「IwaiCosmo Market Topics」
2024年12月24日2025年の株式市場展望
投資調査部長 有沢
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2025年の株式市場は、日経平均が4万円を超える水準で新たな上昇ステージを目指す1年になるだろう。2024年は、年初から上昇した日経平均が、2月に34年ぶりとなる史上最高値を更新、3月には初の4万円台に乗せるという歴史的な1年となった。8月には、1日の下げ幅が過去最大を記録する波乱局面もあったが、その後は底堅い動きを続けながら、次なる上昇の機を窺っている。日本経済のデフレ脱却期待や好調な企業業績、上場企業の資本効率向上への取り組みや新NISA導入に伴う新規資金の流入など、2024年の株式市場をかつてない水準まで押し上げた材料は、いずれも健在で、決して色褪せてはいない。
高水準の賃上げを支えにして堅調に推移する個人消費については、4月に開催される大阪・関西万博による盛り上がりも期待したい。一方、旺盛なDX関連投資と人手不足が相まって企業の設備投資も高水準を保っている。2024年に名目GDPは初めて600兆円を超えたが、個人消費と設備投資の両輪で、日本経済は緩やかな成長軌道へ向かうだろう。そして、4期連続となる過去最高利益の更新が視野に入る堅調な業績を背景に、配当総額と自社株買いも過去最高を更新する見通しで、上場企業の資本効率改善と株主還元強化の取り組みはさらに進むだろう。
割安な日本株に対する見直しの機運は高まっていくだろうが、不透明感が強い内外の政治情勢には警戒を余儀なくされる。中でも、米国のトランプ新大統領が打ち出してくる通商政策は、年明け早々から目が離せない。新大統領が推進する大規模な減税や規制緩和は、生成AIを中心として新しい産業が育ちつつある米国経済を活性化させるだろうが、自国産業を守るための関税は、場合によっては日本の企業業績や経済にも影響を与えかねず、さらには世界経済の停滞につながる可能性もある。「米国第一主義」を掲げる新政権の始動を、日本の政府や産業界は緊張感を抱いて見守ることになる。
少数与党が政権を運営する国内では、7月に実施される参院選と東京都議選が注目されるが、脆弱な政権基盤は既に織り込み済で、市場に大きな波乱を招く可能性は小さいだろう。また、2024年から利上げモードに入った日銀の金融政策にも関心が集まるが、デフレ脱却を優先しながら、緩やかな利上げで金融政策の正常化を進めるというスタンスで、市場との対話を重んじながら政策を決定していくと思われる。
2年目を迎える新NISAだが、配当などに着目した長期資金の着実な流入増が期待できそうだ。日経平均が4万円を超える未踏の領域で下値を固められるか否かは、新規資金の動向も大きなポイントとなる。特に、年明け以降の新NISA経由の投資動向に注目しておきたい。
(有沢正一)