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「マーケットの最前線」

2020年9月28日

第247回「天才科学者も計算できなかった狂気!狂気とバブルの歴史と投機のサイクル」石原順

石原順 石原順

  • 落ち込みが予想される財政支援なき米国経済

    以前よりレポートやラジオ番組で「秋相場には注意が必要」とコメントをしていたが、ボラティリティの大きな動きは来月にかけても続く可能性がありそうだ。グッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナード氏は10月にかけてもリスク資産の下げが継続するとして次のようにツイートした。

    ①Scott 20200928.png
    出所:ツイッター

    「リスク資産の後退は季節的な要因によるものである。10月にはさらなるダウンサイドが予想されるだろう。テクニカルもさらなる下げを示唆している。」マイナード氏によると、この調整はあくまで季節的なものであり、時期を過ぎれば金融緩和の継続により資産価格のバブルも継続するとの見通しを示している。

    しかし、市場はすでにFRBの緩和はピークに達しており、これ以上の対策は見込めないとの見方が広がっている。マーケットウォッチの記事「Stock markets have now seen the 'peak of Fed stimulus' unless these two things happen(株式市場は今、次の2つのことが起こらない限り、「FRB刺激のピーク」を見ている。)」から市場関係者の見方を確認してみたい。

    G-Plus EconomicsのチーフエコノミストLena Komileva氏は、政府のミスや市場のショックがない限り、市場は今、「FRB刺激策のピーク」に達したと述べた。「経済への新たな外生的ショックや、11月の選挙以降の回復を新たに支えることができない財政政策の誤りを除けば、市場はFRB刺激策のピークを見たというわれわれの見方を補強している」と。

    AxiCorpのマーケットアナリストMilan Cutkovic氏は、FRBがこれ以上の措置を講じる兆候がないため、新たな景気刺激策をめぐる議会の動向が注目され、さらなる遅延が市場に影響を与える可能性があると述べた。「注目は米国議会に戻り、民主党と共和党はまだ景気刺激策に合意するのに苦労している。投資家は進展がないことにますます焦りを感じており、すぐに取引が行われない場合、市場のセンチメントは悪くなる可能性がある。」

    一方、22日に下院金融委員会で証言を行ったパウエルFRB議長は「先行きはコロナウイルスの抑制、政府のあらゆるレベルでの政策措置にかかってくる」と述べ、景気回復は進行しているものの「雇用と全般的な経済活動はいずれも、パンデミック前の水準を大きく下回ったままで、先行きは極めて不透明だ」との認識を示し、追加支援の必要性を強調した。
    様々な経済データが示唆する以上に米国経済は脆弱であり、経済をリバウンド軌道に乗せるための新たな財政支援の重要性が示されたわけであるが、議会は追加の景気刺激法案についての協議を放棄し連邦最高裁判事の空席に焦点が移っている。

    その米国経済の見通しについては、ゴールドマンサックスが大幅に下方修正を行った。ゴールドマンサックスによると、財政面での追加景気対策が来年まで実施されないと判断し、10-12月(第4四半期)の経済成長率を前期比年率3%に引き下げた。従来予想は6%と見込んでいた。


    ●ゴールドマンサックスの米国のGDP見通し
    ②ゴールドマンサックスの米国のGDP見通し 20200928.png
    出所:ゼロヘッジ

    ゴールドマンは、「議会が財政による追加刺激策を継続的な解決策に加えないことは今や明らかだ」と指摘。「これは現在実施されている失業保険上乗せ給付の最終段階が終わった後は、財政による追加支援は2021年まで待たなければならない可能性が高いということを示唆している」と、述べている。

    この財政支援の打ち切りによって大きな影響を受けるのが個人の可処分所得であろう。第4四半期の個人可処分所得は、第2四半期をピークに第3四半期に減少し、第4四半期にはさらに減少し、ほぼパンデミック前の水準まで低下すると予想されている。財政支援の大幅な減少は民間所得の増加を上回る可能性が高い。


    ●第4四半期における個人の可処分所得は低下が見込まれている
    ③可処分所得は低下 20200928.jpg
    出所:ゼロヘッジ

    その一方、第4四半期の成長の減速によって「その後の回復余地が広がる」とも指摘。成長率は今年がマイナス3.5%、21年はプラス5.8%と予想している。マイナード氏も指摘しているようにしばらくは強い向かい風が吹く秋になりそうだ。


    天才科学者も計算できなかった人の狂気

    近代物理学の父祖の一人であるアイザック・ニュートンは世界三大バブルの一つと言われている英国の南海泡沫事件で現在の価値にして約300万ドルに相当する額を失ったと言われている。1720年イギリス政府が売り出した「南海会社」の株式が爆発的な人気を集め、この動きに乗じようと、実態のない会社、つまり「泡沫会社」(Bubble company)の株価も急騰し、株式市場は狂乱状態となった。南海泡沫事件はこの投機ブームによる株価の急騰と暴落のことで、泡沫=バブルの語源となった出来事である。

    天才学者ニュートンは南海会社株に初期段階で投資を行っていた。ニュートンは市場が投機の熱狂の初期段階にいることに気付き、それが最終的には悪い結末を迎えることを悟っていたため、早めに利益を得て自分の持ち株を清算し大金を稼いだ。

    しかし、彼が市場から退場したのち、南海会社株は歴史上最も伝説的な上昇を経験することになる。バブルが膨らみ続けるのを見ていたニュートンは、いてもたってもいられず再び株式市場に飛び込んだ。しかし残念ながら、それが株価のピークだった。株価が急落する中で、やってはいけない「ナンピン買い」まで行っていたそうだ。

    ●南海会社の株価の推移 (1718年12月から1721年12月まで)
    ④南海会社の株価 20200928.png出所:ゼロヘッジ

    さらに注目すべきは、ニュートンは再エントリーした際、ほぼすべての手持ち資産を南海会社株に注ぎ込んだことである。ニュートンといえば、造幣局長官も務めており、金融や市場に精通している人物であった。しかしそうした人物でもバブルに踊り、バブルに翻弄されてしまうのだ。

    歴史を振り返ると市場は常に投機的な「バブル」と「バスト」を繰り返してきた。そしてバブルのたびに「今回は違う」と信じられ、そして「バスト」を迎え、今回も同じだったとなる。バブルに共通する分母は何なのか。

    ⑤How did we get here 20200928.png
    出所:リアル・インベストメント・アドバイス

    ・膨大な額の信用の積み上がり
    ・融資政策の緩み
    ・住宅価格の高騰 / 不動産投機
    ・ユニークな投資機会(ヘッジファンド)
    ・レバレッジの爆発
    ・世界中においてデリバティブ取引が好まれるようになる
    ・会計システムの悪用
    ・アマチュア投資家による投機熱の高まり

    現在の市場をまさに映し出していると思われるであろう。しかし、このスライドはリーマンショックの1ヶ月前、2008年のプレゼンテーションのものである。つまり、投機サイクルは常に同じ道を辿るということである。

    投機は価格の上昇による「正のフィードバック」のループによって強化され、その結果、「経験の浅い投資家」を市場に参入させることになる。ポジティブ・フィードバック・ループが続き、「陶酔感」が高まると、投資家は市場でのリスクを「レバレッジ」し始める。このサイクルは以下の通りである。

    ●投機のサイクル
    ⑥投機のサイクル 20200928.png
    出所:リアル・インベストメント・アドバイス

    1)バリューレベルで投資家がマーケットに参入 → 2)株価が上昇 →3)変化が始まる → 4)投機家がIPOに目を止める → 5)初心者投資家がマーケットに参入 → 6)株価が上昇 → 7)ポジティブ・フィードバック・ループ、株価は上昇するのみ → 8)株価の上昇が心理的に強化される → 9)陶酔感が広がる → 10)レバレッジをかけた投資家が増える → 11)陶酔感が熱狂になり、クレジットが拡大 → 12)熱狂によりリスクの許容度が高まる → 13)リスク許容度の高まりによって詐欺や相場操縦が横行する → 14)マーケットがクラッシュし、投機が一掃される → 15)新たな規制とともに政府が介入 → 16)投資家はすべてのリスクを避ける

    南海バブルで大きな損失を負ったニュートンは次のように言った。

    「天体の動きは計算できるが、人の狂気は計算できない」


    ラリー・ウィリアムズの日経平均予測

    米著名投資家のラリー・ウィリアムズは日経平均について、「ここで新高値をブレイクするような相場ではない。日経平均は6月以来大きな取引レンジに入っており、最良のトレード戦略は短期的な上昇局面で売って、短期的なブレイクで買い戻すことだと思う」と、述べている。しばらく、レンジ相場を想定しているようだ。

    ●ラリー・ウィリアムズの日経平均予測
    ⑦LW日経平均予測 20200928.png
    出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2020年9月28日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。



    日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com/

    を参照されたい。




    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。

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