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「マーケットの最前線」

2021年11月29日

第272回「南アフリカの変異型オミクロン株で市場はインフォデミック相場に回帰するのか!?」石原順

石原順 石原順

  • 先週末のNYダウは905ドル安と今年最大の下げ幅を記録

    先週末、11月26日の米株式市場でNYダウは続落し、905ドル安と今年最大の下げ幅を記録した。南アフリカで新型コロナウイルスの新たな変異型(オミクロン株)が見つかったことをきっかけに、世界の株式市場は大幅な下落に見舞われた。

    感謝祭明けの流動性のない市場(休暇を取る市場参加者が多い)に新型コロナウイルスの新変異型への懸念という材料が持ち込まれたことで、市場は流動性パニックとなり利食いやストップロス注文を誘発した。

    加えて、今年の最強銘柄と呼ばれる「マイクロソフト」のCEOサティア・ナデラが11月22日と23日の2日間でマイクロソフト株のほぼ半分を売却したことが11月26日に開示されたことで、市場の不安が高まったようだ。

    ●マイクロソフトのサティア・ナデラは11月22日と23日に約838.6K株の普通株を売却
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    出所:ゼロヘッジ

    ●マイクロソフトのCEOサティア・ナデラの大規模な株売却は市場を驚かせた?
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    出所:ゼロヘッジ

    最初に新しい株について警鐘を鳴らし、南アフリカ政府のCovid-19アドバイザーであるプレトリアの医師は、オミクロンコロナウイルス変異体に関連する症状は今のところ軽度であると述べている。しかし、バイデン大統領の首席医療顧問を務める米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のファウチや世界保健機関(WHO)がオミクロン株の脅威を述べていることから、市場はふたたびインフォデミック相場となりそうな気配だ。

    大騒ぎになっているオミクロン株については今後の経過をみないとわからないことが多いが、短期金利の予想を示すフェデラル・ファンド金利先物は、先週末26日の相場で早期利上げ観測が一転して後退したことを示した。

    新型コロナウイルス騒動は社会問題化しているインフレ懸念を冷やす効果があり、中・長期的には量的金融緩和と親和性が高い。

    ●GDP(国内総生産)に対する米国の財政赤字の割合
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    出所:ゼロヘッジ

    ●FRBのバランスシートはGDPの42%の水準まで拡大
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    出所:ゼロヘッジ

    ●S&P500と主要中銀の資産の推移
    それは実行中のプログラムであり、軌道上を走るだけだ・・
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    出所:ゼロヘッジ

    すべての市場の下落は、FRB のバランスシートの縮小または一時停止と一致しているように見える。何百万人もの個人投資家の判断によって動かされているはずの市場が、毎月同じことを繰り返しているのは市場ではない。それは実行中のプログラムであり、軌道上を走るだけだ。今回のオミクロン株騒動も、インフレ懸念や早期の利上げ観測を打ち消したい米金融当局のプログラムを支えるものなのかもしれない。

    2018年のクリスマス暴落の再来となるのか?


    欧米では感謝祭を迎え、本格的なホリデーシーズンに突入した。例年では、ここから年末にかけてシーズナリー的には強く、クリスマスから年末にかけてはクリスマスラリーも期待される。果たして今年はどうなるのか。直近の市場の特徴としては、インフレ懸念の台頭、長期金利の上昇、ハイテク株の軟調、ドル高、原油価格の上昇などがあげられる。

    4年前の2018年のクリスマス、米国の株式市場が大幅に調整したクリスマス暴落を覚えているだろうか。株式市場の急落を受け、当時のムニューシン財務長官が滞在中のニューメキシコ州から大手銀行6行トップに異例の個別電話で流動性には問題がないことを確認した他、金融監督関連当局とリーマン・ショック時を連想させるような、流動性・健全性・清算機構の機能性を確認する「会議」を開催した

    発表された声明では、透明性を強化することを目的としたと説明したほか、各CEOは経済が良好で、流動性に問題はないと、確認したと強調した。ただ、市場は流動性に問題がない状況での財務省による異例な声明の発表や、休暇先からの財務長官の銀行CEOへの流動性に関する電話は、あまりに唐突だったため、市場や投資家が気づいていない何かがあるのではと、逆に警戒感を誘う結果となった。

    当時は一部米政府機関の閉鎖に加えて、トランプ大統領がパウエル議長の更迭を検討しているとの報道などもあった。トランプ大統領はツィートで、「米国経済の唯一の問題はFRB」「FRBは市場や、ドル高、国境を巡る民主党の政府機関閉鎖の影響を理解していない」と非難を繰り返した。また当時は原油価格が42ドル台まで下落しており、経済の先行きに対しての懸念も高まっていた。

    しかし、現在とは環境が異なる。パウエルFRB議長は解任どころか再任された。原油は高く、ドルも強く、当時とは環境は全く異なる。しかし、構えてしまうのは、株価が過去最高値水準にある中で、テーパリングが粛々と進められようとしている。変化の兆しは最も脆弱なところに現れる。それは、ハイテク株の調整、とりわけ「利益の出ていない」期待だけで上がってきたハイテク株が下落の速度を早めている。


    ●利益の出ていないハイテク株インデックス
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    出所:ゼロヘッジ


    ハイテク株投資の象徴的なアーク・イノベーションファンド(ARKK)も厳しい調整に直面している。S&P500が年初来で25%上昇しているのに対し、キャシー・ウッドのARKKは今年に入り約15%の調整に直面している。ウッドはこの下降局面において、顧客が資金の引き揚げに真っすぐ向かっているかもしれない状況を本当に懸念していると述べと同時に今が自身の戦略にとって最良の買い時の1つだと述べた。

    ●ARKイノベーションETFの価格推移
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    出所:ゼロヘッジ

    ブルームバーグの記事によると、ブルームバーグ・インテリジェンスが主催したウェビナーに登場したウッドは、「当社の顧客に対するわれわれの懸念は非常に大きい。彼らが底値で売ったり、逆に高値で買ったりしていると思うと私は本当に残念だ」とコメントした。「昨年の終わりから今年1月~2月にかけての高値圏で私は『調整を迎えるだろう。それに幾分備えておこう』と呼び掛けていた」とも付け加えた。はたして、今のARKKの調整は最良の買い場となるのか、あるいは調整の兆しなのだろうか?


    2022年には3回の利上げ予想:ゴールドマン

    先日公開されたFOMC議事録では、完全なスタグフレーションではないにしても、予想よりも速いペースでのインフレの上昇が示唆されただけでなく、過去数週間にわたって、数人のFOMCのメンバーがテーパリングのペースを加速する用意をするべきとの考えを示したことがわかった。

    ホリデーシーズンを前に米国のインフレが、エネルギーだけではなく食料品や日用品にも及びつつあることが伝えられている。そうした中、ゴールドマンサックスは、従来2023年半ばとしていた利上げ予想を2022年に1年前倒した。シナリオによると、「FOMCは2022年1月の会議においてテーパリングのペースを早め、3月のFOMC会議の数日前となる3月中旬に最後のテーパーを実行。このペースで進んだ場合、FOMCは早ければ3月に利上げを検討できるようになるが、ベストのシナリオとして6月に最初の利上げが行われるというものだ。

    ゼロヘッジの記事「Transitory Is Dead: Goldman Now Expects Fed To Double Pace Of Tapering In December, Hike Three Times In 2022(一時的は死んだ:ゴールドマンは現在、FRBが12月に2倍のペースでテーパリングを実施し、2022年に3回利上げをすると予想している)」から一部抜粋して彼らの見通しを紹介する。

    ゴールドマンは、3月のFOMC会合においてテーパリングによる経済への影響を評価し、利上げの議論をまもなく開始するとし、6月の利上げを前に5月の会合において利上げが間もなく行われることを示唆する可能性が高いと指摘した。ゴールドマンは現在、6月、9月、12月に合計3回(以前は7月と11月に2回)の利上げを予測しており、2023年からは年に2回の利上げになると見ている。

    ●テーパリングと利上げ予想(ゴールドマン)
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    出所:ゼロヘッジ

    景気刺激策や財政支出で偽りの盛り上がりを見せている米国経済がどこまで自律的な回復への道筋に入っていくことができるのか。景気刺激策を失った経済は自らの重みで崩壊する可能性も残している。インフレが加速する中、ゴールドマンの予測通りにテーパリングと利上げが進むような経済情勢にあるのか。対応が遅れれば遅れるほど市場との対話も複雑になっていくだろう。


    日経平均とNYダウの売買シグナル(赤=買い・黄=売り)

    ●日経平均CFD(日足)標準偏差ボラティリティトレードの売買シグナル
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    ●日経平均CFD(日足)メガトレンドフォロートレードの売買シグナル
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    ●NYダウCFD(日足)標準偏差ボラティリティトレードの売買シグナル
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    ●NYダウCFD(日足)メガトレンドフォロートレードの売買シグナル
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    日々の相場動向については、

    ブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com/

    を参照されたい。


    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファン ドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市 場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当 する現役ファンドマネージャーとして活躍中。