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「マーケットの最前線」

2023年5月22日

第348回「高すぎる!?エヌビディアはAIへの期待からPSR29 倍、PER182 倍で取引されている」石原順

石原順 石原順



  • ビルダーバーグ会議においても主要な議題となったAI

    オープンAIのサム・アルトマンCEOが16日、米国議会上院司法委員会が開いた公聴会に出席し、AIに対する今後の方針として「利点を伸ばす一方で、AIの害を最小限に抑えるための政府による規制介入が重要になる」との考えを示した。


    今回の公聴会においてアルトマン氏は、ChatGPTを使って法案を書かせるというデモンストレーションを行い、多くの議員を驚かせたと伝えられている。

    2時間にわたり講演を行ったアルトマン氏は、AIにまつわる安全基準の設定およびAIの一般公開前に行うテストの確立、独立監査人による公開前の検査などを提案し、「ますます強力になるAIモデルのリスクを軽減するためには、政府による規制の介入が重要になると考えている」との見解を示した。

    ただし、アルトマン氏は「オープンAIがこれまでに展開したツールの利点はリスクを大きく上回ると考えている。私たちは新しいシステムをリリースする前に大規模なテストを実施し、安全性と監視システムを導入している。AIというテクノロジーは雇用市場に大きく影響をもたらすが、影響を乗り越えた先にははるかに大きな仕事がある。」と述べ、AIの可能性と先行きに対しては前向きな姿勢を示した。

    目下のところAI技術は世界の話題の中心だ。



    ●マイクロソフト(週足)
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    マーケットナビゲーターの売買シグナル(ピンク:買いトレンド・シアン:売りトレンド)

    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター



    ●エヌビディア(日足)
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    マーケットナビゲーターの売買シグナル(ピンク:買いトレンド・シアン:売りトレンド)

    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター



    ●NVIDIA はAIへの期待からPSR29 倍、PER182 倍で取引されている
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    (今年の株式市場は二極化している。一方はわずかな巨大テク企業で構成され、非常に好調だ。もう一方は残りの銘柄すべてで、散々なパフォーマンスだ)

    出所:クリエーティブプランニング



    ●エヌビディア(週足)
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    マーケットナビゲーターの売買シグナル(ピンク:買いトレンド・シアン:売りトレンド)

    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター



    世界の権力者が集うビルダーバーグ会議の第69回会合が5月18日から21日の日程でポルトガルのリスボンで開催された。ビルダーバーグ会議は欧州と北米の対話を促進することを目的に1954年に設立され、政治家、産業界、金融界、労働界、学界、メディアから120〜140人の専門家が招待される会議である。

    ビルダーバーグ会議は、主要な世界を取り巻く課題について非公式に議論する場で、参加者は公的な立場ではなく個人として参加し、職場の慣習や事前に合意した立場に縛られることはないという前提の上に運営されている。

    参加者は受け取った情報を自由に使用できるが、発言者や他の参加者の身元や所属を明らかにすることはできないという「チャタムハウス・ルール」に基づいて開催され、決議案も提案されず、投票も行われず、政策声明も発表されない。これらがこの会議の神秘性を高めている背景でもあろう。

    今年の主な議題は「AI」、「銀行システム」、「中国」、「エネルギー転換 」、「欧州」、「財政問題」、「インド」、「産業政策と貿易」、「NATO」、「ロシア」、「国境を越えた脅威」、「ウクライナ」、「米国のリーダーシップ」の13項目が挙げられている。

    前述のオープンAIのサム・アルトマン氏、マイクロソフトのサティア・ナデラCEO、パランティア・テクノロジーズのアレックス・カープCEO、グーグルのエリック・シュミット元CEOなど、ハイテク、AI業界の大物たちも勢揃いすると言う。この他、ファイザーのCEOやティールキャピタル創業者のピーター・ティール氏、ゴールドマンサックスのジョン・ウォルドロン氏も参加する。また、元米国国務長官ヘンリー・キッシンジャー氏、NATO事務総長イェンス・ストルテンベルグ氏、ウクライナ外相のドミトロ・クレバ氏など政治界の重鎮も加わる。

    今回の会議の議題の中で一番上にAIが取り上げられたことについて、米CNBCは「AI技術の急速な発展に対する懸念が、世界的に大きくなっているという点を示している」と分析した。一部企業では、業務においてChatGPTの利用を制限するといった動きも出てきている。規制が議論されるということはそれだけ影響力が大きいということだろう。生成AIをめぐる話題は今後さらに大きくなっていくだろう。

    政府債務に対処するには超党派による大幅な改革が必要


    米国政府の債務上限引き上げを巡る交渉が難航している。バイデン大統領は19日、広島県で開催されていた主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)の夕食会を米政府の債務上限引き上げを巡る調整を優先し、途中退席したとのことである。

    政権と共和党の協議は双方の主張が平行線のまま対立が続いている。もし政権と共和党との間で交渉がまとまらなければ、政府の資金繰り策は早くて来月1日にも行き詰まるとみられており、アメリカ国債が歴史上初めて債務不履行に陥る恐れもある。



    ●米国の債務上限の上昇(1970年~2023年)
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    出所:ビジュアルキャピタリスト




    ●米国政府が抱える赤字額の推移(2023年以降は予測)
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    出所:ゼロヘッジ



    世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエイツの創設者、レイ・ダリオ氏は債務上限に関する議論について、自身のLinkedInのページに「What Should Be Done About the Debt Ceiling Argument Between the Democrats and Republicans?(民主党と共和党の債務上限論争にどう対処すべきか?)」と題する投稿を公開した。

    ダリオ氏は、あまり重要でなく、実際よりも良く見える方法で物事を調整するであろうことから、バイデン政権と共和党の争いがデフォルトにつながるとは考えていない。このため、史上初の債務不履行を回避できるだろうとしつつも、今後、政府が支出を効果的に抑制することができなければ、大きな問題が待ち受けていると警告している。簡約したものを抜粋してご紹介しよう。

    自分は5つの大きな力に焦点を当てるグローバル・マクロ投資家である: 1)マネー・クレジット・経済力、2)国内政治力、3)国家間の地政学力、4)自然力、5)学習・技術力だ。これらは互いに表裏一体であり、特に米国の債務上限問題に関しては、マネー・信用・経済と政治の力が重要である。そのため、この質問に答えるにあたり、政治的な問題から始める。なぜなら、政治的な問題こそが、適切な意思決定に対する最大の脅威であると考えるからだ。


    自分の見るところ、現在、政治的な「タイプ」は、右派系、左派系、そして超党派の穏健派の3つに分かれる。歴史を紐解くと、南北戦争前の大きなサイクルの中で、常にこのように並んできた。そして、人々は、どちらかの側に立って戦うか、あるいは黙って隠れているか、どちらかを選ばざるを得なくなる可能性が高くなると考えている。考えてみてほしい。もし、どちらか一方を選んで戦わなければならないとしたら、あなたはどちらを選び、戦うか隠れるか?


    自分は、内戦は、赤い州と青い州、連邦政府と州政府の間、持つ者と持たざる者の間の分裂という形をとる可能性が高いと思う。特に青い州や貧富の差が大きく、財政が悪く、麻薬、精神疾患、犯罪などの社会問題が最悪なところでは、このような分裂が起こるだろう。いずれにせよ、私は財政・経済問題が大きいと考えているので、財政的、経済的、社会的、政治的に正しい軌道に乗せるためには、超党派による大幅な改革が必要だと考えている。

    この制度の改革を伴う超党派のスマートなプランは、米国の金融、経済、国家債務の問題すべてに対処するために必要だと指摘しており、その理由について以下のように論じている。


    これまで78回行われてきたように、数回の会議でこの問題を解決し、迅速な回答に移ろうとすることは、根本的な問題を解決せず、結局はひどい結果を招くことになると思う。自分はもっと構造的な変化が必要だと考える。現在進行中のような、一時的で迅速な、道路を蹴破るタイプの動きも必要だと思うが、それには十分な時間をかけて練られる、超党派の賢い計画が伴わなければならない。

    私は、1)スマート、2)超党派、3)プラン、4)十分な時間という言葉を強調する。実際に機能するものを作るには、両党のリーダーが合意し、債務上限を引き上げたくない、あるいは経済的にも社会的にも機能する予算編成の長期的アプローチに妥協したくないという両党の過激派の反対を押し切らなければならない。妥協して現実的なことをしようとする穏健派と、そうでない過激派との戦いは、いつか近いうちに必要になるものであり、今、戦っておいたほうがいいかもしれない。

    このようなスマートな超党派の道を支持するリーダーは、超党派の大きな支持を受けるべきだと思う。むしろ、スマートな超党派のアプローチを見つけられず、確実に災害に向かっていくような代替案よりも。もし一方がこれに同意しないのであれば、もう一方は公然と挑戦状を叩きつけ、相手がこの問題に協力的に取り組む気がないことを示すべきである。

    残念ながら、第一次産業の政治システムは、よく認識されている方法で過激主義を助長している。超党派で最良の結果を追求する強力なリーダーは、この動きをする勇気を持たなければならないだろう。もしかしたら、最終的には、両党の超党派の穏健派が第3の政党に結集するかもしれない。

    とにかく、歴史と常識が教えてくれるのは、スマートな超党派主義が、私たちが共にうまく乗り切るための唯一の方法だということだ。中間が極端(極右や極左)を追い越す必要がある。自分としてこうしたことが実現すると思うか?残念ながらその可能性は低いと思う。最も可能性が高いのは、これらの勢力が大きくぶつかり合う方向だ。

    こうした問題に対して、自分であればどのように対処するのかということについては、次のように述べている。

    一言で言えば、自分達(アメリカ人)が、集団で支出を上回る収入を得るために必要な改革を行い、パイを大きくし、パイをうまく分配し、持続可能な政府財政を実現することだと自分は考えている。自分は生産性こそが、生活水準を落とさずに健全な財政状態にするために、敬遠されがちでありながら最も必要な要素であると考えている。

    生産性を向上させることが、所得が支出を上回る唯一の方法であり、負債をうまく管理するために必要なことだからである。なぜ政治的な対立軸の双方が生産性に注目しないのだろうか?なぜなら、多くの人は、必要なものを得るために他者と交換するために何を生産するかよりも、何を得るかに重点を置いているからだ。

    生産性を向上させ、その恩恵を多くの人が受けられるように分配することが、うまくいく唯一の道であり、それは費用対効果の高い方法で行われなければならない。教育、インフラ、薬物問題への対処、精神疾患への対処など、幅広い機会を生み出すプログラムには、優れたダブルボトムラインの投資がたくさんある。もちろん、債務管理・再編計画も、賢明な計画の一部である必要があります。しかし、前述した通り最も重要なのは、パイを大きくしてうまく分けられるような、賢い超党派の計画を立てることだ。

    フィナンシャルタイムズ紙によると、米国はウクライナの軍事援助の主要な供給源となっている。FT紙が取材した米国政府関係者によると、議会が事前に承認した残りの資金で、ウクライナをあと5カ月ほど維持できるそうである。西側当局者は、米国はその期間を、ウクライナが現地の状況を変えるための最後の現実的なチャンスと見ているとFTに語った。

    しかし、もう一つ問題がある。それは、バイデン大統領が彼の非常識なアジェンダに屈しない限り、6月1日以降、債務上限と資金の流れが止まってしまうということである。

    バイデン大統領は、「今こそ共和党側が過激な主張から歩み寄る時だ。彼らが提案してきたことの大部分は率直に言って、受け入れがたい」と述べている。バイデン大統領がワシントンに戻る機内から共和党のマッカーシー下院議長と電話で協議を行い、22日午後に直接会談することになっている。

    マーケットナビゲーターの売買シグナル(ピンク:買いトレンド・シアン:売りトレンド)



    ●日経平均CFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター



    ●NYダウCFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター



    ●S&P500CFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

    ●ナスダック100CFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター



    ●ドル/円(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

    ●ゴールドCFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター



    日々の相場動向については、

    ブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com/

    を参照されたい。


    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のディーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファン ドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市 場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当 する現役ファンドマネージャーとして活躍中。



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