「マーケットの最前線」
2026年3月 9日第492回 原油急騰と石油株
ファンドマネージャー 石原 順
出遅れていた原油価格のトレンドが週足でも買いに転換ブルームバーグの3月6日の記事「原油100ドル目前、ホルムズ海峡の通航停止続けば-数日以内との予想も」は、中東での戦闘が続くほど危機的状況に近づくとの声が増えており、数日以内に原油価格は1バレル=100ドルに達するとの予測も複数出ていると報じた。世界のエネルギー市場において過去最大級の混乱が始まってから1週間がたち、エネルギー企業の経営者やトレーダーの間では警戒感が強まっているという。
現在、海運の要所であるホルムズ海峡を通過する船舶の往来はほぼ停止しており、エネルギー市場にとって長らく最悪のシナリオと考えられてきた状況が現実のものとなりつつある。中東での紛争が激化し、長期化への懸念が高まる中、原油価格が上昇している。戦闘が続けば、4年前のロシアによるウクライナへの全面侵攻と同様の影響を及ぼし、エネルギー価格を押し上げ、世界中の企業や消費者に価格上昇をもたらすことが想定される。
●WTI(NY原油)の推移
出所:EIA(米エネルギー情報局)のデータより筆者作成
原油価格が上昇した場合、「供給不安主導」で変動しているのか、「需要回復主導」なのかを見極めることが必要だ。需要の底堅さが確認されれば、原油価格は緩やかだが持続的な上昇トレンドに移行することも期待される一方、供給リスクが主導する場合、価格は急騰と急落を繰り返しやすく、ボラティリティが高まりやすくなる。今回は中東情勢の緊迫化を背景とした供給リスクに端を発したものであることから、しばらくボラティリティの高い相場になることが予想される。金や銀、プラチナといった貴金属価格が歴史的な高値圏で推移する一方、原油価格は長きにわたり方向感に欠け、価格上昇という観点から原油だけが取り残されてきた。貴金属と原油では価格を動かす要因が異なる。金や銀といった貴金属は、安全資産、インフレヘッジ、さらには通貨の代替といった金融的性格が強い。地政学リスクの高まり、金融不安、ドル安といった要因が生じると、実体経済に先んじて資金が流入し、価格が上昇する傾向にある。
一方、原油はエネルギーそのものであり、需給(実需)が価格形成の中心となる。景気減速懸念がある局面では、将来の需要減少が意識され、金融環境が緩和的であってもなかなか価格は上がりにくい。このため、貴金属価格が急激に上昇する局面において、金融要因に反応しやすい貴金属の上昇が先行し、原油価格は出遅れるという構図が生まれていた。
しかし昨年後半から、その原油価格に上昇圧力がかかり始め、今回のイラン攻撃で急激な動きとなった。原油価格の「メガトレンドフォローシグナル」のチャートで日足、週足は買いトレンド相場となっている。他のコモディティと比べ出遅れていた原油価格に変化点が見られた格好だ。●NY原油CFD(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●NY原油CFD(週足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
原油価格が100ドルを突破、オイルメジャーに及ぼされる両面の影響
米エネルギー大手のエクソン・モービル(XOM)とシェブロン(CVX)は1月30日、2025年第4四半期(2025年12月末)の決算を発表した。決算発表の電話会議では、アナリストからの質問の大半が地政学的なテーマに集中していたと言う。2社ともに共通するのは、記録的な原油生産量が原油価格下落による打撃を相殺した2025年だったということ。昨年、原油価格は2020年以来、最大の年間下落を記録した。まずはそれぞれの数字を確認しておこう。
エクソン・モービルの2025年第4四半期は、原油価格の下落や化学事業の低迷により減収減益とはなったものの、調整後1株利益は市場予想を上回った。2025年の純生産量は日量470万バレル(原油換算)と、40年以上ぶりの高水準に達した。
ダレン・ウッズCEOは決算発表で、エクソン・モービルは数年前と比べて根本的に強力な企業であり、2025年の業績がそれを証明していると述べるとともに、「2030年以降も収益性の高い長期成長の軌道を築いている」と付け加えた。
エクソン・モービルの売上高と純利益の推移

出所:決算資料より筆者作成エクソン・モービル(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
シェブロンの第4四半期も減収減益だったが、売上高、利益ともに市場予想を上回った。昨年の生産量はこちらも過去最高だった。シェブロンは第4四半期に1日あたり405万バレルの原油を生産した。これは2024年第4四半期の335万バレルと比べて約21%の増加となる。
マイク・ワースCEOは決算発表で、「2025年は同社にとって大きな成果を上げた年だった」と述べた。また、ワース氏は電話会議で、シェブロンは「今後18~24カ月で生産量を最大50%増やす可能性がある」とし、「当社の資産と米国には大きな可能性がある」と付け加えた。
●シェブロンの売上高と純利益の推移

出所:決算資料より筆者作成●シェブロン(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
中東情勢の緊迫化は、エクソンやシェブロンなどの米石油メジャーにとって、「短期的には原油高による利益拡大」と「中長期的には地政学的リスクによる供給不安定化」という両面の影響を与える。衝突激化やホルムズ海峡の封鎖懸念により、原油先物価格が一時100ドル台まで急騰する中、エクソンやシェブロンの株価は上昇傾向にある。今後、ホルムズ海峡の封鎖が長期化するかどうか、またそれによって原油価格がどの程度の水準で推移するのかが、両社の業績を左右する焦点となる。
メガトレンドフォローVer2.0の売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
●日経平均CFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●NYダウCFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●S&P500CFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●ナスダック100CFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●ドル/円(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●ゴールドCFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●NY原油CFD(日足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
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