マーケットレポート

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「マーケットの最前線」

2020年9月 7日

第244回「株と恋に落ちたといわれるロビンフッダー達の大量の投げが出て米国株は急落」石原順

石原順 石原順

  • 日足の買いトレンド収束、米国市場は突然のエアポケットに入ったのか?

    先週木曜日に米国株式市場が調整に見舞われた。これまで相場を主導してきたアップルやテスラなどハイテク銘柄が急落し、ナスダック総合指数に至っては約5%の値下がりとなった。相場はマイナス1σを割り込み、ADXとSTDがともにピークアウトし、日足で継続していたナスダックの買いトレンドはいったん終了した。

    ●ナスダック100先物(日足)
    ①NASDAQ100日足.png
    出所:カスタムチャート

    報道などでは特段のきっかけや材料もないのに大きく下落したとされている。特段のきっかけや材料は本当になかったのか。以前から指摘していたように米国市場の異変のきっかけとなるような異常値は示されており、自覚症状はいくつも出ていた。それらを見て見ないふりをしていたに過ぎない。今回、突然のエアポケットに入りこんでしまったわけではない。

    ブローカーの話では、「株と恋に落ちた」といわれるロビンフッダー達の大量の投げが出ているらしい。テスラ株の3営業日の下落率は3月半ば以降で最も大きい。この日は高値で推移していたテクノロジー銘柄が幅広く売られ、ナスダック100指数は3月以来の大幅安となった。

    給付金バブル相場と言われているが、米国ではベーシックインカムを導入したようにみえる。もちろん、最初は『緊急対策の一環として』である。米国経済は政府支出(主に非生産的な無償の給付あるいは無益な戦争)とFRBの膨れ上がるバランスシートに完全に依存するようになるだろう。

    ●S&P500は過去10年のトレンドラインにタッチ
    ②SP500 10年トレンド 20200907.jpg
    出所:ゼロヘッジ

    ●株価が収益の何倍で取引されるかを示すPEマルチプルは、ドットコムバブルのピークであった27倍を超えた
    ③PEマルチプル 20200907.jpg
    出所:ゼロヘッジ

    そして、今回の高値更新は流動性が過去最低水準に暴落する中で起こっていた。


    ●市場流動性は過去最低水準にあった
    ④市場流動性 20200907.jpg
    出所:ゼロヘッジ

    一方、VIX指数はかつてないまでに高まっていた。

    ●VIX指数とS&P500
    ⑤VIX指数とS&P500 20200907.jpg
    出所:ゼロヘッジ

    テクノロジー株を中心とした一部銘柄への集中度合いはかつてないほどに高まっており、金融市場におけるリスクは記録的なレベルまで上昇していた。この集中が逆回転を始めた場合、ロビンフッダーも機関投資家も関係なく、誰もが保有している同じ株式を売ろうとする。言い換えれば、ほとんどの投資家やトレーダーは、小さなドアが一つしかない火のついた部屋に閉じ込められてしまったようなものである。でも大丈夫、FRBがなんとかしてくれる。果たしてFRBにそんな余力は残されているのだろうか?


    市場に蔓延するFRBの手には負えないリスク

    FRBと言う盤石な後ろ盾があるとする盲目的な信仰が、市場バリュエーションをかつてないほどにまで高めていた。しかし、ゼロ金利とQEインフィニティを含め「Whatever it takes」はすでに断行されている。ここから先、さらに市場が暴落した場合、中央銀行にはどんなカードが残されているのか。

    現時点ですでにFRBはコントロールを失っている。全面的な市場介入によって膨大な負債が積み上がっている。パンデミックによって引き起こされた経済のシャットダウンによって企業のデフォルトが増加することも想定されている。さらに米中間の軋轢が高まる中、10年前の世界金融危機後に中国が果たした役割を再び中国が米国経済を浮上させるためには行うとは思えない。また、米国政治は11月の大統領選挙を控えている。FRBの手には負えないリスクが金融市場に蔓延している。

    FRB がやっていることは、巨大なシステミック・リスクを生み出し、経済と将来の繁栄の多くを破壊しかねない。簡単に言うと、160,000,000 人の労働者の経済生産全体の価値を億万長者600人の個人に渡している。

    市場はこれまで、過剰評価、過剰買い、過剰な強気と3つの過剰に取り囲まれていた。投資について覚えておくべきことの1つは、今日支払う価格が高ければ高いほど、期待できる長期的なリターンは低くなると言うことである。将来の見通しが最も悲惨なのは、過去のリターンが最も華々しい時なのである。
    大統領選挙についても触れておこう。JPモルガンのストラテジストが今週、トランプ米大統領が11月の大統領選で再選される可能性の高まりに投資家は備える必要があると指摘した。ブルームバーグの記事「トランプ氏の再選可能性の高まりに投資家は備えよ-JPモルガン」によると、「確かに今後約60日間に勝ち目を変える多くの出来事が起こり得るが、バイデン前副大統領の勝利に大部分の投資家がなお備える一方で、トランプ氏に有利なモメンタム(勢い)が今後も継続するとわれわれは現時点で考えている」と説明していると言う。

    今回の選挙を巡る不確実性は高まっている。筆者は以前から指摘しているようにトランプが再選される可能性が高いと見ている。各種世論調査では引き続きバイデン氏がリードをしているようであるが、賭けサイトにおけるオッズは。トランプが急速に追い上げており、両者の差が急速に縮まっている。


    ●賭けサイトにおけるオッズ トランプ(赤)VSバイデン(青)
    ⑥トランプとバイデン 20200907.png
    出所:RCP Betting Average

    日経新聞の記事「トランプ氏巻き返し、恐怖指数に異変」によると、VIX先物市場において10-11月にかけての警戒感が異常に高まっていると言う。大統領選のある11月3日前後に相場が乱高下するリスクに保険をかける投資家が増えている。

    米国株式市場における調整は高値圏で起きていることであり、ここまで上昇が続いてきた場合、多少の調整は起こりうるとの指摘もあるが、前述した3つの過剰がこの程度の調整で済むとは思えない。次に暴落が起きた場合、FRBに残されたカードは日銀が行っているようにETFの購入である。しかしこのカードを切ってしまうと手元にはもう何も残っていない。


    ラリー・ウィリアムズの日経平均予測

    ラリーはクリスマス頃までは売り主体のトレードを考えているようだ。

    今週のラリーTV(ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット予測)では、「日本の株式市場は本当に全くどこにも行かない状態が続いています。市場間予測手法に基づくパターンは下降局面にあります。短期的には買われすぎの相場になっています。なので、ここでは売りたいと思っています。どこで?●曜の安値で、短期トレードの空売りをしたいと思っています。もちろん、新高値につける前にストップでプロテクトします。目標ですが、2●,000 円まで下がると思います。短期的には下へバイアスがかかっています。年後半、この市場の上昇が見られるでしょう。しかし、今のところ、短期的には下降にバイアスがかかっています」と、述べている。


    ●ラリー・ウィリアムズの日経平均予測
    ⑦LW 日経平均予測 20200907.png
    出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2020年9月7日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。


    日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com/

    を参照されたい。




    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。

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