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2026年4月20日
ファンドマネージャー 石原 順
なぜ、バークシャーは依然として巨額のキャッシュポジションを維持しているのか?
先週、日米ともに株式市場が上昇し、米国がイランを攻撃する直前の2月27日の水準を回復した。日経平均株価は16日に5万9000円台に乗せた一方、17日の米株式市場でダウ工業株30種平均が前日比2%高、幅広い主力株で構成するS&P500種株価指数は1%、ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は2%上げ、いずれも3日連続で最高値を付けた。特にナスダック総合指数は13日連続上昇と、1992年1月以来およそ34年ぶりの記録となった。
日本経済新聞の4月18日の記事「ナスダック13連騰、NYダウも紛争前水準 「モンスター級買い戻し」は、イランが原油輸送の要衝ホルムズ海峡の開放を表明し、投資家のリスク選好が強まったとしている。ただ、足元の相場の上げは急ピッチだとした上で、業績不安の後退などでは説明しきれない歴史的な上げで、株式需給的な要因が色濃く出ていると指摘した。
4月16日のビジネスインサイダーの記事「Why Warren Buffett's cash pile and Michael Burry's AI doubts make sense in this market(ウォーレン・バフェットの巨額の現金保有とマイケル・バリーのAIに対する懐疑論が、この市場において理にかなっている理由)」は、「経済の混乱を考えるとバフェットが依然として多額の現金を保有しているのは正しい判断だ」とするウェドブッシュ証券のチーフ投資ストラテジストのコメントを取り上げた。
2月28日に米投資会社バークシャー(BRKB)が発表した2025年12月末時点の手元キャッシュ(現金同等物に米財務省短期証券の保有額を合わせた広義の手元資金)残高は約3733億ドルと、一年前に比べて12%増えた。2025年10〜12月期は上場株の売却額が取得額を上回り、31億6400万ドルの売越しだった。売り越しは13四半期連続だ。自社株買いも行わなかったため、結果として高水準のキャッシュが積み上がっている。
●バフェットの現金残高とNYダウの推移
出所:各種データより筆者作成
●バークシャーの手元キャッシュの内訳
出所:決算資料より筆者作成
●バークシャー・ハサウェイB株(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●バークシャー・ハサウェイB株(週足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
●バークシャー・ハサウェイB株(月足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
世界金融危機時の2008年から2009年にかけて、バフェットは、ダウ・ケミカル(DOW)、ゴールドマン・サックス(GS)、ゼネラル・エレクトリック(GE)など5社に210億ドル以上を投じた。当時、バークシャー・ハサウェイは、巨額の資金を投資する意思と能力を持つ数少ない企業の一つだった。
バークシャーのCEO(最高経営責任者)を昨年末に退任したバフェットは3月31日、米CNBCの番組に出演し、次に大きな市場の下落があった場合、「(株式市場に)すぐに投資する」と明らかにした。そして投資するのは、株式や事業が魅力的で、来週や来月に売却する予定がないからだと付け加えた。
一方で、中東情勢の悪化を受けて調整した米国株式市場については、自身がバークシャーのCEOに就任してから(株価が)50%を超えて下落したことは3回あったとし、今回は大した相場ではなく、決して興奮させられるものではないと語り、過去と比較してまだ大きな買い場にはなっていないとの認識を示した。
また、バフェットは人々が市場の動向を知っていると思っていること自体が全くもって信じられないと語るとともに、「何が起こるか分からない。だからこそ、何があっても備えておきたい。だから、常に現金と短期債を保有している」と語った。
今年1月、バフェットからバークシャーのCEOを引き継いだグレッグ・アベルは、執筆した株主への手紙の中で、バークシャーの莫大なキャッシュの山を「投資待機資金」と表現し、「金融市場に嵐が吹き荒れて他者が恐怖に駆られる時でも揺るぎなく投資できる」、事業投資や株式投資を通じて「米国債の保有よりも生産的な事業の所有を常に目指している」として投資機会を常に模索していると述べている。
アベルは、バフェットが築き上げた「要塞のようなバランスシートを維持し、バークシャー社の基盤が決して損なわれないようにする」と述べるとともに、バークシャーの現金について「ドライパウダー(手元資金)」と呼び、「バークシャーの回復力を損なうことなく、資本を配分する機会は間違いなく増えるだろう。私の役割は流動性水準と資本配分が意図的かつ計画的であり続けるようにすることだ」と記した。
「流動性が豊富にあると、私たちは安心して眠ることができます。経済に時折起こる金融混乱の際には、他社が生き残りをかけて奮闘する中、私たちは経済的にも精神的にも攻撃的な姿勢をとることができるのです」
(ウォーレン・バフェット)
「原油高による利益拡大」と「地政学的リスクによる供給不安定化」に直面する米石油大手
前述のインタビューで、バークシャーが保有している2つの石油関連銘柄、シェブロン(CVX)とオクシデンタル(OXY)について聞かれたバフェットは、「(2社の株価は)大きく上昇するだろう。しかし、だからといって、次に何が起こるかを予測できるわけではない。明日、あちらで何が起こるかは私には分からない」と述べた。
バークシャーは2025年10-12月期において、シェブロンの保有株数を約800万株積み増した。シェブロンはバークシャーが保有する上場株式のうち、アップル(AAPL)、アメックス(AMEX)、バンク・オブ・アメリカ(BAC)、コカコーラ(KO)に次ぐ5位の銘柄で、上場株式全体の7%を占めている。
●バークシャー・ハザウェイの2025年12月末時点の保有銘柄上位10社
●シェブロン(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
シェブロン(CVX)が1月30日に発表した2025年第4四半期(2025年12月末)の決算は減収減益だったものの、売上高、利益ともに市場予想を上回った。シェブロンは第4四半期に1日あたり405万バレルの原油を生産した。これは2024年第4四半期の335万バレルと比べて約21%増で過去最高だった。
マイク・ワースCEOは決算発表で、「2025年は同社にとって大きな成果を上げた年だった」と述べた。また、ワース氏は電話会議で、シェブロンは「今後18~24カ月で生産量を最大50%増やす可能性がある」とし、「当社の資産と米国には大きな可能性がある」と付け加えた。
●シェブロンの売上高と純利益の推移
シェブロンは今月、ベネズエラと資産交換で合意した。政治・経済の混乱が続く中でも数十年間にわたりベネズエラにとどまってきたシェブロンは、この取引により現地での石油事業を大幅に拡大する。13日に発表した資料によると、この合意によりシェブロンはベネズエラのオリノコベルトにある巨大油田の持ち分を49%に引き上げるほか、別の区域の開発権も取得する。その代わりに、シェブロンはベネズエラ西部の油田プロジェクトと沖合の天然ガス開発2鉱区の持ち分を国営石油会社ベネズエラ石油に譲渡する。
4月14日のブルームバーグの記事「シェブロン、ベネズエラと資産交換で合意-巨大油田持ち分引き上げへ」によると、シェブロンのベネズエラ進出は100年以上前にさかのぼると言う。一方、米同業のエクソンモービル(XOM)やコノコフィリップス(COP)が資産接収を受けて撤退を余儀なくされた。8年前に制裁が導入されて以降も、シェブロンは米財務省の免除措置を受け、掘削を継続してきた。シェブロンは現在、ベネズエラで4つの事業を保有している。オリノコベルトに2件、スリア州に2件で、これらは日量約100万バレルとされる同国の原油生産の25%近くを占めているとのことだ。
原油価格が長期低迷していた時から、バフェットはエネルギー株への投資を積み増してきた。中東情勢の緊迫化はシェブロンなどの米石油メジャーにとって、「短期的には原油高による利益拡大」と「中長期的には地政学的リスクによる供給不安定化」という両面の影響を与える。原油先物価格は衝突激化やホルムズ海峡の封鎖等のニュースに翻弄されているが、シェブロンの株価は上昇傾向にある。
●シェブロン(月足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
メガトレンドフォローVer2.0の売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
●日経平均CFD(日足)
●NYダウCFD(日足)
●S&P500CFD(日足)
●ナスダック100CFD(日足)
●ドル/円(日足)
●ゴールドCFD(日足)
●NY原油CFD(日足)
日々の相場動向については、
ブログ『石原順の日々の泡』
を参照されたい。
石原順 プロフィール1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のディーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。