第1四半期(2026年9-11月期)の売上高が前年同期比4.5倍の615億ドル前後になりそうだと発表した。サンジェイ・メロートラ最高経営責任者(CEO)は「26年8月期の業績は過去最高を更新したが、27年8月期はさらに好調な業績が見込まれる」とコメントし、先行きに強気の姿勢を見せた。

     

    ●マイクロン・テクノロジーの2027年第1四半期の売上高、粗利益率等の見通し
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    出所 マイクロン決算発表資料

     

    AIシステムは、半導体サプライヤー各社が提供するGPU(画像処理半導体)、ASIC(特定用途向け半導体)、CPU(中央演算処理半導体)によって支えられているが、それらすべてに共通する重要な特徴が一つある。それは、AIシステムのパフォーマンスが、メモリーの性能と容量に依存しているということだ。

     

    メロートラは以前、「メモリー業界は、AIの普及によって構造的に変革を遂げた。世界経済のあらゆる分野で今後解き放たれるであろう、大きなイノベーションと生産性は、まだ始まったばかりだ。」と述べた。メモリー企業は従来の「好不況の波が激しい景気循環株」から、「AIインフラの構造的成長株」へと変貌を遂げている。

     

    HBMは、作ろうと思えばすぐ増産できるものではなく、前工程・後工程・歩留まり改善・装置リードタイムなど制約が多い。結果として、価格上昇局面では利益が出やすい産業構造となる。その一方で、需要に応じて設備投資(CAPEX)を積む局面では、タイミングを誤ると次の供給過剰を招く要因にもなる。

     

     

    メガトレンドフォローVer2.0の売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)

     

    ●日経平均CFD(日足)20261005_10.png

    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    ●NYダウCFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    ●S&P500CFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    ●ナスダック100CFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    ●ドル/円(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    ●NY原油CFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    ●ゴールドCFD(日足)

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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    日々の相場動向については、

     

    ブログ『石原順の日々の泡』

     

     

    を参照されたい。

     

    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のディーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。



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