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2026年3月16日
ファンドマネージャー 石原 順
グレッグ・アベルCEOが自社株買いを実施、バフェット体制からの方針転換
米投資会社バークシャー・ハサウェイ(BRKB)のグレッグ・アベルCEO(最高経営責任者)は、約2年ぶりの自社株買いを実施する方針を明らかにした。1月にバフェットからCEOを引き継いだアベルは規制当局へ提出した書類で、自身も約1500万ドル相当のバークシャー株を購入したことを明らかにするとともに、CNBCのインタビューにおいて今後も毎年自社株を購入する計画であると述べた。
3月6日のウォールストリートジャーナルの記事「バークシャーのアベルCEO、自社株買い再開 自身も購入と公表」は、前CEOのウォーレン・バフェットが最近、自社株買いを控えるとしていた判断からの方針転換となると指摘している。バークシャーは2025年に自社株買いを実施しなかった一方で、バークシャーの巨額の手元資金は投資家から注目されていたと報じている。
●バークシャー・ハサウェイB株(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
●バークシャー・ハサウェイB株(週足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
バークシャーが2月28日に発表した2025年12月末時点の手元キャッシュ(現金同等物に米財務省短期証券の保有額を合わせた広義の手元資金)残高は3731億ドルと、一年前に比べて12%増えた。2025年10〜12月期は上場株の売却額が取得額を上回り、31億6400万ドルの売越しだった。売り越しは13四半期連続だ。自社株買いも行わなかったため、結果として高水準のキャッシュが積み上がった。
●バフェットの現金残高とNYダウの推移
出所:各種データより筆者作成
2月28日の日本経済新聞の記事「バークシャー、新CEOが初の「株主への手紙」 バフェット流継承宣言」は、今年1月にCEO(最高経営責任者)に就いたグレッグ・アベルが初めて執筆した「株主への手紙」を取り上げている。
手紙の中でアベルは、キャッシュの山を「投資待機資金」と表現して「金融市場に嵐が吹き荒れて他者が恐怖に駆られる時でも揺るぎなく投資できる」、事業投資や株式投資を通じて「米国債の保有よりも生産的な事業の所有を常に目指している」として投資機会を常に模索していることを報じた。
●バークシャーの手元キャッシュの内訳
出所:決算資料より筆者作成
アベルは株主への手紙の中で、バフェットが築き上げた「要塞のようなバランスシートを維持し、バークシャー社の基盤が決して損なわれないようにする」と述べるとともに、バークシャーの現金について「ドライパウダー(手元資金)」と呼び、「バークシャーの回復力を損なうことなく、資本を配分する機会は間違いなく増えるだろう。私の役割は流動性水準と資本配分が意図的かつ計画的であり続けるようにすることだ」と記した。
バークシャーが保有する多額の現金について、投資撤退の兆候だと指摘されてきたことについては「事実ではない」とし、「当社は引き続き多くの投資機会を評価し、株主の利益のために適切な投資機会を追求するために、忍耐強く規律ある姿勢を維持していく」との立ち位置を明らかにした。
シェブロンの保有株を積み増し、2025年12月末時点のバークシャーのフォーム13F
米国で総額1億ドル以上を運用する大手機関投資家は、四半期ごとにSECに対し「フォーム13F」と呼ばれる報告書を提出し、保有銘柄を開示することが義務付けられている。これは米国市場に上場する銘柄が対象であるため、バークシャーが保有する日本の総合商社株などは対象外であり、その投資家のポートフォリオ全体を表すものではない。
●バークシャー・ハザウェイの2025年12月末時点の保有銘柄と9月末時点の保有銘柄
出所:フォーム13Fより筆者作成
2025年10-12月期にリバティ・ライブ・ホールディングス(LLYVK)とニューヨーク・タイムズ(NYT)の2銘柄を新たに追加した。バークシャーが保有するニューヨーク・タイムズの評価額は昨年12月末時点で、約3億5200万ドル(約506万株)だった。全売却した銘柄はなかったため、保有株数は前四半期に比べて2銘柄増加の39銘柄で、大幅な銘柄の入れ替えはなかった。一方で継続的に保有しているものの、持ち高が増減した銘柄はいくつかある。チャブ(CB)やプール(POOL)、シェブロン(CVX)などの保有株数は増加した。シェブロンについては保有株数を約800万株積み増した。同じエネルギーセクターでもオクシデンタル(OXY)に関しては株数に変動はなかった。ただし期間中にオクシデンタルの株価が低迷したこともあり、評価額では7位に後退した。
●シェブロン(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
アップル(AAPL)とバンク・オブ・アメリカ(BAC)の保有株数はそれぞれ約4%と約9%削減した。またアマゾン(AMZN)株に関しては、保有株数の77%相当を売却し、所有株の評価額は9月末の22億ドルから、12月末時点で5億2500万ドルへと急減した。
●バンク・オブ・アメリカ(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
第3四半期に取得が明らかになったグーグルを傘下に持つアルファベット(GOOGL)株には手を付けなかったものの、期間中に株価が上昇したこともあり、保有評価額は約43億ドルから約56億ドルに膨らんだ。
●アルファベット(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
●バークシャー・ハザウェイの2025年12月末時点の保有銘柄上位10社
●バークシャー・ハザウェイの2025年9月末時点の保有銘柄上位10社
本格的にアベル体制がスタートした。アベル氏がバフェット氏よりもより積極的に資本投下を行う可能性も想定される。3700億ドルを超える巨額の手元資金をどのように運用するのか。AI時代を見据え、鉄道事業やエネルギー部門での経験はどのように活かされるのか。その舵取りが注目される。
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日々の相場動向については、
ブログ『石原順の日々の泡』
を参照されたい。
石原順 プロフィール
1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のディーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。