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2026年5月11日
ファンドマネージャー 石原 順
3年以上にわたり株式を売り越しているバークシャー、手元キャッシュは4000億ドル弱
米ネブラスカ州オマハで2日、ウォーレン・バフェットがCEOを退任してから初となるバークシャー・ハサウェイ(BRKB)の年次株主総会が開催された。後継のグレッグ・アベルが初めて主導したこのイベントはバークシャーの次世代への転換を改めて知らしめるものとなると同時に、バフェットのレガシーを継承しつつも、より組織的で透明性の高い現代的なコングロマリットへと進化していくバークシャーの姿を印象づけるものとなった。
今年1月、アベルは初めて執筆した「株主への手紙」で、バークシャーの莫大なキャッシュの山を「投資待機資金」と表現し、「金融市場に嵐が吹き荒れて他者が恐怖に駆られる時でも揺るぎなく投資できる」、事業投資や株式投資を通じて「米国債の保有よりも生産的な事業の所有を常に目指している」として投資機会を常に模索していると述べた。
アベルはバフェットが築き上げた「要塞のようなバランスシートを維持し、バークシャー社の基盤が決して損なわれないようにする」と述べるとともに、バークシャーの現金について「ドライパウダー(手元資金)」と呼び、「バークシャーの回復力を損なうことなく、資本を配分する機会は間違いなく増えるだろう。私の役割は流動性水準と資本配分が意図的かつ計画的であり続けるようにすることだ」と記した。
●バークシャー・ハサウェイの現金残高が過去最高を更新
出所:各種データより筆者作成
3月末時点のバークシャーの手元キャッシュ残高(現金同等物に米財務省短期証券の保有額を合わせた広義の手元資金)は過去最高の3973億ドルに達した。株価高騰によりバークシャーにとって魅力的と考えられる投資先(大規模な買収機会)が限定される中、1-3月期は約81億ドルの株式を売り越した。売り越しは14四半期連続、すなわち3.5年に及ぶ。
●バークシャーは14四半期連続で株式を売り越した
出所:決算資料より筆者作成
世界金融危機時の2008年から2009年にかけて、バフェットは、ダウ・ケミカル(DOW)、ゴールドマン・サックス(GS)、ゼネラル・エレクトリック(GE)など5社に210億ドル以上を投じた。当時、バークシャー・ハサウェイは、巨額の資金を投資する意思と能力を持つ数少ない企業の一つだった。
3月に米CNBCに出演したバフェットは、次に大きな市場の下落があった場合「(株式市場に)すぐに投資する」と明らかにした。また、人々が市場の動向を知っていると思っていること自体が全くもって信じられないと語るとともに、「何が起こるか分からない。だからこそ、何があっても備えておきたい。だから、常に現金と短期債を保有している」と語った。
多くのものの価格は非常に馬鹿げているように見える
バフェットはドットコムバブルの期間においてもテクノロジー株への投資を避けたことで知られている。それは彼がインターネットを信じていなかったからではなく、「勝者を事前に見極めることはできない」と分かっていたからだ。正確な水晶玉を持っている者はいない。そして事前に両者を区別できると主張する者は、自らの予測能力を著しく過大評価しているに過ぎない。
AIバブルを支える循環的な資金調達、AI企業の評価額を正当化するために必要とされる途方もない収益、そしてサム・アルトマンが公然とAI企業について「大きすぎて潰せない」と発言していることなど、バブル的な要素が確認できる。その一方で、現在のAI技術の進化もまた現実である。
そこで浮かび上がる疑問はAIが真に変革をもたらす技術ではあるものの、現時点で過大に評価されているとするならば、投資家はどのようにそれに対応すべきなのか。20年以上前のドットコムの時代、アマゾン(AMZN)、アップル(AAPL)、マイクロソフト(MSFT)など、暴落を生き延びやがて巨大企業へと成長した企業がある。投資家は本能的に勝者を選ぼうとする。
しかし問題がある。勝者を見極めるのは後から振り返ればいとも簡単だ。しかし、バブルの最中にリアルタイムでそれを実行するのはほぼ不可能である。生き残ったアマゾンのような企業がある一方で、無価値になった企業は無数にある。そして渦中においてはそれらを見分けるのはほぼ不可能だった。
●バークシャー・ハサウェイB株(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●バークシャー・ハサウェイB株(週足)
●バークシャー・ハサウェイB株(月足)
AI(人工知能)関連株を中心としたハイテク株が市場の上昇をけん引する中、バークシャーの株価は低迷している。バークシャーが保有する上場株ポートフォリオはアメリカン・エキスプレス(AXP)やバンク・オブ・アメリカ(BAC)、コカ・コーラ(KO)など、より保守的かつ伝統的な事業に偏っているため、直近のリスクオンによる相場上昇から取り残されている。
●バークシャーが保有する上場株式上位10銘柄
一方、バークシャー株を取得すれば、最高水準の資本配分を持つ究極のアクティブ・ファンドを間接的に手に入れることができる。市場を取り巻く環境が非常に不確実な状況にある中、過大に評価されたジャンク銘柄を大量に保有するパッシブファンドよりも賢明な選択かもしれない。なにより約4%の利息を稼ぐ巨額の現金を保有している。その現金の山は景気が悪化した場合、資産を有利な価格で購入できる源泉だ。
バークシャー・ハサウェイは世界で最も現金を保有している企業である。ビジュアル・キャピタリストの2月20日の記事「Ranked: The Companies Holding the Most Cash in the World(ランキング:世界で最も現金を保有している企業)」によると、その額はマイクロソフト(MSFT)、アルファベッ(GOOGL)、アマゾン(AMZN)の合計額を上回るという。バークシャーの現金保有は規制上のものではなく戦略的なものである。歴史的に見ると、経済または市場が混乱し、資産価格が平均回帰し、そこで大胆に資本を投入するタイミングと一致している。それまでの間、バフェットは静かに資金を蓄積している。
●世界で最も多くの現金を保有する企業ランキング
出所:ビジュアル・キャピタリスト
日本のゴールデンウイーク中に米CNBCに出演したバフェットは、「私は市場を、カジノが併設された教会に例えてきた。人々は教会とカジノの間を行き来できる。カジノは人々にとって非常に魅力的な場所になっている。もし1日限りのオプションを買っているなら、それは投資でも投機でもない。ギャンブルだ。これほど多くの人がギャンブル気分になっていることはかつてなかった。多くのものの価格は非常に馬鹿げているように見える」と述べた。私たちは1999年よりもひどいバブルの中にいる。
「自分と意見が合う人を探してはいけない。自分が何を話しているのかさえ理解してくれる人を探してはいけない。自分で考えなければならない。群衆から距離を置く能力こそが、あなたに必要な資質なのだ」
(ウォーレン・バフェット)
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ブログ『石原順の日々の泡』
https://ishiharajun.wordpress.com/
を参照されたい。
石原順 プロフィール1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のディーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。