「マーケットの最前線」
2021年9月 6日第260回「中国のリーマンと呼ばれる恒大集団がデフォルトのリスクに直面!?」石原順
石原順
無礼な目覚めに直面する習近平の中国への投資家
中国広東省深圳市に本拠を置く不動産開発会社の中国恒大集団(エバーグランデ・グループ)がデフォルトのリスクに直面している。中国恒大集団の負債は3000億ドルを超えると言われており、現在、保有する株式や不動産などの資産売却を進めているものの、資産売却が実現しない場合にはデフォルトに陥るリスクがあると発表した。
中国の不動産ブームは終焉を迎えつつあり、恒大集団は密かに「中国のリーマン」と呼ばれている。
ジョージ・ソロスがフィナンシャルタイズ紙に「Investors in Xi's China face a rude awakening(無礼な目覚めに直面する習近平の中国への投資家)」と題する寄稿を行い、中国恒大集団のリスクについて次のように指摘した。
中国の指導者である習近平は、経済の現実と衝突した。彼の民間企業に対する取り締まりは、経済に大きな打撃を与えてきた。最も脆弱なセクターは不動産、特に住宅である。中国は過去20年間、長期にわたる不動産ブームを享受してきたが、それは今や終わりに近づいている。
最大の不動産会社であるEvergrande(中国恒大集団)は、過大な債務を負っており、債務不履行の危機に瀕している。これにより、クラッシュが発生する可能性がある。根本的な原因は、中国の出生率が、統計に示されているよりもはるかに低いことにある。
(中略)習近平の中国は彼らが知っている中国ではない。彼は毛沢東の更新版を作ろうとしている。ただし、毛沢東の時代には株式市場がなかったため、投資家はその中国の経験を持っていない。投資家は無礼な目覚めに直面するだろう。
中国恒大集団は、現在、マンションを早期に売却するため赤字確保で大幅な値引きを行なっており、収益率が悪化している。2日に発表した2021年1~6月期決算は純利益が65億4000万元と前年同期比56%減少し、株価は約3カ月ぶりの安値をつけた。
中国恒大集団と取引を行う銀行、サプライヤー、そして住宅購入者など、この大手不動産会社の影響を受ける人々は少なくない。破綻すれば中国経済を大きく揺るがす可能性があるが、今のところ国からの支援を受けられるかどうかは定まっていない。破産や国の救済がなければ、債務問題を解決できないというところまで追い込まれている。
●中国恒大集団(日足)
中国の習近平政権は、企業に対する規制を強化し始めている。投資家は、こうした弾圧による混乱を時間の経過とともになんとか乗り越えようとしているが、それは、習近平政権が自由市場から決別し、今後、特に株式の力学を根本的に変えるような重大な変化を起こそうとしているのを見落としてしまう危険性があるだろう。
●香港ハンセン指数(日足)
果たして中国政府は中国恒大集団を救済するのかどうかわからないが、市場関係者からは「『大きすぎて潰せない』という考え方は弱まっている」との指摘もある。しかし、3000億ドルとも言われる負債はリーマンに比べて桁違いに大きい。巨大なショックが襲ってきたとき、ソロスの指摘する通り、投資家は無礼な目覚めに直面することになるのだろうか。
習近平国家主席は今月2日、中国国際サービス貿易交易会の開幕に合わせてビデオ出演し、首都北京に中小企業向けの証券取引所を設立すると表明した。革新による中小企業の発展を政府として引き続き支援する考えを示し「革新志向の中小企業向けの主要なプラットフォームとして北京証券取引所を設立する」と述べたと言う。アリババやテンセントの二の舞になるようなことにならないと良いのだが・・。配当株の下値硬直性
英国の資産運用会社ジャナス・ヘンダーソンが発表したレポートによると、投資家への配当金は今年、世界全体で1兆3,900億ドルに達し、パンデミック以前の水準に戻ると予測されている。2020年の第2四半期と比較すると、世界の企業の84%が配当金を増額または維持している。
ジャナス・ヘンダーソン社は、「この増加は予想をはるかに超えており、企業が株主に現金を還元するだけの力を持っていることは非常に心強い」と述べている。
筆者が高配当利回りに着目するポイントは3つある。1つはリスクの高いビジネスを展開している企業を足切りできるということ。2つ目は複利効果が期待できるということ。3つ目は株価急落時における下値硬直性を持つことである。
とりわけ、前述のように中国発の大きなショックが発生した場合、価格のドローダウンを抑えられる株式は魅力となる。例えば、世界金融危機の2008年にS&P 500が4割近く下落したのに対して、配当貴族指数の下落率は22%にとどまった。
●配当金の再投資による収益効果
出所:grow複利効果は絶大だ。配当金を再投資することで、複利の力を利用し、長期的な資産形成を行うことが可能となる。10年前にS&P500に連動するファンドに1000ドルを投資した場合、配当金を再投資していれば現在は約3720ドルに対して、再投資がなかった場合は2850ドルとなる。再投資した場合が2割以上アウトパフォームしている。
●配当ポリシー別平均リターンとベータ値出所:筆者作成
また、上記は1973年以降の配当ポリシー別の平均リターンとベータ値をハートフォードファンドのデータを元にまとめたものである。配当を支払っている株の平均リターンは配当のない株やS&P500指数のリターンに比べて高い。さらに増配をしている株(配当成長株)は平均リターンが相対的に高いだけでなく、ベータ値が低く抑えられている。相場が乱気流に巻き込まれた際には威力を発揮する。こうした銘柄をポートフォリオに含めておくことが重要になってくる局面がいずれ訪れるだろう。日経平均とナスダック100の売買シグナル(赤=買い・黄=売り)
●日経平均CFD(日足)標準偏差ボラティリティトレードの売買シグナル
●日経平均CFD(日足)メガトレンドフォロートレードの売買シグナル
●ナスダック100CFD(日足)標準偏差ボラティリティトレードの売買シグナル
●ナスダック100CFD(日足)メガトレンドフォロートレードの売買シグナル
日々の相場動向については、
ブログ『石原順の日々の泡』
https://ishiharajun.wpcomstaging.com/
を参照されたい。
石原順 プロフィール
1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファン ドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市 場に参入し活躍する。
相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当 する現役ファンドマネージャーとして活躍中。