検索

ネット取引 岩井コスモ証券

MENU

マーケットレポート

プロの視点からわかりやすいレポートを提供します。

「マーケットの最前線」

2021年7月26日

第254回「米株式市場は秋にも非常に荒い展開になる!?」石原順

石原順 石原順

  • 高値を更新する中、ディフェンシブなローテーションへ入る米国株式市場

    米国の株式市場は短い調整を経て再び高値を更新する動きとなっている。NYダウは終値として初めて3万5000ドルを超えた。様々な報道によると、企業の決算発表が好調なことから景気回復期待の買いが入ったとの解説である。つい数日前までデルタ株の流行拡大によって景気回復が遅れるとの見通しから売られていたはずだったのだが・・。

    第2四半期の決算発表は確かにこれまでのところ好調と言えるだろう。米国企業の底力を改めて認識させられる。しかし、収益の伸びが株価に折り込まれていないとしたらどうだろう。モルガン・スタンレーによると、収益はサプライズで上向きになるが、その分、バリュエーションが下がり、収益のプラス修正のすべてではないにしても一部が相殺される可能性があるとの見方を示している。

    ゼロヘッジの記事「"Weakest We've Ever Witnessed": Morgan Stanley Warns Crashing Breadth Will Result In "Material Correction"(「私たちが今まで見た中で最も弱い」:モルガン・スタンレーが警告、値幅の崩壊が重大な修正を引き起こすと警告)」から一部を抜粋して紹介しよう。

    モルガン・スタンレーによると、これまでのところS&P500のフォワード収益は20%近く上昇している。しかしそれにもかかわらず、PERは5%しか低下していない。つまり、S&P500は現在、約15%かさ上げされた状態にある。モルガン・スタンレーは「このシナリオとフレームワークが正しければ、PERは今後数ヶ月の間に急激に低下し始め、S&P500は我々の年末目標である3900に近づくはずだ」と警告している。


    懸念されているのは収益とバリュエーションの関係だけではない。株式市場ではこの1ヶ月、これまでに目撃したことのないいくつかの弱さがあるという。具体的に見ていこう。

    まず一つ目。米国市場における高値を更新する銘柄数と安値を更新する銘柄数を比較してみると、直近では、52週目の最安値を更新する銘柄が最高値を更新する銘柄よりも多い。

    ●52週の安値を更新する銘柄が高値を更新する銘柄より増加している
    20210726①.png


    出所:ゼロヘッジ

    次に、50日移動平均線を上回って取引されている銘柄の割合が50%を下回ってきた。


    ●50日移動平均線を上回る銘柄の割合(水色)とS&P500(青)
    20210726②.png


    出所:ゼロヘッジ

    3つ目に、これが最も不吉なことであるが、景気敏感銘柄とディフェンシブ銘柄の比率を示した指数が200日の移動平均線を割り込んできたことだ。これまで200日移動平均線がサポートになっていたが、そのサポートを割ってきたことで、今後の相場次第ではこの200日移動平均線がレジスタンスになる可能性もある。市場は見かけの指数以上にディフェンシブなローテーションに入っているようだ。

    ●景気敏感株VSディフェンシブ株の指数が200日移動平均線を割り込む
    20210726③.png


    出所:ゼロヘッジ


    前回のレポートで取り上げたグッゲンハイム・インベストメントのスコット・マイナードの次のツイートを再掲する。

    「株式は下落し、クレジットのスプレッドは拡大、債券はラリーしていて、コモディティは軟調。消費者のセンチメントは2021年2月以来の水準まで低下している。マーケットの参加者が成長期待に対する自信を失っているように感じ始めている。ひょっとしたらリスクオフの夏への備えが必要なときに来ているかもしれない。」


    ビットコイン3万ドルはテスラの損益分岐点


    そのマイナード氏が21日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューに答え米株式市場について、秋にも非常に荒い展開になるとの予測を述べた。ブルームバーグの記事「米国株は15%以上下落も、秋に「非常に荒い」展開に-マイナード氏」によると、マイナード氏は、米国株式相場は「9月と10月は非常に荒い展開になりそうだ」とした上で、「15%かそれより若干大きい下落になるかもしれない。だが、ワールドシリーズの第1戦にロサンゼルス・ドジャースが出場した後に、買うことができると思う」と述べた。


    株式投資をする場合、基本的に10月から12月の押し目を拾って来年の4月までに手仕舞えば、運用リスクを減らすことができるという実感が筆者にはある。巷には多くの「パターン分析」、「サイクル論」、「アノマリー」などがあるが、「10月末買い・4月末売り」ほど、長期にわたり有効性を発揮している戦略を筆者は他に知らない。

    「10月末買い・4月末売り」という半年投資が相場に有効かどうかは様々な見方があるが、50年以上の母集団に対して「10月末から4月末までの半年間のパフォーマンス」が「4月末から10月末までの半年間のパフォーマンス」を上回っていれば有効である。過去のデータを見る限り、「10月末買い・4月末売り」というパターンの優位性は現在も継続している。

    ●S&P500シーズナリーチャート
    20210726④.png

    出所:エクイティクロック


    ●日経平均株価のシーズナリーチャート
    20210726⑤.png
    出所:エクイティクロック

    さらにマイナード氏は、仮想通貨について、今後数カ月は依然として厳しい状況になると予想。ビットコインは一段と下げて「1万5000ドル付近」に下落するとの見方を示した。「このようなものの多くはただのがらくただ」と指摘し、「まだ空気が抜け切れていないと思う。ビットコインの標準的な弱気相場は80%の戻しであり、不確実性や新しい仮想通貨との競争などを踏まえれば、一段と下げる余地はあると思う」と語った。

    ●ビットコイン/ドル(日足)
    20210726⑥.png

    ●ビットコイン/ドル(週足)
    20210726⑦.png


    一方、ビットコインの価格上昇を後押しする材料がテスラのイーロン・マスクCEOから飛び出してきた。マスク氏は、21日に開催された仮想通貨カンファレンスで、「再生可能エネルギーの使用率が50%かそれ以上である可能性が高いということや、この比率が上昇傾向にあることを確認するために、もう少しデューデリジェンスを行いたかった」と述べ、これらが確認できれば、テスラはビットコインの受け付けを再開するだろうと語った。

    テスラがビットコインでの支払いを受け付けると明らかにしたのは今年2月のことだった。同時にテスラはビットコインへ15億ドル投資をしていることも明らかにした。しかしその3ヶ月後には、マイニングにかかる電力消費量の問題を理由にビットコインの受け入れを取りやめると発表していた。その後、中国による規制強化の流れもあり、今年4月には6万3000ドル台まで上昇したビットコインは、5月に入り4万ドルを割り込み、直近では3万ドルを割り込む場面もあった。

    テスラは、ビットコインの価格変動によって業績に大きなマイナスの影響を受けること懸念されている。CNBCの記事「Tesla could lose $90 million as Bitcoin dives below $30,000(ビットコインが30,000ドルを下回ると、テスラは9000万ドルを失う可能性がある)」によると、テスラのバランスシートには約42,000のビットコインが計上されており、1コインあたりに換算すると評価額は3万1620ドルになるとのこと。3万ドルはテスラにとっての損益分岐点となる。3万ドルを割り込んだ局面での今回のマスク氏の発言はポジショントークと捉えられても致し方ないだろう。

    日経平均とNYダウの売買シグナル(赤=買い・黄=売り)

    ●日経平均CFD(日足)標準偏差ボラティリティトレードの売買シグナル
    20210726⑧.png

    ●日経平均CFD(日足)メガトレンドフォロートレードの売買シグナル
    20210726⑨.png

    ●NYダウCFD(日足)標準偏差ボラティリティトレードの売買シグナル
    20210726⑩.png

    ●NYダウCFD(日足)メガトレンドフォロートレードの売買シグナル
    20210726⑪.png

    日々の相場動向については、

    ブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com/

    を参照されたい。


    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファン ドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市 場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当 する現役ファンドマネージャーとして活躍中。