「マーケットの最前線」
2025年8月18日第463回「ドラッケンミラーの最新ポートフォリオ」
石原 順
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保有するテスラ株を全て手放す一方、TSMC株の保有を積み増し
資産家で著名投資家のスタンレー・ドラッケンミラーが運用するファミリーオフィス、デュケーヌ・ファミリーオフィスが15日、SEC(米証券取引委員会)にフォーム13Fを提出した。2025年6月末時点でデュケーヌが保有する米国上場株式数は67銘柄と、3ヶ月前(2025年3月)に比べて差し引き18銘柄増加した。アマゾン(MZN)やアメリカン航空(AAL)、テスラ(TSLA)を含む16銘柄を売却した一方、新たにシティグループ(C)やゴールドマン(GS)などの金融株を取得した。またハイテク関連では、マイクロソフト(MSFT)を20万株、ブロードコム(AVGO)を8万株買い入れた。さらに、ゲームソフトウェア開発のユニティ・ソフトウェア(U)株を新たに取得したことが分かった。
●シティグループ(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター●ゴールドマン(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
マイクロソフト(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
ブロードコム(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
2025年6月末時点のデュケーヌ・ファミリーオフィスのポートフォリオ
(緑:新規ポジション オレンジ:全売却)
出所:フォーム13Fより筆者作成6月末時点の上場株式ポートフォリオを評価額順にまとめると、前回同様、トップはテキサス州オースティンに本拠を置く臨床遺伝子検査会社ナテラ(NTR)、2位はイスラエルの製薬会社であるテバ・ファーマシューティカル・インダストリーズ(TEVA)だった。また半導体材料を手がけるインテグリス(ENTG)を新たに164万株取得、上位8位に入った。インテグリスは、半導体及びその他のハイテク産業向けの先端材料及びプロセスソリューションのサプライヤーだ。
デュケーヌ・ファミリーオフィスが保有する上位10銘柄(2025年6月末時点)
出所:フォーム13Fより筆者作成
デュケーヌが半導体大手TSMC(TSM)の持高を前期末からさらに増やしたことを指摘しておきたい。昨年12月末時点での保有株数は107,515株だったのに対し、3月末時点の保有株数は598,780株と5.5倍余りに拡大、さらに、6月末時点では765,085株と、3月末から持ち高を約16万株増やし、上場株ポートフォリオの中で5番目の評価額だった。
●TSMC(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
デュケーヌがヘルスケアの持分を増やしていることと関連して考えると、ドラッケンミラーはTSMCについて、現代の社会機能の維持に必要不可欠な業務であるエッセンシャルな業務として捉えているのかもしれない。
●デュケーヌ・ファミリーオフィスによるハイテク関連株の保有動向(2025年6月末時点)
出所:フォーム13Fより筆者作成世界のインターネットトラフィックを支える「海底ケーブル」関連のコーニング社
ドラッケンミラーが4-6月期に新たに取得したポジションの中からコーニング(GLW)を取り上げたい。●ゴーニング(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
デジタル経済が爆発的に成長していることにより、データセンターが前例のないペースで増えている。こうした施設は、世界のインターネットトラフィック(インターネットを通じて送受信される情報)の95%以上を処理していると推定され、数十億人のユーザーにリアルタイムの接続を提供している。また、データセンターは経済的競争力を左右するだけでなく、国の経済安全保障にも欠かせない重要なインフラとなっている。
●世界のデータセンターの4割以上が米国に集中
出所:IEA(国際エネルギー機関)のデータより筆者作成●データセンターのキャパシティの推移と前年比変化率
出所:IEA(国際エネルギー機関)のデータより筆者作成こうした通信を支えているのが世界中の海底に張り巡らされた「海底ケーブル」だ。インターネットなどの通信データを送るために海底に敷設された「海底ケーブル」には光ファイバーが使われている。かつては衛星通信が主流であったが、データ量や速度で優れていることから、現在は海底ケーブル通信が国際通信の約99%を担っている。一方で、国際データ通信量の急増や海底ケーブルの切断事故の多発を背景に、世界的に海底ケーブルの敷設船が不足していると言う。
そうした中、脚光を浴びているのがコーニングである。コーニングは1851年に設立、液晶ディスプレイ用ガラスパネルや光ファイバーなどを手がけている。現在、光ファイバーと液晶・有機EL用ガラス基板で世界シェアトップにある。株価は過去1年間で約6割上昇しており、パフォーマンスは好調だ。
コーニングが7月29日に発表した2025年第2四半期の業績は、売上高と利益ともに市場予想を上回った。高速のデータ通信に使う光ファイバーなどの需要が拡大していることを背景に、今年後半に向けても好調な業績が続くとの見通しを示した。
●コーニングの売上高と最終損益の推移
出所:決算資料より筆者作成決算発表資料によると、コーニングは全米の15州に34の生産拠点を持っている。米国で販売される製品の約9割を国内で製造していると言われている。このため、トランプ関税の影響をあまり受けないであろうことも注目に値するポイントだ。
コーニングのウェンデル・ウィークスCEO(最高経営責任者)は米国の先端製造拠点を活用する流れが「今後数カ月で追加の成長要因になる」との見通しを示すとともに、「総じて、当社は2026年以降も持続可能な成長を実現する立場にある」と述べた。AIを中心としたデータセンターインフラへの転換に伴い、光ケーブル、光ファイバー市場は成長フェーズに突入している。
メガトレンドフォローVer2.0の売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
●日経平均CFD(日足)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●NYダウCFD(日足)
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●S&P500CFD(日足)
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●ナスダック100CFD(日足)
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ドル/円(日足)
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ゴールドCFD(日足)
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