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2025年12月26日
投資情報センター 堀内 敏一
2025年の外為市場は、各国通貨が抱える悪材料が綱を引きあう「不人気投票」が激しさを増す展開を辿った。年前半は、中央銀行の独立性や国際協調を軽視するトランプ大統領の姿勢が悪目立ちしたドルが主要通貨に対して軒並み弱含んだ。米政権の関税引き上げや移民政策の厳格化などを受けて「米国独り勝ち」の構図が崩れ、ドルの余剰感が意識されたうえ、投機筋が挙ってドル売りポジションを積み上げたこともドル安進行を後押し。受け皿の一翼を担った円は4月22日に1ドル=139.89円と2024年9月以来の高値を付けた。一方、投機筋の円買い・ドル売りポジションが既往最高の水準に積み上がったことが話題となったタイミングで、円の上昇には急ブレーキが掛かった。物価上昇を加味した日本の実質金利の低さや国内政局の混迷など、日本の弱材料に市場の関心が向きやすくなったためで、その後は投機筋のポジション調整が円売りを加速させるケースも目に付いた。もっとも、米政権によるパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の解任騒動や為替需給に絡む国際収支の均衡、さらには日米両国の金融政策の方向性の違いなどを受けて、ドルに対しては比較的堅調な地合いを維持した。高市早苗氏が自民党総裁選で勝利した10月4日以降は、円独歩安の様相を強める格好となった。同氏の掲げる「サナエノミクス」が拡張的な財政政策と緩和的な金融政策の長期化を謳っており、通貨安をもたらすとの見方が広がったことが背景といえる。日本発の金融市場の混乱を懸念した米当局からは円安をけん制する発言も飛び出したが、財政悪化への不安から名目金利が上昇する下でも円売りは止まず、11月20日には1ドル=157.89円と年初に付けた安値(158.87円)に接近。12月に入るとFRBは3会合連続の利下げ、日銀は1月以来となる利上げに踏み切ったが、日本の実質金利の低さと高市政策への警戒が尾を引き、円の上値は重いものに留まった。2026年のドル円相場は、引き続き「不人気投票」の色彩が尾を引く展開となる公算が高いと判断している。高市政権が高い支持率の拠り所となっている可能性のある「積極財政」の看板を下ろすのは並大抵ではないうえ、実質金利の低さも折に触れて円の重荷となることから、「円は弱い通貨」との定評を覆すことは困難とみられる。一方、米国サイドをみると、トランプ大統領の支持率が一段と低下する懸念や、パウエル議長の後任を巡る動きなどが内部の意見対立が鮮明化しているFRBの信認を揺さぶりかねないリスクなど、ドルの売り材料も山積となっている。日米双方の悪材料が綱引きし、1ドル=150円台を中心に神経質な展開を辿ることとなろう。
出所:市場データより岩井コスモ証券作成