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「マーケットの最前線」

2017年5月15日

第75回「インデックス投資ブームという大量破壊兵器」石原順

石原順 石原順

  • 株式運用の答えは出ている?インデックスには勝てない︖

    株式運用の種類を大雑把に分けると次の5つになる。

    ① アクティブ運⽤

    インデックス(日経平均やTOPIXなど)に勝とうとする運⽤で、投信や年⾦など⼤きなファンドの運⽤で一般的なもの(割安株投信とか成⻑株投信といったもの)。但し、ファンドの半分以上はインデックスに連動するポートフォリオを組み、残りの部分でインデックスに勝とうとインデックスとは異なるポートフォリオを作るのが一般的。個別銘柄の選定や売買頻度が高いことなどから、コストが高い。

    ② パッシブ運⽤

    インデックス通りのパフォーマンス(利回り)でよいとする運⽤。インデックス投信やETF、株式先物の買い持ちなど。一旦インデックスに連動するようポートフォリオを組めば、後は若⼲の⼊れ替えがある程度なのでコストは安い。


    ③ ディーリング的運⽤

    株式の先物取引や、個別株では材料株などを短期間に売買して収益を上げようとするハイリスク・ハイリターン運⽤。テクニカル・アプローチが主流になるが、⾃分の投資スタイル(使⽤するテクニカル指標など)を確⽴することが必要。また、ストップロスの設定も重要になる。

    ④ ⾃分でポートフォリオを組む運⽤

    高配当利回り銘柄とか純資産倍率1倍以下の銘柄、或いはPER10倍以下の銘柄、といった⾃分独⾃の基準でポートフォリオを組む運⽤。組⼊れや⼊れ替えの基準が重要で、また⼗分なリスク分散を⾏う場合は比較的⼤きな資⾦が必要になる。

    ⑤ ファンドに投資する運⽤

    資⾦が少額だとかノウハウがないとかで、⾃分でポートフォリオを作るのが難しいために既存のファンド等に投資する形の運⽤。⼤⼿の運⽤会社でもノウハウや調査能⼒がないためにファンド・オブ・ファンズのような形で販売⽤のファンドを作っている。過去のパフォーマンスや運⽤者の評判などから投資するファンドを選ぶケースが多いが、これらは将来を保証するものでは決してないので、どうやってファンドを選ぶのか、その選定基準が最も重要


    チャールズ・エリスが『敗者のゲーム』という本で、「市場に勝とうとすることは無意味で、過去20年間で8割のファンドマネージャーがベンチマークに勝てなかった。投資家はこの平均株価という商品に投資すれば、市場平均に負けることはありません」と述べてから、どのくらいの時間が経っただろうか?

    サルにダーツを投げさせて当たった銘柄を保有する。プロの投資家に選んでもらった銘柄を保有する。チャールズ・エリスは、サルとプロの投資のパフォーマンスは同じだと述べている。

    近年、アクティブ投信の欠点が指摘されているが、それは以下のことに集約されるだろう。

    ●アクティブ運⽤の投信やファンドの3分の2はインデックス運⽤に負けている(これは日本だけのことではなく世界的な傾向で、時期によって多少の上下はあっても平均するとそうなる)

    ●投資顧問会社にアクティブ運⽤を委託する年⾦基⾦やアクティブ投信に投資する個人投資家などは「葱を背負った鴨」

    ●アクティブ投信が売れている最⼤の理由が運⽤⼿数料が高いから(こうした投信を販売する証券会社や銀⾏が⼿数料収⼊を増やしたいために、運⽤⼿数料が高い投信ほど熱⼼に販売する)

    ●株式投信の主流であるアクティブ投信は質の悪い、高コスト低パフォーマンスの投信が多い

    「欧米と比較すると、日本は手数料獲得のための金融商品販売が明らかに多い。私は顧客に満足を与えられる金融機関だけが生き残るべきだと思います」と金融庁長官が発言し、現在、日本の金融庁も資産運用の大改革に取り組んでいる。

    上記で述べたように、市場平均を保有する投資⼿法は「インデックス投資=パッシブ運⽤」と呼ばれている。ウォーレン・バフェットは高い手数料をとるヘッジファンドを批判し、「インデックス投資=パッシブ運⽤」が最も有効な投資⼿法であると発⾔している。また、世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーターのレイ・ダリオも米国株の90%をETFで運⽤している。


    インデックス投資ブームとその危険性

    筆者も株式投資は「インデックスに勝てない」と20年以上述べてきたが、インデックス投資の優位性が広まるにつれて、最近では猫も杓子もインデックス運用やインデックスETFに投資するというインデックス投資ブームが到来している。

    このインデックス投資ブームが促しているのがボラティリティの低下と市場の総楽観だ。恐怖指数と呼ばれるvolatility index= VIX指数は、シカゴ・オプション取引所(CBOE)が、S&P500を対象とするオプション取引のボラティリティを元に算出、公表している指数で、数値が高いほど投資家が相場の先行きに不透明感を持っているとされる。

    現在のVIX指数は終値ベースで1993年以来の水準まで低下している。相場は総楽観で、下げに対するヘッジ(準備)が全くない状態だ。報道では地政学的リスクの低下が後講釈の理由になっているようだが、運用者の間では、「VIX指数が上がらない(株が下がらない)のはインデックス投資ブームだからだ」という指摘が増えている。


    ●CBOE VIX指数(日足)
    ①VIX日足.png
    (出所:マーケットウォッチ)

    ●VIX指数1990年~2017年
    ②VIX 1990-.png
    (出所:セントルイス連銀)

    ●S&P500CFD(日足)
    上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ=赤のバンド
    下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
    ③SP500日足.png

    4月28日、ブルームバーグに興味深い報道が出ていた。『ETFは「大量破壊兵器」とFPAキャピタル-市場ゆがめ熾烈な売りも』という記事である。

    【上場投資信託(ETF)は株価をゆがめ、市場急落の可能性を生み出している大量破壊兵器だとFPAキャピタル・ファンドのマネジャーらが指摘した。運用資産7億8900万ドル(約877億円)のアクティブ型ファンドを運営するアリク・アヒトフ、デニス・ブライアン両氏は6日付の投資家宛てレターで、「ファンダメンタル調査の必要はなく、バリュエーションを顧みずにインデックスファンドやETFをやみくもに投資家が購入できると世間が判断している今こそ、恐ろしいと感じるべきだ。パッシブ運用商品へのおびただしい資金流入が、株価を一斉に同じ方向に動かし、基本的なファンダメンタルズから市場をますます乖離(かいり)させていると両氏は分析した。ブルームバーグのデータによれば、ETFには今年に入り1600億ドル余りの新規資金が流れ込んだ。ブライアン氏は電話取材に対し、パッシブ投資家が今ほど重要な存在となる状況の下で、株式市場が深刻な下落を経験したことはかつてないとの見方を示し、この新たな市場の構造が試される局面でわれわれは熾烈(しれつ)な売りに見舞われる可能性があると語った】(ETFs Are 'Weapons of Mass Destruction,' FPA Capital Managers Say 4月28日ブルームバーグ)

    こうした総楽観のインデックス運用への大量資金流入は危険な兆候で、「おそらく、年後半相場で反動の調整売りに見舞われるだろう」と観ている株式運用者は少なくない。

    インデックス投資に関しては、米著名投資家ラリー・ウィリアムズが「ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)」の5月15日号で鋭い指摘をおこなっている。以下のチャートを参照されたい。


    ●The Rise of the Benchmark
    ④The Rose Of the.png
    (出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)5月15日号 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店掲載許可をとって掲載)

    インデックスを上回るパフォーマンスを続ける株式ファンドの投資手法とは・・

    筆者は個別株の専門家ではないが、なぜか請われてある株式ファンドのアドバイザーを務めている。そのファンドは逆張り主体で、株の調整局面や暴落局面でしか株は買わない。昨年は新興国株の逆張りで大きな成果を上げたが、「昨今の米国株はPERやPSRをみても高すぎて買うものがない」と言っている。

    このファンドの個別株投資の銘柄選択のポイントは、「利益はアバウト、キャッシュフローはメインビジネスの確かさ」という観点で、"キャッシュフロー計算書"に基づいて選択され、毎年インデックス(ベンチマークのS&P500)を上回るパフォーマンスを上げている。

    以下は、インデックスを上回るパフォーマンスを続ける株式ファンドが抽出した<珠玉の銘柄群>のごく一部の銘柄だが、そのファンドは現在の相場環境(高くて買うものがない)で、筆者の<標準偏差ボラティリティトレード>の手法でスウィングトレードを行っている。これが好調だ。投資で稼ぐには、いくらか人と違ったことをしなくてはいけない。


    <個別株の標準偏差ボラティリティトレードの概要>

    ●パラメータ21のボリンジャーバンドを表示させる
    (株式インデックスは±0.6シグマ・通貨は±1シグマ)

    ●パラメータ26の標準偏差とパラメータ14のADXを表示させる

    ●トレンドの発生(保ち合い離れの判定方法)
    標準偏差とADXが一緒に上昇しはじめた時

    ●新規建玉のポイント
    エントリー(新規注文)は相場がボリンジャーバンド±1シグマ(株式インデックスは±0.6シグマ)の外に飛び出した時

    ●損失を限定しつつ利益を伸ばす手仕舞いのポイント
    手仕舞い(エグジット)は相場がボリンジャーバンド±1シグマ(株式インデックスは±0.6シグマ)の内側に入った時


    ●アドビシステムズ(日足)
    上段:14日ADX
    中段:26日標準偏差ボラティリティ
    下段:21日ボリンジャーバンド0.6シグマ
    ⑤アドビ日足.png
    (出所:ストックチャーツ)

    ●バイエル(日足)
    上段:14日ADX
    中段:26日標準偏差ボラティリティ
    下段:21日ボリンジャーバンド0.6シグマ
    ⑥バイエル日足.png
    (出所:ストックチャーツ)

    ●アルファベット(日足)
    上段:14日ADX
    中段:26日標準偏差ボラティリティ
    下段:21日ボリンジャーバンド0.6シグマ
    ⑦アルファベット日足.png
    (出所:ストックチャーツ)


    今週の予想レンジ

    ●日経平均 今週の予想レンジ 19500~20300円
    ⑧予想レンジ日経平均.png

    ●ドル/円 今週の予想レンジ 112.50円~115.00円
    ⑨予想レンジドル円.png

    ●ユーロ/ドル 今週の予想レンジ 1.0820~1.1000
    ⑩予想レンジユーロドル.png



    日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com

    を参照されたい。



    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。

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