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「マーケットの最前線」

2021年1月12日

第262回「ブルーウェイブと大統領選挙後の株式市場サイクルパターン」石原順

石原順 石原順

  • ブルーウェイブで米国のマクロ政策は「バラマキ」

    米ジョージア州決選投票で民主党が2勝し、ブルーウェイブが実現した。ねじれはなくなり、マクロシナリオは、「デフレ」から「バラマキ」へと変容する。


    バイデン政権は「大きな政府」を標榜しており、体制的には中国型の国家資本主義へ向かう。結局のところ、中国の特徴を持つ社会主義と中国の特徴を持つ資本主義は同じものになるだろう。財政出動と給付金バブルで第一四半期は株高シナリオが濃厚となってきたが、「バラマキという劇薬を使った薬物依存相場はいつまで持続可能か?」が、今後の焦点となる。

    ●選挙結果と米国のマクロ政策
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    出所:ゼロヘッジ


    株高シナリオの一方で、ドル相場は大幅な下落が懸念されている。シティバンクは、ジョージア州の上院決選投票結果を受けて、「財政出動の規模拡大やドル建て資産のヘッジの見通しが強まるなど、ドルの悪材料とわれわれが以前に特定したほぼ全ての要因に弾みがつく」(7日 ブルームバーグ)と指摘し、予想していたドルの20%下落リスクを高めるとコメントしている。

    ●FRB(米連邦準備制度理事会)はドルを破壊するのか?ドルの価値はどんどん下がっている
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    出所:ゼロヘッジ


    ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスが述べたように、「信用拡大でもたらされた好景気は、結局のところ崩壊するのを避ける手段がない。残された選択肢は、さらなる信用拡大を自ら断念した結果、すぐに訪れる危機か、ツケを積み上げた結果、いずれ訪れる通貨制度を巻き込んだ大惨事かだけ」である。


    FED(連銀)の無限大量的緩和や世界の中央銀行が解き放った歴史的な20兆ドルのQE(量的緩和)は、金融政策の社会主義化と両建て経済というポンジスキームを恒常化させてしまった。

    ●FEDのバランスシート
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    出所:リアルインベストメントアドバイス

    歴史大局観からいえば、現在の社会情勢は、世界最大のヘッジファンド「ブリッジウォーターアソシエイツ」の創業者であるレイ・ダリオのサイクル分析通りに進んでいるように思われる。今、我々がいるのは、「Printing Money and Credit(紙幣の大増刷と信用創造)」の時代である。その後どうなるかは、下のレイ・ダリオの「帝国のサイクル」で確認していただきたい。

    ●帝国の背後にある大きなサイクル(レイ・ダリオ)
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    出所:リンクトイン、レイ・ダリオ


    選挙後の株式市場サイクルと高まる不確実性


    投資家で億万長者のカール・アイカーン氏は年初、CNBCのインタビューに答え、株式市場が暴落する可能性について次のように言及した。

    「私はこれまで、ミスプライスされた株式市場が乱高下するのを数多く見てきたが、これらの相場に共通していることがある。それは、最終的には壁にぶつかり、大きな痛みを伴う調整に入るということだ。それがいつ起こるかは誰にも予測できないが、その時は下を見るべきだ。」


    大統領選挙を通過し、懸案となっていたジョージア州での上院議員選挙を終え、相場が最も嫌う不透明感や不確実性が払拭された。当初、ブルーウェイブになった場合は法人税増税やハイテク規制など、企業に対して風当たりの強まる政策が出てくるとして、株式市場にはマイナスと見られていた。しかし、過剰流動性相場の成れの果て、議会の「ねじれ」は買い、「ブルーウェイブ」も買いとなっている。

    次のグラフは、1933年以降の大統領選挙後の米国株式市場のサイクルパターンを示したものである。茶色で表しているのが、現職が勝利し2期目が決まったケースである。株式市場は選挙後に下落するものの、年が変わって1月に入ると上昇に転じ、その後、夏から秋に向けて緩やかに上昇する傾向が見て取れる。一方、政権交代が起こり1期目の大統領が誕生するケースは緑で示されている。その場合、選挙後はお祝いムードで上昇するものの、1月にいったんピークをつけ、その後はほぼ一貫して軟調な動きとなっている。実際、現在の相場はちょうど1月のピークをつけるところにある。



    大統領選挙後の株式市場サイクルパターン(緑:1期目の場合   茶:2期目の場合)
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    出所 McCllan Financial Publications


    トランプ支持者と言われる多くの人々がワシントンDCに集まり、議会を襲撃するなどして犠牲者も出た。米国の政治は完全に二極化しており、こうした動きが全米に広がり暴徒化するようなことも懸念される。またその一方、コロナウィルスのパンデミックはまだ収束が見えていない。

    民主党が大統領、そして議会の上下両院を抑え「ブルーウェイブ」となったことで市場は財政刺激策の拡大を囃し立てるように上昇している。しかし、一難去ってまた一難。米国社会における新たな不確実性が高まる中、バイデン政権はスタートから難しい政策運営を迫られることになりそうだ。

    ブルーウェイブでも難しい政権運営を迫られるバイデン政権


    今月5日に米ジョージア州で行われた連邦上院議会の決選投票において、民主党が2議席を獲得し勝利をおさめた。これで大統領、議会の上下両院を民主党が占める「ブルーウェイブ」となった。当初、「ブルーウェイブ」となった場合、法人税増税やハイテク規制など、企業に対して風当たりの強まる政策が出されるとして、株式市場にとってはマイナスであると捉えられていた。

    果たしてブルーウェイブは本当に売りなのか、それとも買いなのか。過去のデータを振り変えるとブルーウェイブとなった場合、株式市場のリターンはプラスになる傾向を持っている。1951年以降でブルーウェイブとなった年は18年あり、その平均リターンは約9%であった。リターンがマイナスとなったのが4年、プラスのリターンが14年、プラスの割合は77%である。大統領、連邦議会の上下両院が同じ政党で占められていることから、政権与党の政策実行力が高まることが背景にあると考えられる。



    ●民主党が大統領と議会上下両院を占めた場合のS&P500指数のリターン
    20210112-⑥.png
    出所 各種資料より筆者作成


    しかし今回のバイデン政権の場合、政党内における穏健派と急進左派との対立はくすぶっており、決して一枚岩とは言えない。例えば、バイデン政権の主要ポストの顔ぶれが明らかになっているが、AOC(オカシオ・コルテス)を含む急進的かつ進歩的な非白人かつ女性の4人の下院民主党新人議員は、彼女たちが推薦した人物が採用されていないとして請願書を回覧するなど、既に対立の構図も浮かび上がっている。

    バイデン大統領はこうした民主党の急進的な左派メンバーとどのように折り合いをつけていくのか、政権運営はスタート早々厳しいものになると思われる。過去の傾向からバイデン政権の1期目が「ブルーウェイブ=株高」と見るのは早まった考えであろう。

    お知らせ


    *当レポートでは米著名投資家のラリー・ウィリアムズの相場見通しを紹介してきたが、ラリーは昨年末でラリーTVによる相場見通しの配信を終了した。年間のフォーキャストは続けているので、年間見通しを知りたい方はそちらのほうを読んでいただきたい。

    ●ラリー・ウィリアムズの「フォーキャスト2021
    20210112_⑦.png
    出所:パンローリング

    なお、2月からは、ジェフリー・ハーシュの株式相場アノマリー分析を紹介する予定である。乞うご期待!

    *ジェフリー・ハーシュ

    マグネット・AE・ファンドのチーフ・マーケット・ストラテジストであり、ハーシュ・オーガニゼーションの社長である。また、ストック・トレーダーズ・アルマナックの編集長であり、コモディティ・トレーダーズ・アルマナックの共同執筆者でもある。20年以上、創業者のイェール・ハーシュと共に働き、2001年にその仕事を引き継いだ。CNBCCNN、ブルームバーグ、FOXビジネスなど、多くの内外のテレビにたびたび出演して、市場の周期性、季節性、トレードのパターンや予測、歴史の推移について解説をしている。また、投資家へのアラートや市場データ、リサーチ用ツールを含む、オンライン版の会員制アルマナック・インベスターの編集も行なっている。

    日々の相場動向については、

    ブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com/

    を参照されたい。


    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファン ドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市 場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当 する現役ファンドマネージャーとして活躍中。

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