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2023年1月23日

第331回「アンケート:【2023年、世界の株式市場は暴落するのか?】」石原順

石原順 石原順

  • 日本のリスクは世界で最も過小評価されている!?

    日本銀行は、17-18日に開催した金融政策決定会合において大規模な金融緩和政策の現状維持を決定し、長期金利の許容変動幅についてもプラスマイナス0.5%程度に据え置くことを発表した。黒田東彦総裁は決定会合後に開かれた会見において、今後機動的な政策運営によって市場機能が改善していく見通しであり「YCC(イールド・カーブ・コントロール)は持続可能だ」と述べ、長期金利の変動幅をさらに拡大することに対しては否定的な見解を示した。

    ただ、市場では日銀が債券市場のコントロールを失いつつあるとの憶測が広まっており、日銀が今後、緩和路線を転換せざるを得ないとの観測が広がっている。新発10年物国債の利回りは日銀が上限とする0.5%を超えている。日銀は金利の上昇を抑えるために10年債を大量に購入しており、8、9年物国債の利回りが10年債を上回るといったゆがみを残している。


    ●日銀は過去7ヶ月で76兆円の日本国債を買っている(日本のGDPの14%に相当する)
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    出所:ゼロヘッジ

    債券市場はすでに黒田YCC体制の新たな上限を試そうとしている。これが今後、世界の金融システムに衝撃を与えるきっかけになる可能性があると考える。日本の最近の動向は世界の金融市場にとって過小評価されたリスクであると言える。

    日銀がYCC政策を廃止せざるを得なくなった場合、金融市場にどのような影響があるのだろうか。世界的なインフレなど、今、多くのニュースの背景にある根本には、世界中で実施されてきた金融政策がある。人為的に金利を低く抑えることでもたらされた超低金利は、その結果として資本の誤配分や投機の嵐をもたらした。

    日銀は黒田総裁のイールドカーブコントロール政策を実行するために日々、数兆円規模を費やしている。言い換えれば、数兆円を使わなければ金利を抑制することができなくなっていると言うことだ。

    総務省が発表した12月の消費者物価は、前年同月比で4%上昇した。さらに、ユニクロをはじめとする企業が賃上げを表明している。このような変化の兆し、前兆はいくつか顕在化しつつある。こうしたことは舞台の裏にある大きなリスクであり、世界はこれらのことにもっと注意を払わなければならない。

    ミセス・ワタナベと呼ばれるように、日本の資産の多くが利回りを求め海外の市場に投資されている。もし突然、日本円建ての金利が上昇すれば、こうした資金の多くが日本に回帰する可能性があり、その結果、市場のボラティリティは突如、急上昇することになるだろう。

    世界の株式市場は暴落するのか?


    2023年の株式市場について専門家と言われる人々が様々な見通しを示している。それらは極めて楽観的なものもあれば、悲観的なものまでいろいろだ。36カ国で2万4000人を対象に行われたアンケートをまとめたヴィジュアル・キャピタリストの記事「Will Global Stock Markets Crash In 2023?(2023年、世界の株式市場は暴落するのか?)」から、一部を抜粋してご紹介したい。

    アンケートは2022年10月から11月にかけて行われ、翌年(2023年)の世界の主要な株式市場が暴落するかどうかについて、「ありそうだ」「なさそうだ」のどちらかを回答してもらった結果を集計、各国とも500人以上、G7や中国、ブラジル、韓国などの主要国は約1000人を対象にしたものである。


    まず、株式市場の暴落予測を国別に見てみると、2023年に世界の株式市場が暴落する可能性は「低い」よりも「高い」と感じている回答者が世界的に多かった。調査対象27カ国中24カ国で、人々は「可能性が高い」と考えていることがわかった。

    最も悲観的な回答をしたのはマレーシア、ポーランド、南アフリカで、60%以上の回答者が2023年に市場が暴落する可能性が高いと回答した。マレーシアは71%が2023年の暴落があり得ると見ている。

    一方、可能性が低いと考えている国民は、中国、イスラエル、ハンガリーの3カ国だけであった。中国は「可能性は低い」が50%と最も高く、ハンガリーは「可能性は高い」が47%に対し、「可能性は低い」はわずか33%であった。

    ●国別の株式市場暴落予測
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    出所:ヴィジュアル・キャピタリスト

    2023年の回答を2019年と比較すると、多くの国で不安と悲観が高まっていることがわかる。世界の株式市場が暴落しそうだという回答は27カ国のうち25カ国で上昇し、8カ国では20%ポイント以上上昇した。南米のチリとペルーではそれぞれ32pp、30ppと、最も高い上昇率を示している。総じて、新興国において不安が高まっている。

    一方、東アジアに目を転じると、中国が12pp、韓国は26ppと最も大きく増加したものの、日本は4ppと2019年からの変化は相対的に大きくなかった。2019年時点で「ありそうだ」と答えた人の割合が元々高かった可能性もあるが、前段で述べたように日本のリスクは自国においても過小評価されていることも想定される。

    ●国別の株式市場暴落予測(2023年と2019年の比較)
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    出所:ヴィジュアル・キャピタリスト

    マーケットナビゲーターの売買シグナル(ピンク:買いトレンド・シアン:売りトレンド)

    ●日経平均CFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

    ●NYダウCFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

    ●S&P500CFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

    ●ナスダック100CFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

    ●ドル/円(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

    ●ユーロ/ドル(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

    ●ポンド/ドル(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

    ●ゴールドCFD(日足)
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    出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター



    日々の相場動向については、

    ブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com/

    を参照されたい。


    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のディーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファン ドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市 場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当 する現役ファンドマネージャーとして活躍中。




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