「マーケットの最前線」
2026年9月14日第518回 原油高騰と石油株の上振れシナリオ
ファンドマネージャー 石原 順
戦略石油備蓄が約44年ぶりの低水準に、価格調整力に翳りが出始めている!?地政学リスクの緊迫化を背景に原油価格が再び急騰している。先週、米国WTI原油先物価格は一時104ドル台、北海ブレント原油先物価格は一時109ドル台まで上昇した。
背景にあるのは、ペルシャ湾周辺での軍事衝突の激化による供給途絶懸念の再燃だ。米軍によるイランの原油タンカー破壊、それに対するイラン革命防衛隊による米艦船や周辺タンカーへの報復攻撃の応酬が止まらない。米国とイランが半年に及ぶ争いを近く終結させるとの期待は後退している。
●WTI原油価格の推移

出所:リアル・インベストメント・アドバイス
●NY原油(WTI)CFD(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
ロイターの9日の記事「ホルムズ海峡通過船、8日は6隻に減少=海運データ報道」は、コモディティー分析会社ケプラーが9日発表した海運データを取り上げ、8日にホルムズ海峡を通過した商品運搬船の数は6隻と過去10日間の平均である約12隻を下回ったと報じている。また、紅海側の要衝バベルマンデブ海峡を通過する船舶数は25隻と、こちらは10日間平均である約27隻を下回ったという。
こうした中、ゴールドマン・サックス証券とバンク・オブ・アメリカがそろって原油価格の上振れシナリオの見通しを引き上げた。9日のビジネスインサイダーの記事「原油価格が100ドルへ。この急騰について、賢い人々が語っていること」によると、ゴールドマン・サックス証券は顧客向けのメモにおいて、湾岸地域の平均原油生産量が予想を下回る場合、2027年のブレント価格は1バレル120ドルを超える可能性があると記した。
バンク・オブ・アメリカは、原油価格を1バレル120ドル前後まで押し上げる可能性があるさらなる混乱を注視しているとし、戦争によって中東の「エネルギーインフラに甚大な被害」が生じれば、原油価格は1バレル150ドルに達する可能性があるとの見方を示した。基本シナリオでは、年後半のブレント価格は平均で1バレル83ドル前後となる見通しだ。
●WTI原油先物のシーズナルチャート

出所:エクイティクロック●米国石油戦略備蓄の推移(週次)

出所:米国エネルギー情報局(EIA)
シーズナルチャートによると、9月から10月にかけてWTI原油価格は横ばい推移が続き、年後半にかけて下落する傾向にある。一方で、米政府が保有する戦略石油備蓄(SPR)は1982年以来、約44年ぶりの歴史的な低水準に落ち込んでいる。これまで米国はSPRを放出することでエネルギー価格の上昇を抑えてきた。SPRが低水準に落ち込んでいることはその調整力に限りが出始めていることを意味している。
ベースロード電源を提供するエネルギー企業はAIゴールドラッシュのインフラを支える受益者エネルギー大手、エクソンモービル(XOM)とシェブロン(CVX)の株価が強い動きを見せている。両社の株価上昇率は年初来で4割ほどとなっており、S&P500指数を大幅にアウトパフォームしている。直接的な要因は前述の通り原油価格が上昇していることにある。
●エクソンモービル株、シェブロン株、S&P500指数の年初来の推移

出所:グーグル・ファイナンス
直近(2026年度第2四半期)の業績はいずれも大幅な増収増益だった。エクソンの純利益は前年同期比2.1倍の145億ドルと大幅増益だった。原油相場の上昇に伴い、ガソリンやディーゼルなどの製油部門における利ざやが大幅に改善した。加えて構造的コスト削減を達成しており、荒れた市場環境でも高い収益性を維持できる体質となっている。●エクソンモービル(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●エクソンモービルの売上高と純利益の推移

出所:決算資料より筆者作成
シェブロンの純利益は121億ドル(前年同期比で約4.8倍)と過去最高を更新した。ロイターの7月31日の記事「米シェブロン、第2四半期利益6年ぶり高水準 上流部門200%増益」によると、シェブロンは中東地域への投資露出(エクスポージャー)が元々小さいため、イラン紛争による現地生産の混乱を回避でき、結果として、純粋に「原油価格の上昇」というメリットだけを総取りする形となったとのことだ。
●シェブロン(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
シェブロンの売上高と純利益の推移

出所:決算資料より筆者作成エネルギー株の追い風は原油市況の上昇だけではない。ハイテク企業による巨額の設備投資はエネルギー業界の未来を支える最大のメガトレンドだ。特にデータセンターは一瞬の停電も許されないため、天候に左右される太陽光や風力だけでなく、常に安定して発電できる「ベースロード電源」が必要となる。ハイテク企業が「最先端のAI」に投資すればするほど、それを動かすためのエネルギーの価値が高まる。エネルギー企業はAIゴールドラッシュのインフラを支える受益者と言える。
メガトレンドフォローVer2.0の売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
●日経平均CFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●TOPIXCFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●NYダウCFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●S&P500CFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●ナスダック100CFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●ドル/円(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●ゴールドCFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
日々の相場動向については、
ブログ『石原順の日々の泡』
https://ishiharajun.wordpress.com/
を参照されたい。




