マーケットレポート

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「マーケットの最前線」

2020年9月23日

第246回「世界は今後5年間で衝撃的な変化を迎えることになる!?」石原順

石原順 石原順

  • 「世界は今後5年間で衝撃的な方法で変化する」というレイ・ダリオの大局観

    カネをばら撒くより、減税をやって消費を刺激し、企業の利益も増え税収も増えていく好循環に持っていくべきであろう。シュンペーターは政府から十分な支援を得てしまえば資本主義は停滞すると信じていた。赤字の増加は経済成長率の低下を促している。
    以下は、「A Permanent Shift In Valuations?(バリュエーションにおける恒久的な変化)」(9月13日 ゼロヘッジ)という記事の抜粋である。

    下のグラフは、歳入を上回る「過剰な」政府支出の累積増加を示している。名目GDP(国内総生産)成長率の上昇が止まった地点に注目して欲しい。また、バリュエーションが上昇に転じた地点でもある。

    ●米政府支出の累積増加
    ①米政府支出の累積増加 20200923.png
    出所:ゼロヘッジ

    この変化は、政府がいつから一貫して赤字を出し始めたかを見れば、より明確に分かる。赤字の増加は、経済成長率の低下と直接相関している。

    ●赤字の増加は、経済成長率の低下と相関している
    ②赤字の増加 20200923.png
    出所:ゼロヘッジ

    経済のレバレッジ(企業、消費者、金融、政府の債務)が記録的な水準にあり、上昇していることを考えると、(インフレ率の上昇につながる)より強固で持続可能な経済成長を生み出す能力は、依然として希望に満ちた目標にすぎない。
    バリュエーションが恒久的に上向きにシフトしたという考え方の問題点は、1990年から2000年にかけての市場の異常性が、長期的な中央値を上回るバリュエーションを生み出したことである。しかし、経済成長が長期的には2%以下で推移していることを考えると、将来的には平均的なバリュエーションの範囲が低くなり始めると考えられる。

    出所:「A Permanent Shift In Valuations?」 9月13日 ゼロヘッジ

    米国の負債の始末は、いずれドル安誘導によって対処されるだろう。ドル安誘導(ドルの切り下げ)をすれば、米国の借金は他国のバランスシートに移すことができる。ドルの価値を半分にすれば、米国債で調達している他国からの借金も半分になる。
    いずれにせよ、米国経済は政府支出(主に非生産的な無償の給付あるいは無益な戦争)とFRB(米連邦準備制度理事会)の膨れ上がるバランスシートに完全に依存するようになるだろう。

    世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーターの創設者であるレイ・ダリオがマーケットウォッチのインタビューに答え、米国の莫大な借金を含む3つの課題により、世界は今後5年間で衝撃的な変化を迎えることになると指摘している。

    「Billionaire investor Ray Dalio on capitalism's crisis: The world is going to change 'in shocking ways' in the next five years(億万長者投資家のレイ・ダリオが資本主義の危機を語る。世界は今後5年間で「衝撃的な方法で」変化するだろう)」から一部簡約をご紹介しよう。

    Market Watch)今後5年から10年の間に米国が直面している3つの大きな国内外の問題と、これらの課題に対処できなかった場合、世界における米国の地位を脅かす可能性があることについて指摘してきた。3つの差し迫った問題とは何か?

    Dalio)病気を診る医者のように、機械的に見ている。何が問題なのかと問われれば、ある種の病気であり、それは時代を超えて普遍的なパターンを持っていて、米国はその進行を大まかに追っている。

    3つの問題が一緒になっているので、それぞれを理解し、それらがどのようにまとまって大きな問題を作っているのかを理解することが重要だ。お金と信用の循環の問題、富と価値観のギャップの問題、そして既存の支配的な権力に挑戦する新興大国の問題の3つである。

    大きな富の格差と一緒に景気が悪化していて、中国の台頭大国が既存の米国の支配力に挑戦している。過去数十年の間に、米国の競争上の優位性が弱まってきたのは事実だ。例えば、米国は他国と比較して教育面での優位性を大きく失い、世界のGDPに占める割合が減少し、富の格差が拡大し、政治的・社会的な二極化が進んでいる。

    しかし、競争上の優位性をすべて失ったわけではありません。例えば、技術革新やテクノロジーの分野では、米国が依然として最強だが、中国が非常に勢いづいてきており、現在のペースでは米国を上回るだろう。軍事的には米国の方が強いが、中国も非常に強くなってきており、台湾やその他の紛争地域を含む中国近海では米国より影響力を持っている。両国の財政は厳しいが、米国の方が厳しい。米国は負債サイクルと貨幣サイクルの末期にあり、大量の負債を生産し、大量の貨幣を印刷している。それが問題なのだ。

    M)はっきり言って資本主義は壊れているのか?

    D)壊れているというよりは、直さなければならない問題を抱えていると言いたい。私はすべてのものを機械のように見ている。資本主義は、インセンティブとイノベーションを生み出し、生産性を生み出すために資源を配分する素晴らしい方法だということがわかっている。すべての成功している国は、それを利用している。例えば、共産主義の中国は経済的には資本主義を選択したが、それはその成長に不可欠なものであった。

    しかし、資本主義はまた、大きな富の格差を生み出し、それが機会の格差を生み出し、今私たちが見ているような方法でシステムを脅かしている。富の格差は、富裕層の子供たちがより良い教育を受けられるという理由で不公平な優位性を与え、機会均等という概念を根底から覆している。機会均等という概念が損なわれる。機会均等を得る人の数が減ると、その人口の中から優秀な人材を見つける可能性が減り、公平ではなく、生産性が損なわれる。そうなると、「持っていない人」は、経済状況が悪い時に資本主義システムを破壊したいと考えるようになる。このダイナミズムは歴史の中で常に存在してきたし、今も起こっている。

    資本主義システムは利益を求めることで資源配分を行うシステムであり、一般的にはうまく機能しているが、必ずしもうまく機能しているとは限らない。資本主義や資本家は、経済のパイの大きさを大きくするために生産性を上げたり生産したりするのは得意だが、経済機会のパイを分割するのは苦手だ。社会主義者は総じて、生産性を上げて経済機会のパイを大きくすることは得意ではないが、経済機会のパイを分けることは得意だ。

    私たちは現在、負債を生産してお金を印刷することで富を得て、その富を分配することに重点を置きすぎており、生産性を高めることには十分ではない。富は借金やお金を作ることでは生まれない。教育のようにトータルで意味のある投資をして、生産的であるために平等な機会を創出することに目を向けなければならない。

    M)米国人が11月の大統領選挙を迎える中で、先に挙げた3つの大きな問題は、有権者が考慮すべき重要な要素のようだ。

    D)これまで話してきた3つの大きな問題に関連して、世界は今後5年間で衝撃的な変化を遂げようとしている。

    第一に、借金と貨幣のサイクルがある。お金の価値はどうなるのか?借金はどうなるのか?ドルはその価値を維持するのか?この財政は誰が支払うのか?どうやって?何が効くのか?これが第一だ。

    第二に、富、機会、価値観のギャップに対処しなければならない。お互いに害をなすような形で、お互いに歩み寄るのか、それとも事態が悪化しても協力していくのか。

    第三に、既存の米国の力に挑戦する中国の大国の台頭である。これはうまく処理されるのか。

    次の大統領任期ではこれらの問題を扱うことになり、結果に大きな影響を与えることになる。この3つが今のように存在していたのは、1930年から1945年の時代が最後だ。それは、ゼロ金利と貨幣印刷があった最後の時代。富と政治的格差が今日のように大きくなった最後の時代。既存の世界秩序に挑戦する新興国がいた最後の時代だ。以前の多くの類似した時代は、私たちに見通しを与えるのに役立つ。

    M)これらの国内外の課題は、明らかに米国人の財政に影響を与えるでしょう。投資家がポートフォリオを守り、市場のチャンスを活かすためには、どのようなスマートでプロアクティブな戦略があるのか。

    D)まず、投資の価値を心配するのと同じくらい、お金の価値を心配して欲しい。お金の印刷と借金は、そのことに気づかせてくれるはずだ。金融資産の価格が上がったのは、借金とお金の創造が原因で、株や金などの金融資産の価格が上がったのはそのためである。

    第二に、上手に分散する方法を知っておくこと。富はシフトするほど破壊されるものではないので、国、通貨、資産の多様化が含まれている。何かが下がると、他の何かが上がるので、相対的にすべてのものを見なければならない。

    米国人はすべての価値をドルで見るが、ドルの価値には目を向けない。慎重にならざるを得ない環境にあるのだ。


    ハイテクバブルはパンデミックに次ぐ市場の第2のテールリスク

    運用総資産額6,460億ドル、224人のファンドマネージャーを対象にバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが今月実施した最新のグローバル・ファンドマネージャー調査によると、世界のファンドマネージャーの8割が、米国のハイテク株をロングすることは、現在、史上最も集中した取引であると答えた。このため、「テックバブル」はパンデミックに次ぐ2番目に大きなテールリスクとして挙げられており、3番目のリスクとして、米国の選挙が取り上げられた。

    ●バリュー対グロース株の10年間のリターンはドットコムを上回るグロース優位
    ③バリュー対グロース株 20200923.png
    出所:ゼロヘッジ

    「年金基金や政府系ファンドがポートフォリオを調整するため、7~9月(第3四半期)に世界の株式市場から2,000億ドル(約21兆円)が引き揚げられる見込みだとJPモルガン・チェースが試算し、リスクを指摘した。ストラテジストらはリポートで、このマイナスのリバランスは株式市場の厚みが今月、急激に低下したことを考えると、さらに大きな問題だと指摘した」(9月16日 ブルームバーグ 株式市場から21兆円流出へ-日米の年金基金などからJPモルガン試算)という報道が話題となっている。

    株式が債券を上回る四半期末には、彼らのポジションのマンデートに沿って株式を売却することによってリバランスを行う必要があるためだ。米国の確定給付年金、ノルウェーの石油ファンドであるノルゲス銀行、日本の政府年金基金であるGPIFを含む最大の「リバランス」クジラのエクスポージャーを見ると、合計で約2,000億ドルの強制的な売却が行われる可能性があると推定されている。詳細は次の通りである。

    ・米国の確定給付年金制度は7.5兆ドルの資産規模。米国株式と債券のパフォーマンスを考慮すると、米国の確定給付年金による株式のリバランス・フローは約1,700億ドルのマイナスとなる。

    ・1.1兆ドルの運用残高を有するノルゲス銀行も、四半期末のエクイティ・リバランス・フローがマイナス150億ドル程度になると予想される。

    ・日本の政府年金制度であるGPIFは、1.5兆ドルの運用資産残高を有しているが、同様に約220億ドルの売却が予想されている。

    ●市場の流動性は低下している
    ④市場の流動性 20200923.png
    出所:ゼロヘッジ

    JPモルガンはこれについて「ウイルス危機以来、最もネガティブなリバランスの流れである」と警告。このネガティブなリバランスの流れは「今月の株式市場の急激な下落を考えると、さらに問題になる」と注意を促している。強制的な売りが、はるかに流動性の低い市場で行われようとしており、その影響は計り知れないものになるだろうということだ。

    下のチャートは、NYダウの選挙年サイクル(オレンジのライン)である。シーズナリーサイクルからみても、9月後半の相場は軟調に推移する可能性があるので、「月末」に向けて注意が必要だろう。

    ●NYダウの選挙年サイクル
    ⑤NYダウの選挙年サイクル 20200923.png
    出所:エクイティクロック


    ラリー・ウィリアムズの日経平均予測

    米著名投資家ラリー・ウィリアムズは、「日経平均は今年の相場ではシーズナルパターンが機能しておらず、米国株より強い展開なので、季節要因による大きな変動は期待しないほうがいい」と述べている。

    米国株が下落したのに対し、日本株は今週、かなり持ち直しました。それを念頭に置いて、日経の季節的なパターンのチャートを見てみましょう。2つのポイントがあります。一つ目は、日本の株式市場物価は通常 7 月から 9 月にかけて下落しますが、2020 年はそうではないということです。つまり、通常よりも相場が強いということです。つまり、日本の皆さん、日本の株式市場はアメリカの株式市場よりも強いということです。今年は季節的に大きな動きは期待しないようにと伝えています。

    ●ラリー・ウィリアムズの日経平均予測
    ⑥ラリー・ウィリアムズの日経平均予測 20200923.png
    出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2020年9月22日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。



    日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com/

    を参照されたい。




    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。



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