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「マーケットの最前線」

2020年9月14日

第245回「個人投資家の急増は恐ろしい!?・ゴールドマンが株式市場に強気な10の理由」石原順

石原順 石原順

  • 相場末期に現れる2つの兆候

    フィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、ソフトバンクグループの株主が同社に対し、米株オプション取引を行う部門の責任者などの情報を明確にするよう求めていることが明らかなった。8月にソフトバンクグループが行った大規模な米国株のオプション取引に関して、どの程度のリスクを伴うかなどの疑念を生じさせたとして求めたもので、FTは複数の投資家の話を基に伝えている。

    ソフトバンクグループは先月11日、ソフトバンクグループが67%、孫正義会長兼社長が33%を出資して、アマゾンなど上場するハイテク株に投資をする投資運用子会社を設立することを公表した。株主であるエリオット・マネジメントの要求などもあり、保有する資産(4.5兆円)の現金化を進めており、積み上がった手元資金の一部を有効活用する狙いで、孫社長は「投資会社として投資先を多様化させる」としていた。公表前から試験的に運用を始めており、6月末時でアマゾン株を約10億ドル、アルファベット株を約4億7500万ドル、テスラなどを含む企業の株式を多数保有していることを開示した。

    FTによれば、ソフトバンクグループは孫社長が投資委員会のメンバーであることは認めたものの、他のメンバーやこの投資部門をいつ設立したかなどの情報は明らかにしておらず、それ以上の詳細を示すことも控えたと言う。投資運用子会社の設立時点でも指摘されていたことではあるが、運用成績によっては本体の業績に大きな影響を与えることになり、今回の要求は株主として当然であろう。

    関連記事が伝えられる中、ゼロヘッジの記事「Connecting The Dots: How SoftBank Made Billions Using The Biggest "Gamma Squeeze" In History(点と点をつなぐ:ソフトバンクが史上最大の「ガンマ・スクイーズ」を利用していかにして10億ドルを稼いだか)に、責任者とされる人物について言及されていた。

    ここでは個別に名前を挙げることを控えるが、記事によるとその人物は、アブダビのソフトバンク上級副社長で、元々ロンドンに本拠を置くナイト・アセッツで「アービトラージとバリュー投資」を行っていた。そのナイト・アセッツは、2011年の運用開始以来、年間112%のIRR(内部収益率)を生み出してきたと言う。

    ソフトバンク・ビジョン・ファンドのHPに掲載されているその人物の経歴によると、マサチューセッツ工科大学(MIT)で電気工学とコンピュータサイエンスの修士号を取得、金融市場に造詣が深く、テクノロジー、金融、リスク管理の専門知識をビジョン・ファンドの仕事に生かしており、2011年から2017年までナイト・アセッツでマネージング・パートナーを務め、それ以前は、ドイツ銀行でプリンシパル戦略の責任者を務めていたとされている。

    記事では、この人物を含めドイツ銀行出身者が複数、ソフトバンクグループにいることは注目に値すると指摘している。ドイツ銀行と言えば、貴金属価格、LIBOR金利、外国為替、株価などの不正操作、マネーロンダリング、サブプライム住宅ローン担保証券の販売、デリバティブを利用して顧客の虚偽決算報告の関与など数々の不正行為への関わりが伝えられている。また、サブプライムローン証券の販売に関しても組織ぐるみで不正を行ったとして、2016年には72億ドルを支払うことで米司法省と和解した過去がある。

    今回のオプション取引に関しても、そうした遺伝子を受け継ぐファンドというイメージを強める結果を招いたとしても致し方ないだろう。今回の取引によってソフトバンクグループは、約40億ドルの未計上利益を抱えているとされているが、詳細は今のところ定かではない。

    米国では燃料電池トラックを開発するニコラの不正が指摘されている。前々回のこのレポートで取り上げたように、ニコラはまだ製品を製造していないにもかかわらず、SPAC(特別買収目的会社)との合併によって一夜にしてナスダック上場となった企業である。ヒンデンブルグ・リサーチ社がニコラについて「数十の嘘」をついたとするレポートを公開。なお、このヒンデンブルグ・リサーチはニコラのショートポジションを持っており、現時点ではこの主張が正しいかは見極める必要がある。

    相場末期には2つのことが横行しやすい。1つは企業の不正や詐欺事件である。巨額金融詐欺のマドフ事件が発覚したのは2008年12月であった。ソフトバンクグループが不正や脱法行為を行なっているわけでは決してないが、親子上場や株式の売り出し中に通信子会社のソフトバンクが日経平均に採用されるなど、モラルハザードが指摘されるような事案が目に付く。

    もう1つは個人投資家による売買の急増である。CNBCの記事「Bond king Jeffrey Gundlach says the surge in retail investor activity is 'downright terrifying'(債券王のジェフリー・ガンドラック氏は、個人投資家の急増は「まさに恐ろしい」と語っている。)によると、ガンドラックは個人投資家の間で投資熱が高まっていることについて「まさに恐ろしい」としており、これは、「私が経験してきたように、かなりの数のサイクルを経験している人にとっては、市場の状態を示す恐ろしい兆候である」とガンドラック氏は述べている。

    ガンドラック氏は、個人による株式取引のブームが連邦政府による空前の景気刺激策の影響を受けていることを指摘。景気刺激策は多くの苦労している米国人を支援したが、他の人々にとっては、景気刺激策の資金が株式市場に戻ってきたと報じられている。ガンドラック 氏は、初心者である投資家を見知らぬ人からキャンディを差し出される子供に例えている。

    これらの兆候が稀有に終わるのかどうか、ヘルシーコレクションを経てさらに上昇気流に乗るのかどうか。ここ数日の相場動向をさらに慎重に見極めたい。


    ゴールドマン:株式市場が浮上し続ける10の理由

    米国株式市場が徐々に不安定さを増す中、ゴールドマンは、株式市場には短期的な修正が入るものの、現在の強気は継続するとしてその10の理由を挙げている。

    ●ナスダックの2日間の調整は5%を超えていた
    ①ナスダックの2日間の調整 20200914.jpg
    出所:ゼロヘッジ

    ●特に米国ハイテク株へのオプションポジショニングが大幅に増加したことによって、ナスダック先物のポジションは歴史的な高値圏にある
    ②米国ハイテク株へのオプションポジショニング 20200914.jpg
    出所:ゼロヘッジ

    こうしたことからゴールドマンは、短期的には調整するリスクが依然として高いことを認め、「短期的な後退」の可能性について言及しているが、企業の成長見通しの改善と金融政策のサポートが相まって、現在の強気市場は継続すると予想している。

    具体的には、以下の10の理由を挙げている。
    ① 深いリセッションを経て、新たな投資サイクルの第一段階に入っている。「希望」の段階、つまり新しいサイクルの最初の部分は、通常、投資家が回復を期待し始めたリセッションから始まり、サイクルの中で最も強い部分となる。今年はそれが顕著に表れている。
    ② ワクチンの可能性が高くなるにつれて、景気回復はより耐久性があるように見える。
    ③ ゴールドマンのエコノミストは最近、経済予測を上方修正しており、アナリストの予想もそれに追随する可能性が高い。
    ④ 同行のベアマーケット指標(2019年は非常に高い水準にあった)は、バリュエーションが非常に高いにもかかわらず、ベアマーケットのリスクは比較的低いと指摘している。
    ⑤ 政策支持はリスク資産に対して非常に支持的であることに変わりない。中央銀行の「プット」-中央銀行は必要なだけの流動性を提供するために存在するとの信念-と、政府が成長を支援する意思を拡大してきたことによる財政的な「プット」の両方がある。
    ⑥ エクイティ・リスク・プレミアムは低下余地がある。
    ⑦ 最近の名目金利ゼロ政策の再開は、フォワードガイダンスの延長と相まって、実質マイナス金利が拡大する環境を作り出している。このことは、景気回復時のリスク資産にとって非常に支持的であると考えられる。
    ⑧ 株式は、インフレ期待の高まりに対する合理的なヘッジとなる。
    ⑨ 特にバランスシートの高い企業(米国企業の60%、欧州企業の80%の配当利回りが平均社債利回りを上回っている)にとっては、社債と比較して株式は割安感がある。
    ⑩ デジタル革命は引き続きペースを上げている。経済と株式市場のこの変革は、まだまだ先のことだと考えている。これらの企業は、この強気の市場でバリュエーションとリターンを牽引し続ける可能性がある。
    この10の理由を踏まえた上で、ジム・ロジャース氏の次の言葉を送りたい。

    「投資について誰もが学べる最高のルールの一つは、何もしないこと、絶対に何もしないこと、やるべきことがない限りはだ。隅にお金が転がっているのを待つだけである。そして、私がしなければならないことは、そこに行って、それを拾うこと。私は樽の中の魚を撃つ(朝飯前)ということわざのような状況を待っている。」


    ラリー・ウィリアムズの日経平均予測

    米著名投資家のラリー・ウィリアムズは、今週のラリーTV(ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析)で、

    「日本の株式市場は本当に全くどこにも行かない状態が続いています。市場間予測手法に基づくパターンは下降局面にあります。短期的には買われすぎの相場になっています。なので、ここでは売りたいと思っています。どこで?●曜の安値で、短期トレードの空売りをしたいと思っています。もちろん、新高値につける前にストップでプロテクトします。目標ですが、2●,000 円まで下がると思います。年後半、この市場の上昇が見られるでしょう。しかし、今のところ、短期的には下降にバイアスがかかっています」

    と述べている。

    ●ラリー・ウィリアムズの日経平均予測
    ③LW日経平均予測 20200914.png
    出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2020年9月14日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。



    日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com/

    を参照されたい。




    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。

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