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2022年8月 1日

第307回「2025年にはパブリッククラウドへの企業投資が、従来のITへの支出を追い越す!?」石原順

石原順 石原順

  • ハイテク企業の成長の伸びしろはパブリッククラウドにあり!?


    米大手ハイテク5社、アップル(AAPL)、アマゾン(AMZN)、メタ(META)、アルファベット(GOOGL)、マイクロソフト(MSFT)の2022年4~6月期の決算が出そろった。日本経済新聞の社説「変調の兆しの見える巨大IT企業の成長力」によると、この3ヶ月間における5社の売上高合計は一年前の同じ時期と比べて7%増にとどまり、2016年半ば以来の低成長となったという。


    わが世の春を謳歌してきたメガハイテク企業も、金利上昇という大きなビジネス環境の変化を受け、これまでの成長神話に黄色信号が点灯しているのか。とりわけSNS大手のメタは2012年の上場以来初の減収という厳しい決算となった。


    サプライチェーンの混乱に端を発したインフレや世界的な金利の引き上げ等、業界を取り巻く環境はこれまで通りのイケイケドンドンから変調してきているのは事実だろう。しかし、ハイテク企業の成長という点ではまだら模様ではありながらも伸びしろがある分野があると筆者は考える。その鍵となるのはパブリッククラウド事業である。


    パブリッククラウドはデジタル化の推進に大きく寄与する社会の重要インフラであり、クラウド事業の成長は他のIT事業の成長を大きく上回っている。調査会社のガートナーによると、アプリケーションソフトウェア、インフラソフトウェア、ビジネスプロセスサービス、システムインフラ市場のうち、クラウドに移行可能なカテゴリを対象とした調査で、2025年にはパブリッククラウドへの企業投資が、従来のITへの支出を追い越すとしている。


    ●2025年にはパブリッククラウドへの企業投資が、従来のITへの支出を追い越す!?
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    出所:ガートナーの資料より筆者作成




    ●企業によるクラウドへの投資は加速している
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    出所:ガートナーの資料より筆者作成




    コロナウィルスのパンデミックを経て、企業は新しいビジネスや社会の動きに対応することを迫られており、クラウドへのシフトは過去2年間で加速している。ガートナーは「クラウドシフトのペースに適応できないテクノロジープロバイダーやサービスプロバイダーは、時代遅れになるか、良くても低成長市場に追いやられるリスクが高まっている」と指摘している。


    クラウド事業を手がける企業の市場シェアを見るとAWSが圧倒的ではあるものの、マイクロソフト、グーグルと続いており、このビッグ3でクラウド市場の約6割を占めている。



    ●クラウドサービスを手がける企業の世界シェア(2021年第1四半期時点)
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    出所 Statistaのデータより筆者作成



    過去、企業は独自のサーバーを持っていることが多かったが、自社のサーバーを開発、維持するのには時間も資金もかかる上に、メンテナンスや管理も自社で行わなくてはならない。ところが、パブリッククラウドを利用すれば、必要な時に必要なだけ使うことが出来るため、自社でサーバーを設置するよりもIT投資を大幅に減らすことが出来る。つまり、高いセキュリティを保ちながら、低コストで、高性能かつ最新のシステムを利用することが出来るようになるのである。


    社会のデジタルインフラとして重要なパブリッククラウドを手がけるビッグ3、アルファベット、マイクロソフト、アマゾンの決算をみるとクラウド事業の重要性が浮かび上がってくる。





    クラウド事業は軒並み2桁の増益:クラウドビッグ3


    グーグルの持ち株会社であるアルファベットの4-6月期は増収減益となった。売上高は前年同期比12%増の696億8500万ドル、純利益は13%減の160億200万ドルだった。動画投稿サイト、ユーチューブのインターネット広告収入の伸びが経済・社会活動の再開や記録的なインフレの影響で鈍化した。


    ただし、GCP(グーグル・クラウド・プラットフォーム)の収益は63億ドルと前年同期比35%増となり、四半期ベースで初めて60億ドルを超えた。一方、アマゾンやマイクロソフトとの競争が激しい中、インフラ投資を積極的に行っているとみられ、営業損益は8億5800万ドルの赤字となった。赤字幅は一年前に比べて45%増加した。




    ●アルファベットの売上高と純利益
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    出所:決算資料より筆者作成





    ●アルファベット(日足)(赤↑:買いシグナル・黄↓:売りシグナル)
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    出所:パンローリングカスタムチャート




    クラウド事業について、アルファベットのピチャイCEOは決算説明会の中で、引き続き強力な勢いと大きな市場機会を見ていること、そしてそれはまだ変革の初期段階のように感じていると説明。「この先には大きなチャンスがあると言える」と述べた。


    次に、マイクロソフトの4-6月期(第4四半期)は増収増益だった。売上高は前年同期比12%増の518億6500万ドル、純利益は167億4000万ドルと市場予想(173億ドル)を下回ったものの、2%の増益を確保した。売上の約半分を米国以外の国が占めているため、ドル高による収益の押し下げがあり、増益率は小幅にとどまった。




    ●マイクロソフトの売上高と純利益
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    出所:決算資料より筆者作成




    ●マイクロソフト(日足)(赤↑:買いシグナル・黄↓:売りシグナル)
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    出所:パンローリングカスタムチャート




    一方、マイクロソフトが手がけるインテリジェントクラウド部門の収益は20%増の209億ドルだった。マイクロソフトの会長兼CEOであるサティア・ナデラ氏は、マイクロソフトほど企業がデジタル技術を活用し、より少ない労力でより多くのことを実現できるよう支援できる企業は他にないとした上で、ダイナミックな環境の中で、強い需要とシェアを獲得し、クラウドプラットフォームに対する顧客へのコミットメントを高めてきたと述べ、クラウド事業の強さを強調した。


    そして、アマゾン・ドット・コムだ。アマゾンが28日に発表した4-6月期の売上高は市場予想を上回った。売上高は前年同期比7%増の1212億3400万ドルで、最終損益は20億2800万ドルの赤字に転落、2四半期連続の赤字となった。新興EV(電気自動車)メーカーのリヴィアン・オートモーティブ(RIVN)への投資に関して39億ドルの税引前評価損を計上したことが響いた。




    ●アマゾンの売上高と純利益
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    出所:決算資料より筆者作成



    ●アマゾン(日足)(赤↑:買いシグナル・黄↓:売りシグナル)
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    出所:パンローリングカスタムチャート



    クラウド事業のAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の売上高は前年同期比33%増の197億ドルと、市場予想の195億ドルを上回った。営業利益は36%増の57億1500万ドルと引き続き好調だった。AWSの売上高はアマゾン全体の収益の16%に過ぎないが、圧倒的な利益を生み出している。



    ●アマゾンのセグメント別売上高と営業利益
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    出所:決算資料より筆者作成



    AWS
    そもそも自社のeコマースサービスを円滑に進めるために開発したものであった。AWS事業の立ち上げ当初、社内において「アマゾンからストレージを買うなんて人がいるのか」と不安の声が上がっていたそうだ。しかし、常に楽観的に、かつ自分たちのアイデアをなるべく早く顧客に出してみるという考えのもとにサービスをリリースした。当時、そのAWSを統括していたのが、現在のCEOであるアンジー・ジャシー氏だ。


    アマゾンは北米においてeコマースで支配的な地位を獲得したが、実際に高い収益を生み出しているのはAWSであり、それはアマゾンの原点でもある「ローコスト・ローマージン」の文化から生まれ育ってきた。アマゾンは今や世界的な規模のサーバーとコンピュータネットワークを抱え、スケールメリットを存分に発揮しクラウド市場において揺るぎない地位を築いている。
    日経平均とナスダック100の売買シグナル(赤=買い・黄=売り)



    日経平均CFD(日足)標準偏差ボラティリティトレードの売買シグナル
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    ●日経平均CFD(日足)メガトレンドフォロートレードの売買シグナル
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    ●ナスダック100CFD(日足)標準偏差ボラティリティトレードの売買シグナル
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    ●ナスダック100CFD(日足)メガトレンドフォロートレードの売買シグナル
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    日々の相場動向については、

    ブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com/

    を参照されたい。


    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のディーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファン ドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市 場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当 する現役ファンドマネージャーとして活躍中。








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