「マーケットの最前線」
2026年7月13日第509回 スペースXとIPO後の株価パフォーマンス
ファンドマネージャー 石原 順
上場から1ヶ月、激しい値動きを見せるスペースXの株価
イーロン・マスク率いるスペースX(SPCX)の株価が150ドルを割り込んだ。スペースXは約1ヶ月前に米ナスダック市場へ上場した。上場時の資金調達額は約750億ドルと、史上最大規模のIPO(新規上場)となった他、通常の大型上場とは異なり全体の30%を個人投資家向けに割り当てたことなど大きな話題を呼んだ。公開価格135ドルに対して初値は150ドルと公開価格を約11%上回った。初日の終値は160.95ドルと、その時点で時価総額は約2.1兆ドルに達し、米メタ(META)などを超え、米国市場で時価総額6位へ浮上した。その後、6月16日には、一時、株価は225ドルを超えるところまで値上がりしたが、直近では冒頭の通り150ドルを割り込んでいる。上場から約1カ月が経過し、株価は激しいボラティリティを見せている。
●スペースX(1時間足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●米上場企業の時価総額ランキング(2026年7月10日終値時点)

出所:ヤフーファイナンスのデータより筆者作成
スペースXとテスラ(TSLA)の最高経営責任者(CEO)を兼務するイーロン・マスクは、両者の統合を目指していると言われている。6月11日の日本経済新聞の記事「マスク氏の「究極目標」はスペースX・テスラ統合 IPOテコにAIへ資金」によると、両社を率いるイーロン・マスクの利点として、経営資源が分散してきた「マスク株式会社」ともいえる企業群の資金や技術を、今後の主戦場であるAI分野に集中できることだと指摘している。一方で、相乗効果が出なければ、事業を多角化した複合企業の価値が市場の投資家から割り引いて評価される「コングロマリット・ディスカウント」に直面するリスクをはらんでいるという。
ブームに乗らず収益性や需給動向を見極めるのがIPO投資の肝
今後、株価に大きな影響を与えると考えられるのが需給動向だ。今後数カ月でインサイダー(内部関係者)の売却制限が段階的に解除されるため、さらなる需給悪化(売り圧力)が警戒されている。上場初期の買い需要に対して、最大の売り圧力(需給悪化リスク)となるのが、内部関係者(インサイダー)の売却制限が解けるロックアップ解除である。今回のIPOでは段階的な解除スケジュールが組まれている。
※売却制限が解けるロックアップ解除の日程
8月11日:25%
8月21日:32%
9月10日:39%
9月25日:46%
10月10日:53%
10月25日:60%
11月9日:60%
12月9日:58-60%
その一方でナスダック100指数の構成銘柄として早期組み入れが決定したことは短期的には需給面でのプラス要因となる。ナスダック100指数への早期組み入れにともない、推定300億ドル-400億ドル規模の資金流入が発生すると試算されている。組み入れ日である7月下旬予定に向けて、市場では資金の流入を先回りした買いが入りやすく、足元の株価(150ドル前後)を下支えする強力なクッションとなることが想定される。
アーク・インベストメント・マネジメントを率いる著名投資家、キャシー・ウッドは、自社の主要ETFを通じてスペースX株の買い入れを本格化させている。ウッドは、スペースXがナスダック市場へ上場した直後から「破壊的イノベーション」の核心として、主要ETFを通じて連日のように大規模な買い付けを行っている。
とりわけ宇宙ビジネスを直接ターゲットとする「ARK宇宙探査&イノベーションETF(ARKX)」では、上場直後からスペースXが最大の組み入れ銘柄へと急浮上している。また、旗艦ファンドである「ARKイノベーションETF(ARKK)」は、テスラに並ぶ次世代の成長ドライバーとしてスペースXを大量に組み入れ、ポートフォリオの主軸に据えている。
足元で約50億ドルの純赤字を計上しているスペースXに対し、ウォール街の一部からは慎重論も出ているが、ウッド氏はスペースXを単なるロケット会社ではなく、地球規模の通信、計算インフラを提供する企業と定義している。傘下のAI企業「xAI」との連携や、軌道上データセンター構想は、ARKが掲げる「人工知能(AI)」と「宇宙探査」の2大テーマが交差する完璧な実例であり、他社が真似できない独占的価値を生み出すと見ている。
●2026年の大型IPO企業一覧

出所:StockMKTNewz
スペースXの上場が通過し、このあとアンソロピックといった大型の上場も控えている(オープンAIについては上場の延期が取り沙汰されている)が、IPO投資には注意が必要だ。少し古い記事になるが、1月11日のブルームバーグの記事「AI巨大企業の上場は審判の時、ITバブル前夜と類似」は、「ヘクトコーン」と呼ばれる企業価値が1000億ドルを超えるスタートアップ企業が2026年にIPOに踏み切る可能性があるが、歴史家に言わせると、その経緯はかつてのドットコム・バブル崩壊の前兆と重なると指摘している。特に、収益性が明確でない成長期待型の企業の場合は、初値で評価されても公開後のパフォーマンスが芳しくないというケースが多々見られる。IPOの成功は市場のボラティリティや金利環境、マクロ経済情勢に左右されやすく、タイミングや需給環境も重要だ。IPO後の株価パフォーマンスは銘柄により大きく差が出るため、ブームに乗らず個別に収益性や需給の動向を見極めることが必要になろう。
メガトレンドフォローVer2.0の売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
●SOX半導体指数CFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●KOSPICFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●日経平均CFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●NYダウCFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●S&P500CFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●ナスダック100CFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●ドル/円(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●ゴールドCFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
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石原順 プロフィール
1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のディーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。




