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2026年2月 9日
ファンドマネージャー 石原 順
クラウドビッグ3の決算、グーグルのクラウド事業の売上高は前年比48%増
米大手ハイテク企業の2025年10-12月期決算が出そろった。そのうち、クラウド事業を手がける3社、アマゾン(AMZN)、グーグルを傘下に持つアルファベット(GOOGL)、マイクロソフト(MSFT)の決算を取り上げる。いずれも前年同期比で増収増益となり、アルファベットを除いて、四半期ベースでの最高益を更新した。
アマゾンの2025年10-12月の売上高は2133億8600万ドル(前年同期比14%増)、純利益は211億9200万ドル(前年同期比6%増)だった。売上高は四半期として初めて大台の2000億ドルを突破し、過去最高を更新した。主力のネット通販事業に加え、AI(人口知能)の需要を取り込んだクラウド事業が好調だった。
●アマゾンの売上高と純利益の推移 出所:決算資料より筆者作成
●アマゾン(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
アルファベットの売上高は1138億2800万ドル(前年同期比18%増)、純利益は344億5500万ドル(前年同期比30%増)と、10四半期連続の2桁増収、11四半期連続の増収増益を達成した。グーグルクラウド事業の売上高は177億ドルで前年同期比48%増、アナリスト予想の約35%を上回る伸び率だった。
●グーグルの売上高と純利益の推移出所:決算資料より筆者作成
●グーグル(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
マイクロソフトは6月末が期末となるため、2025年10-12月期決算は2026年会計年度の第2四半期となる。売上高は812億7300万ドル(前年同期比17%増)、純利益は384億5800万ドル(前年同期比60%増)で、売上高、純利益ともに市場予想を上回った。27%出資する米オープンAIからの持ち分法投資利益が増えたことから、増益率が高まった。
●マイクロソフトの売上高と純利益の推移出所:決算資料より筆者作成
●マイクロソフト(日足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
以下は3社のクラウド事業の売上高成長率を示したものである。マイクロソフトのクラウド事業は前年同期比39%増、アマゾンのAWSは24%増だった。一方、グーグルクラウドの売上高は176億6,400万ドルと(前年同期比48%)と一年前に比べて5割近く伸びた。
企業による生成AIプラットフォームや自社開発チップを含むAIインフラへの投資、利用が急増している。先月には、アップル(AAPL)が次世代AIモデルにグーグルのAIモデル「ジェミニ」を基盤として採用すると発表した。グーグルのサンダー・ピチャイCEO(最高経営責任者)によると、ジェミニアプリの月間利用者は7億5000万人を超えたという。
●クラウドビッグ3のクラウド事業の売上高の伸び率の推移 出所:決算資料より筆者作成
米国クラウド専門調査会社Synergy Research Groupが去年11月19日に公表したデータによると、クラウド利用のブームにより、世界のクラウド市場の規模は8四半期前の680億ドルから第3四半期には1070億ドルに増加した。シェアは、アマゾン、マイクロソフト、グーグルの3社で全体の63%を占めている。この3社が占める市場シェアは緩やかに上昇を続けている。
●世界のクラウド市場の規模出所:statista
桁外れの投資計画を後押しするOBBBA法案の償却制度
半導体集積回路(半導体チップ)が発明されたのは1958年頃のこと。それから60年余り、半導体チップは約2年で性能が2倍になるという「ムーアの法則」と共に進化を遂げてきた。当時開発されたチップには約60個のトランジスタしか搭載されていなかったが、微細化、小型化が進み、現在のチップは数十億個のトランジスタをエッチングすることができるようになった。いま、私たちがスマートフォンという小型コンピューターをポケットに入れて持ち運べるようになったのは半導体の性能進化が背景にある。
世界は現在、3度目となるAIブームに湧いている。AI技術は1950年代に1つの分野として確立されて以来、流行と衰退の波を繰り返してきた。過去2回のブームの時はコンピューターがソフトウェアを動かすのに十分な性能を持っていなかったが、今では大量のデータと非常に強力なコンピューターによって、A I技術を実現することができるようになった。
アマゾンのアンディ・ジャシーCEOは決算発表の電話会見において、クラウド事業のAWSに関して「需要は強く、(新たな設備を)設置し次第、収益化している」と述べ、投資が収益に結び付いていると強調した。2026年に投じる設備投資額は約2000億ドル、日本円で30兆円を超える計画だ。アルファベットは2026年の投資額を前期比2倍程度の1750-1850億ドル(日本円で約27-29兆円)に増やす方針だ。
こうした桁外れの投資が公表されると、各社の株価は一時、急落する場面もあった。計画している巨額投資に見合うだけの収益を得られるのかという市場の懸念を写し出した形だ。メモリ等を含むAI投資に必要な部材の需給を考えると、全て計画通りに進むかどうかは別として、少なくとも資金を潤沢にもっている米ハイテク大手にとって、これらの投資は理にかなっている。
背景にあるのはトランプ政権で可決された「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法(OBBBA)」だ。OBBBAの主な狙いの一つは米国において有形生産のための国内投資を促進することである。この税制変更は、米国に設備投資を行う多くの企業の税負担を軽減することが期待される。
設備投資などの対象資産について、投資後すぐに一定割合を即時償却できる「ボーナス減価償却」制度が恒久化することが明記された。2025年1月19日以降に取得、サービスインした対象となる資産について100%即時償却が可能だ。この改正により、企業の設備投資、減価償却戦略には大きな自由度とインセンティブが生まれた。
ワシントンD.C.に拠点を置く研究シンクタンク「Tax Foundation」が昨年公開したレポート「One Big Beautiful Bill Act's Corporate Tax Changes Benefit US Manufacturing the Most(「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法案の法人税改正によって最も利益を受けるのは米国製造業」)によると、2025年から2035年の予算期間において、製造業、情報産業、金融・保険・経営管理セクターの税負担が名目ベースで最も大きく軽減される見込みだ。10年間における税負担軽減額9472億ドルのうち、4226億ドルは製造業、1360億ドルは情報産業の企業に還元されると試算されている。
●OBBBAによる法人税改正によって最大の恩恵を受けるのは製造業と情報産業(2025年から2035年) 出所:Tax Foundationのデータより筆者作成
2月6日のポリティコの記事「Amazon's tax bill plunges after GOP tax cuts(共和党の減税によりアマゾンの税額が大幅に減額された)」によると、アマゾンが昨年計上した納税額は12億ドルで、前年の90億ドルから大幅に減少した。利益は45%増加して900億ドル近くに上ったにも関わらず、である。これは主に、OBBBA法案に盛り込まれた減価償却減税措置によるものだと報じている。
OBBBA法案で米国の製造拠点や設備投資に対する税制優遇が恒久化されたことで、米国における生産体制の経済合理性は格段に高まった。100%即時償却の適用によるキャッシュフロー改善効果は莫大であり、ハイテク企業が莫大な設備投資計画を明らかにしたことを理由づけるものである。
一方で税制によって過剰な投資が先行する可能性もある。AI市場が期待通りのペースで拡大しなければ、OBBBAの恩恵を最大化しても、投資過多が重荷に転じるリスクは避けられない。大胆な税制の改正が市場を歪めているかもしれないという現状も念頭に入れておきたい。
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●日経平均CFD(日足) 出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
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