「マーケットの最前線」
2026年7月21日第510回 データセンターバブルなのか?AIのツルハシ銘柄の現状
ファンドマネージャー 石原 順
半導体業界のスターのCEOが来日、日本のものづくりは復活するのか?
米エヌビディア(NVDA)のCEO(経営最高責任者)ジェンスン・フアンが来日し、日本政府や国内の主要企業との間で「ロボティクス」および「フィジカルAI(物理実体を伴う人工知能)」の分野における大規模な戦略的提携を相次いで発表した。エヌビディアが提供するロボット開発のための基盤モデル「Cosmos」や仮想空間を開発するための基盤「Omniverse」を活用し、製造現場、流通、ヘルスケア等の分野においてAIロボットの実装と国産AI共通基盤の構築を加速させるということだ。
フアンはイベントや記者会見で、日本が長年培ってきた「材料科学」「基礎化学」「メカトロニクス」における世界トップクラスの技術力を絶賛するとともに、人手不足に悩む日本の製造業やロボット産業のポテンシャルを高く評価、次の波である知能を持って自律的に動くロボットの時代には日本のものづくり基盤が最大の武器になると指摘し、「日本には必要な条件がすべて揃っている。Japan is back(日本は復活した)だ」と述べた。
また、このところ市場で懸念されているAI投資のバブル論に対しては、「バブルからはほど遠い」「需要は信じられないほど高い」と語り、長期的な成長が続く見通しを示した。
エヌビディアが5月20日発表した2027年第1四半期(2026年2月-4月)の決算は、売上高と純利益がいずれも市場予想を上回り、14四半期連続の前期比成長を記録した。マイクロソフト(MSFT)やメタ(META)といったハイパースケーラーによる人工知能(AI)インフラ投資の勢いは衰える兆しを今のところ見せておらず、データセンター向け売上高は一年前に比べ92%増とほぼ倍増した。
●エヌビディアの売上高と純利益の推移

出所:決算資料より筆者作成
●エヌビディアの粗利益率の推移

出所:決算資料より筆者作成粗利益率(売上高総利益率)は74.9%と、非常に高い価格決定力を維持していることが伺える。投資家との説明会においてエヌビディアのジェンスン・ファンCEO(最高経営責任者)は、「AIネイティブな製品やサービスの採用が転換点を迎えている。ChatGPTの登場以来、(AIは問いに対する正解の具体例を1つだけ提示する)ワンショット推論から推論、そして現在では(問題に対してAIが自律的に判断して実行する)エージェント型へと主流の形態を変化させてきた。AIはもはやあれば便利なものではない。今や、あらゆる業界や役割において生産性を高めるために不可欠なものとなっている」と語った。
●エヌビディア(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●エヌビディア(週足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
ウォール・ストリート・ジャーナルの5月21日の記事「エヌビディア、5兆ドルでもまだ評価不足」はエヌビディアの株価が今年に入って半導体株全体のパフォーマンスを大きく下回っていることを取り上げ、今回の好調な決算もその流れを変えることはできなかったと報じている。そしてその要因としてエヌビディアの時価総額が他社に大差をつけて世界トップに立っている中、エヌビディアはもはや輝かしい新星ではないとしている。
一方でエヌビディアほど大きな規模を持ちながら、これほど急速な成長を続けている企業は他になく、さらにその成長は加速していると指摘している。エヌビディアの5-7月期の売上高は910億ドルに達すると見られており、その通りになれば前年同期比でほぼ倍増する計算だ。
TSMCが米アリゾナへの追加投資を発表、大型投資の経済合理性はいかに!?
そのエヌビディアを最大顧客とするファウンドリのTSMC(TSM)は、17日、2026年4-6月期(第2四半期)決算を発表した。売上高は前年同期比36.0%増の1兆2,703億台湾ドル(約402億米ドル)、純利益は77.4%増の7,065億台湾ドル(市場予想を大幅超過)だった。AI半導体需要の圧倒的な強さを背景に、売上高、純利益ともに四半期ベースで過去最高を更新した。●TSMCの売上高・営業利益・営業利益率の推移

出所:決算資料より筆者作成●テクノロジー別売上高の割合

出所:決算資料より筆者作成
●プラットフォーム別売上高の割合

出所:決算資料より筆者作成
●TSMC(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●TSMC(週足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
部門別では、AIやクラウド向けを含む高性能コンピューティング(HPC)部門が売上全体の66%を占め、業績をけん引した。また、7ナノメートル以下の先端プロセスが売上の77%を占めており、高い技術力が利益率を押し上げた。2026年通期の売上高見通し(米ドル建て)については、従来の「30%超」から「40%強の増加」へと上方修正した。
また、通期の設備投資計画を最大640億ドル(約10.4兆円)に引き上げた。AI半導体の供給ボトルネックを解消するため、台湾国内での能力増強や、米アリゾナ州へ1000億ドルの追加投資を実行することも明らかにした。米国国内で明らかになる桁外れの投資を加速させているのはトランプ政権の「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法(OBBBA)」だ。
ワシントンD.C.に拠点を置く研究シンクタンク「Tax Foundation」のレポート「One Big Beautiful Bill Act's Corporate Tax Changes Benefit US Manufacturing the Most(「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法案の法人税改正によって最も利益を受けるのは米国製造業」)によると、OBBBAの主な狙いの一つは米国において有形生産のための国内投資を促進することである。
設備投資などの対象資産について、投資後すぐに一定割合を即時償却できる「ボーナス減価償却」制度が恒久化することが明記された。対象となる資産を2025年1月19日以降取得、サービスインしたものについて100%即時償却が可能となる。この改正により、企業の設備投資、減価償却戦略には大きな自由度とインセンティブが生まれた。
●OBBBAによる法人税改正によって最大の恩恵を受けるのは製造業と情報産業(2025年から2035年)
出所:Tax Foundationのデータより筆者作成
この変更は、米国に設備投資を行う多くの企業の税負担を軽減することが期待されるが、減税の規模は企業の業種や関連事業によって異なる。Tax Foundationの試算によると、2025年から2035年の予算期間において、製造業、情報産業、金融・保険・経営管理セクターの税負担が名目ベースで最も大きく軽減される見込みだ。10年間における税負担軽減額9472億ドルのうち、4226億ドルは製造業、1360億ドルは情報産業の企業に還元されると試算されている。OBBBA法案によって米国の製造拠点や設備投資に対する税制優遇が恒久化されたことで、TSMCのアリゾナ工場をはじめとする海外、特に米国における生産体制の経済合理性は格段に高まった。100%即時償却の適用によるキャッシュフロー改善効果は莫大であり、TSMCの財務基盤をさらに強固なものにするだろう。
一方で税制によって過剰な投資が先行する可能性もある。AIのデータセンターへの需要が一時的に過熱している中、もし主要顧客である米国のクラウド大手やOpenAIが投資ペースを鈍化させれば、TSMCの稼働率と利益率は揺らぐことも想定される。AI市場が期待通りのペースで拡大しなければ、OBBBAの恩恵を最大化しても、投資過多が重荷に転じるリスクは避けられない。大胆な税制の改正が市場を歪めているかもしれないという現状も念頭に入れておきたい。メガトレンドフォローVer2.0の売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
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出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
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出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
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出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
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出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
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出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
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出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
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出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
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出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
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石原順 プロフィール
1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のディーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。




