マーケットレポート

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「マーケットの最前線」

2022年5月 9日

第295回「自分はうまいなどと思ってはいけない。そう思った瞬間に破滅が待っている!」石原順

石原順 石原順

  • 資本主義を破壊させる最善の方法は、通貨を堕落させること


    制裁を受けて急落していたロシアルーブルが急速に戻し、対ドル、対ユーロでいずれも約2年ぶりの高値をつける動きとなっている。ロシアの主要な銀行がSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除されたことや、海外に持つロシア中銀の外貨準備を凍結される等、異例とも言える経済制裁を受け、ルーブルは一時対ドルで価値が半分程度にまで下落していた。

    ●ドル/ロシアルーブル
    20220509_①.png


    出所:Stooq


    ●ユーロ/ロシアルーブル
    20220509_②.png


    出所:Stooq

    ルーブルの急落を受けて、ロシア政府は相次ぎ通貨防衛策を打ち出した。まず、政策金利を一気に20%にまで引き上げた他、ロシアの輸出企業に対し外貨売却を義務付ける等の対応を行なった。さらに、外貨購入制限を実施、預金者は外貨建て預金からの引き出しやルーブルを外貨に両替することなどを制限されるに至った。


    これらの措置に加え、ルーブル回復の背景には貿易収支の改善も大きく寄与したと考えられる。ニューズウィークの記事「いまだ石油で1日10億ドルの戦費を稼ぐロシア-それでも「経済制裁は効かない」は間違いだ」によると、ロシアには天然ガスや石油からの収入が1日10億ドルあると言う。

    国際的な制裁によって欧米企業を中心にロシアでの販売を取りやめる動きが広がっており、ロシアの輸入は減少している。一方、エネルギーをロシアに依存している欧州各国は、すぐに購入を減らすことが出来ないため、ロシアからの石油や天然ガスなどエネルギーの輸出は継続している。

    つまり、ロシアにおいて輸出はそれほど減少していないのに対し輸入が減っており、経常収支の黒字がより大きくなることが想定される。これも一時的なルーブル高要因として効いている。

    ロシアは3月、欧米や日本など非友好国に対しては天然ガスの代金をルーブルで支払うよう要求した。これに各国は反発し、妥協案として示されたのが、SWIFTの規制対象外となっているガスプロムバンクでの決済だ。

    欧州各国がエネルギーの輸入代金をガスプロムバンクに外貨で振り込めば、ルーブルに両替して口座に入れる形をとると言う奇策に打って出た。欧州各国にとってみれば、従来同様、ユーロやドルで代金を支払うことが出来る。これによってルーブル買いが発生し、ルーブルを買い支える結果になっていると言う。

    日経新聞の記事「レーニンの予言 インフレが敗者を決める」にあるように、約100年前にロシア革命を指導したレーニンは「資本主義を破壊する最善の方法は、通貨を堕落させることだ」と語ったとされている。今回の制裁強化が既に水面化で進んでいたドル離れを加速させる可能性もある。欧米による経済制裁はロシアだけではなく、制裁を課した側、つまり欧米や日本にブーメランのように跳ね返ってくることもあるのかもしれない。

    シンプルに資産を保全することが自分達の出来る最も重要なことだ

    FOMC通過後の米国株式市場が波乱相場の様相を呈している。CNNビジネスの「Fear & Greed(恐怖と欲望)指数」は直近で31と先週からはわずかに数値を戻したものの、引き続き「EXTREME FEAR」に近い「FEAR」を示している。とりわけハイテク株の下落が著しい。ナスダック総合指数は年初から2割あまり下落している。

    ●恐怖と欲望指数(2022年5月7日時点)
    20220509_③.png


    出所:CNNビジネス

    ●ナスダック100先物(日足)
    20220509_④.png

    出所:パンローリングカスタムチャート

    「明らかに、債券と株式を保有したくない」、これはCNBCの番組に出演したヘッジファンドマネージャー、ポール・チューダー・ジョーンズの発言だ。

    ポール・チューダー・ジョーンズは、このような厳しい環境下では、事実上何でもいいから資本の保全を優先するよう投資家に警告した。「シンプルに資産を保全することが自分達の出来る最も重要なことだと思う。今は非常に困難な時代になった。実際にお金を稼ごうと努力する時期とは思えない」と述べた。

    彼はFRBの行動が米国経済を不況に陥れることを懸念している。FRBが金融引き締めを行い、通年で10回の利上げを行うと予想されている。「一方ではインフレ、他方では成長鈍化、これらは常に衝突することになる」とポール・チューダー・ジョーンズは指摘した。


    ●FRBにより金利引き上げのサイクルと過去の金融危機
    20220509_⑤.png


    出所:ゼロヘッジ


    ポール・チューダー・ジョーンズの運用の特徴は<徹底したリスク管理>にある。彼は、「私は失うことを前提に考える。獲得することに夢中になるのではなく保護することを第一に考える。最も重要なルールは攻撃ではなく防御である。どのリスクポイントで自分は撤退するのかを把握しておかなければならない。私は1カ月あたりの損失率を絶対2ケタにしない」と、発言している。

    「私は失うことを前提に考える。獲得することに夢中になるのではなく保護することを第一に考える。優秀なトレーダーほどリスクコントロールに多くの力を注いでいる。失敗する投資家やトレーダーのほとんどは自分のやっていることのリスクを把握していない。時間を費やし自分が何をやっているかを明確に把握した時、彼らは信じられないほどの成功を手にすることになるだろう」

    自分はうまいなどと思ってはいけない。そう思った瞬間に破滅が待っている

    「ナンピンをしないこと。トレードがうまくいかないときは枚数を減らすこと。うまくいっているときには枚数を増やすこと。コントロールができないような局面では決してトレードしないこと。例えば、私は重要な発表の前には多くの資金をリスクにさらすようなことはしない。それはトレードではなくギャンブルだからだ」

    「もし損の出ているポジションを持っていて不快なら、答えは簡単だ。手仕舞うだけだ。いつでも相場に戻ってこられるのだから。新鮮な気持ちでスタートを切るのに勝るものはない」

    「史上最高の投資家、ジェシー・リバモアは長期的には相場では決して勝てないと言ったと伝えられている。相場に決して勝てないという考え方は驚くべき見方だ。だからこそ私の哲学は巧みな防御なのだ。自分が超人的な洞察力を持っているなどと思ってはいけない。常に自信を持っていなくてはならないが、注意を怠ってはいけない」

    (ポール・チューダー・ジョーンズ)

    日経平均とナスダック100の売買シグナル(赤=買い・黄=売り)

    ●日経平均CFD(日足)標準偏差ボラティリティトレードの売買シグナル
    20220509_⑥.png

    ●日経平均CFD(日足)メガトレンドフォロートレードの売買シグナル
    20220509_⑦.png

    ●ナスダック100CFD(日足)標準偏差ボラティリティトレードの売買シグナル
    20220509_⑧.png

    ●ナスダック100CFD(日足)メガトレンドフォロートレードの売買シグナル
    20220509_⑨.png

    日々の相場動向については、

    ブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com/

    を参照されたい。


    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファン ドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市 場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当 する現役ファンドマネージャーとして活躍中。





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