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2025年1月20日

第433回「テクノロジー業界で過去最大規模のM&A?インテルは買収されるのか!」石原 順

石原 順 石原 順

  • インテル買収案が再浮上、株価は一時9%上昇


    1月17日の米株式市場で半導体メーカーのインテル(INTC)株が急伸し、一時、上昇率が9%を超える場面があった。テクノロジー関連ニュースサイト、セミアキュレートは、インテルが買収の標的になっていると報じた。「インテル社全体を買収しようとしている企業についての電子メールを読んだ」としており、「その謎の企業には買収をやり遂げるだけのリソースがある」と伝えた。

     

    かつて世界の市場を席巻し半導体業界の王者と呼ばれたインテルであるが、近年は競争激化や業界の急速な変化への対応に苦戦しており、株価は2024年に60%下落した。昨年12月には、技術者出身のパット・ゲルシンガーCEO(最高経営責任者)の退社が発表された。IDMIntegrated Device Manufacturer:垂直統合型デバイスメーカー)に拘ったゲルシンガーと取締役会との対立もあり、道半ばで事実上更迭された格好だ。

     

    ゲルシンガーは18歳で品質保証担当の技師としてインテルに入社、フルタイムで働きながら大学に通い、インテル創業者の1人であるアンディ・グローブをメンターとし、インテルで初となるCTOを勤めた人物である。インテルで30年勤務した後、他社のCEOを勤めていたが、インテルの未来を託され約4年前に復帰していた。

    インテルについては、昨年にも、同業他社から買収の打診があったことが報じられている。話をもちかけたのは米半導体大手のクアルコム(QCOM)だ。インテルの時価総額(約900億ドル)は、米マイクロソフト(MSFT)がゲーム会社、米アクティビジョン・ブリザード買収に投じた約690億ドルを上回っており、クアルコムがもしインテルを買収することになれば、テクノロジー業界で過去最大規模のM&Aとなる可能性があると伝えられた。

     

     

    インテル(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター



    インテル(週足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     


    インテルの売上高と最終損益
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    出所:決算資料より筆者作成

     

     

    クアルコムにはインテルを買収するだけのリソースがあるのか?

     

    クアルコムは、スマートフォン向けチップの大手サプライヤーであり、携帯電話と携帯電話基地局間の通信を管理するチップなども手がけている。さまざまなデバイスがある中でも、クアルコムはとりわけアップル(AAPL)のiPhoneにとって最も重要なサプライヤーの1社である。

     

     

    クアルコム(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    クアルコム(週足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    冒頭に取り上げたセミアキュレートの記事の指摘にあるようにクアルコムは「十分なリソースを持っている」企業なのか。以下はFinanceCharts.comのデータを元に、時価総額に対する現金保有比率の高い順番に50社をランキングしたものである。(データは20241213日現在のもの)なお、現金保有高には、現金および現金同等物(短期流動投資、例えばTビルなど)の両方が含まれている。

     

    上位の中には、ゴールドマン・サックス(GS)やモルガン・スタンレー(MS)などの金融サービス企業がランクインしている。金融機関は経済の重要インフラとして、一定レベルの資産を維持することが求められているため、現金保有高を厚めにしておくというのは当然だ。また、日々の業務を円滑に進めるための現金準備高が多いことは、財務の健全性を示すシグナルにもなる。

     

    一方で高い収益性を背景に、アルファベット(GOOGL)やアマゾン(AMZN)、マイクロソフト(MSFT)、メタ(META)、アップル(AAPL)等、テクノロジー企業についても保有する現金残高が積み上がっている。こうしたテクノロジー企業はAI等への研究開発、データセンターの建設、企業買収、自社株買い等に潤沢なキャッシュを活用することが出来る。

     

    時価総額に対する現金保有比率の高い米国企業
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    出所:FinanceCharts.comのデータから筆者作成

     

     

    インテルは伝統企業であり、業績は低迷しているものの、それなりの資産を保有している。しかし、株価の評価額が低いため時価評価額に対する現金保有残高の割合は28%と高く、ランキングでは15位に入っている。一方でクアルコムの現金保有残高はインテルの半分に満たないものの、時価総額はほぼ2倍だ。

    AI
    時代に入り、世界中で爆発的にデータ量が増えていくことが想定される。ZDNet Japanの記事「2025年には世界で生成されるデータの約30%がリアルタイムデータにーIDC」によると、世界のデータ量は2017年の23ゼタバイトから2025年には175ゼタバイトへと増加する見通しだ。1ゼタバイトは1兆ギガバイトに相当する。

     

    また、データを生成する消費者の数も増えている。現在、50億人を超える消費者が毎日データをやり取りしているが、その数は2025年までに60億人に増え、世界人口の75%に相当すると言われている。機械学習や自然言語処理などの技術を使い、これまで出来なかったようなことが当たり前にできる時代になってきた。AIスピーカーが日常的に使われるようになり、YouTube動画では字幕が自動的に生成される。また、自動運転などの技術も進化し続けている。


    世界のデータ量の変化
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    出所:ZDNet Japan

    インテルを買収すれば、クアルコムはカバーする事業範囲が大幅に拡大することになる。一方のインテルにとっては、過去に参入しないと判断したスマートフォン向けチップ事業による返り討ちを約20年後に受けるような形になる。業績が低迷する中でも資産と技術を持っていることは明らかだ。データ爆発の時代を迎え、最先端の半導体技術を持っているかどうか、クアルコムにとってはHPCなどへの進出を考えればインテルというのは最適なパートナーなのかもしれない。

     

     

    メガトレンドフォローVer2.0の売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)

     

     

    日経平均CFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    NYダウCFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    S&P500CFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    ナスダック100CFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    ドル/円(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    ゴールドCFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

     

     

    日々の相場動向については、

     

    ブログ『石原順の日々の泡』

     

    https://ishiharajun.wordpress.com/

     

    を参照されたい。

     

     

     

     

     

     

     

     

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