マーケットレポート

プロの視点からわかりやすいレポートを提供します。

「マーケットの最前線」

2020年10月26日

第251回「米大統領選挙とボラティリティ・ラリーの日経平均予測」石原順

石原順 石原順

  • グーグルへの提訴、今度こそバリュー株へのシフトが起きるのか?

    米司法省はグーグルがネット検索市場やオンライン広告の独占を維持するために独占禁止法に違反したとして提訴に踏み切った。今回、グーグルを提訴したのは、米司法省とテキサスなど11州。米司法省がIT企業を提訴するのは1974年のAT&T、1998年のマイクロソフト以来のことである。グーグルをめぐっては欧州連合(EU)も同様の提訴をしており、グーグルは総額82億ユーロの制裁金に不服を申し立てている。

    コロナ禍において苦戦を強いられている企業が少なくない中、社会や生活様式の変化はハイテク企業の業績にはむしろ追い風だ。以前より指摘しているように、今や帝国レベルとなったハイテク企業に対しては、政治的なパフォーマンスとしての圧力が強まることは想定されていた。

    マイクロソフトを例にとると、2000年には連邦地裁から「分割すべき」との命令が下されるが、連邦高裁がそれを差し戻し、2001年には司法省との和解が成立する。和解案が修正された後、2002年に連邦地裁が両者の和解案を承認。和解条項に基づき、定期的に連邦地裁に報告書を提出し、条項が失効して訴訟が正式に終結したのは2011年のこと。実に12年にわたる時間が費やされた。

    提訴に関しては既におり込み済みなのか、あるいは過剰流動性相場における傾向として悪材料を軽視しがちになるからなのか、提訴の報道を受けたアルファベットの株価は小幅ながら上昇した。しかし、訴訟では時間と資金、人材といった資源を訴訟に費やすことになるわけで、企業にとっては逆風だ。そこで取り沙汰されてくるのが、バリュー株へのシフトの動きである。ハイテク株優位の情勢が続いている中、これまでにも折に触れてグロース株からバリュー株への潮目の変化を指摘する声が上がっていた。

    高い利益成長の続くグロース株は金利低下局面で世界的に買われてきた。将来の利益を現在価値に割り戻す際の割引率(金利)が下がると高いバリュエーション(株価指標)が容認される。金利が上がれば逆の理屈が成り立ち、バリュー株シフトにつながりやすい。

    コロナ禍の3月以降、グロース株優位は強烈だった。過熱ぶりが指摘されながらも、巨大IT株など一握りの銘柄が米株全体をけん引した。一方、バリュー株は割安のまま放置されたり、さらに売り込まれたりしてきた。8月にはグロースとバリューの相関係数がついにゼロになった。ゴールドマンによると、2000年以降で初めての現象だ。

    この人の登場で流れが変わるかもしれない。JPモルガンのストラテジスト、コラノビッチ氏は20日の米CNBCで「割安株のカムバック」を表明。11月の米大統領選でトランプ氏とバイデン氏のいずれが勝利しても、バリュー株相場の持続性があるという。

    今回は前提として、コロナの影響が和らぐのにあわせて景気回復が加速するとみる。バイデン氏が当選すればキャピタルゲイン課税が強化される見通しで、投資家は増税前に含み益の膨らんでいるグロース株を売る。バイデン氏と同様、トランプ氏もインフラ投資を含む財政支出の強化を示しており、どちらが勝ってもバリュー株の追い風になる――。これが論拠だ。(日経新聞2020年10月22日「米大統領選はバリュー株逆襲の号砲か」)

    ステロイド漬けの市場において、ハイテク株のバリュエーションはかつてないまでに高まっている。誰もが高すぎるバリュエーションに神経質になるのも無理はない。以下のチャートが示すようにバリュー株とグロース株のバリュエーションギャップはかつてないほどに高まっている。

    ●GFC(グレート・ファイナンシャル・クライシス=リーマンショック)以来、グロース株はバリュー株をアウトパフォームしてきた
    ①GFC 20201026.jpg
    出所:ゼロヘッジ

    なぜ、これほどまでにギャップが大きくなっているのか、ゼロヘッジの記事「Outside Of Tech, There Has Been Zero EPS Growth In The Past 12 Years(技術の外で、過去12年のゼロEPSの成長があった)」で2つの理由が指摘されていた。

    一つは世界的な金利の低下である。一般的に金利の低下は株価の上昇をもたらす要因である。そしてもう一つは長期的な経済成長期待の低下である。GFC以降、GDP成長率は低下しており、企業の収益成長率も鈍化している。成長が鈍化する中、成長を達成できると考えられる企業はより価値があると見なされる成長の希少性である。これら2つの「低下」が重なりハイテク企業にとっては好環境がもたらされている。

    しかし本質はもっとシンプルだ。以下は、2008年のGFC危機以降の世界企業の収益成長率をグラフにしたものである。一目瞭然である。テクノロジー企業を除いた世界の企業の収益は伸びていないのである。

    ●世界の企業の収益率はテクノロジーを除くと伸びていない
    (青:ハイテクを除く世界  水色:世界のハイテク  グレー:世界)
    ②世界の企業の収益率 20201026.jpg
    出所:ゼロヘッジ

    総じて言えばハイテク企業以外は利益を出せていない。ハイテクに対する規制強化と言う流れがある中、バリュー株への転向はヘッジにはなるであろうが、ファンダメンタルズを伴う強い大きな流れにはならないと筆者は見ている。


    シートベルトはまだ緩めてはならない?相場への基本姿勢を見直そう

    1987年10月19日のブラックマンデーから33年間が経過した。ブラックマンデーは米国の貿易赤字の拡大、株式の高いバリュエーション、そしておそらく最も重要であろうがコンピュータ取引など、いくつかの要因が重なり合い株式市場を激震させた。現在の相場と1987年の相場の類似性が指摘されていたため、10月19日を通過し、ほっと胸を撫で下ろしている投資家もいるようだ。

    ●S&P500の推移(1987年と現在)
    ③S&P500の推移 20201026.jpg
    出所:ゼロヘッジ

    今年はパンデミック、史上稀に見るバリュエーション、大統領選挙、人種問題をめぐる暴動、気候変動など、社会を不安定にさせ、景気後退に拍車をかける可能性のある要素には事欠かない。しかし、市場にとって最大の問題はこれらの事柄ではなく流動性である。歪められた市場では何かのきっかけで急速に逆回転を起こすことがある。

    大統領選挙の投票日まで2週間を切った。ウェルズ・ファーゴによると、S&P500のインプライド・ボラティリティは、大統領選挙の前の月から上昇する傾向があり、投票日1週間前にはさらに高まると言う。以下のチャートは、1988年までの過去の大統領選挙期間におけるVIXの変動(紫)とS&P500の推移を示したものである。ここからさらにボラティリティが高まる時期に入る。


    ●大統領選挙前後のVIXの推移
    ④大統領選挙前後のVIXの推移 20201026.png
    出所:マーケットウォッチ

    VIXが上昇し、荒い値動きになる相場では確固とした投資スタイルがより重要になってくる。筆者の売買手法はトレンドフォロー(順張り)が基本である。そして、筆者の相場に対する取り組みの基本姿勢は以下のとおりである。

    ●相場はタイミングがすべてである(相場観が当たることと相場で儲けることには何の関係もない)
    ●相場は確率に賭けるゲームである
    ●相場は防御(資産管理)の上になりたっている
    ●素早い意志決定のために売買手法は単純でなくてはいけない
    ●値頃感は持たない
    ●自分のしていることを理解する
    ●総資産の10%を失ったら相場を休む
    ●苦境に陥っても自分の決めたルールを守る
    ●相場に一喜一憂しない
    ●追い込まれてやる売買は必ず負ける
    ●常に楽観的であれ
    ●相場は明日もある
    ●信じられないくらい儲かったら相場をやめよう


    ラリー・ウィリアムズの日経平均予測

    米著名投資家のラリー・ウィリアムズは、「日経平均はアメリカの株よりもかなり強くなっています」として、買い場を探し、レンジブレイクで買いエントリーを考えているようだ。

    どこで買うのか?先週の●曜日の高値を超えたところでエントリーします。シーズナルが上昇中だからです。そして、アキュムレーション指標の一つ、COT 代用指数はコマーシャルズの日々の動向を示していますが、彼らは先週、買っていました。これはポジティブだと思います。前回、この状況だったのはこの時点と 9 月 21 日頃です。その後、マーケットは上昇しています。上昇のうねりに備えるべきです。日経の買いシグナルを探す時期です。


    ラリー・ウィリアムズの日経平均予測
    ⑤LW日経平均予測 20201026.png
    出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2020年10月26日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。

    ●日経平均(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル
    ⑥日経平順張りの標準偏差VM 20201026.png



    日々の相場動向については、

    ブログ『石原順の日々の泡』
    https://ishiharajun.wordpress.com/
    を参照されたい。



    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。

  • 口座開設費・管理費無料 口座開設
  • 初めての方へ
  • ネット取引 ログイン
  • くりっく365 取引所FX ログイン
  • くりっく株365 取引所CFD ログイン

TOPへ戻る