マーケットレポート

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「マーケットの最前線」

2020年8月11日

第240回「日経平均は大きなレンジ相場か?・ドル安で米国株式はどう動く!?」石原順

石原順 石原順

  • CFR(米国外交問題評議会)は『ドル覇権を放棄する時が来た』という論文を発表した

    アマゾンのジェフ・ベゾスCEOがアマゾン株を追加売却していたことが5日、米証券取引委員会(SEC)に提出された書類で明らかになった。今回、ベゾス氏はアマゾン株式100万株を31億ドル(約3270億円)余りで手放した。ご承知の通り、アマゾン株はコロナウィルスの感染が拡大する中、主力のECビジネスやAWSに対する需要を一気に取り込み、株価は年初来で7割を超える上昇を演じている。

    ベゾス氏は今年に入り、すでに41億ドル相当のアマゾン株を放出しており、今回の追加売却分を合わせると計72億ドル余りとなる。ベゾス氏は自身が手がける宇宙開発ベンチャー「ブルー・オリジン」の資金を賄うため、毎年約10億ドルに相当するアマゾン株を売却する計画を明らかにしているが、今年に入ってからの売却ペースはすでに計画の7倍を超えている。ビジネスインサーダーの記事によると、ベゾス氏は2019年には年間を通じて28億ドルの株式を売却していたとのことなので、昨年の年間売却額を大きく上回っている。

    3月のレポートにおいて、フォーチュンの記事「the great CEO exodus of 2020(CEOの大脱出2020)」及び、ゼロヘッジの記事「Why Did Hundreds Of CEOs Resign Just Before The World Started Going Absolutely Crazy?(世界がひどく狂い始める直前に、なぜ何百人ものCEOが辞任したのだろうか?)」を取り上げつつ、金融市場が高値に向かって順調に上昇していた2019年に、過去最高となる1480人のCEOが辞任し、さらには企業のインサイダーと言われる人々は株式市場が大きく暴落する直前に、数十億ドル相当の自社株を売却していたことを取り上げた。

    結果論ではあるが、企業エリートの多くは市場から退出する完璧なタイミングを知っていたようにも見える。ベゾス氏はまだ、アマゾン株5400万(1730億ドル相当)を保有している。保有株の一部ではあるものの、売却を進めていることは注目に値する。

    株式市場が高値を更新する一方、為替市場ではドル安が加速し、ここに来て、ドルの基軸通貨としての地位が揺らいでいるとする論調が聞かれ始めている。

    米国ではコロナ禍によって、事実上のベーシックインカムを導入したような形になっている。もちろん、最初は『コロナ緊急対策の一環として』である。ただ、QE1(量的緩和第一弾)も緊急対策として始まったように、この手の政策に足を踏み入れるとホテルカリフォルニア化し、2度と足抜けできなくなる可能性がある。この先、米国経済は政府支出(主に非生産的な無償の給付あるいは無益な戦争)と、FRB(米連邦準備制度理事会)の膨れ上がるバランスシートに完全に依存するようになるだろう。

    こうした「ツケの先送り」によって積みあがった借金は、いずれインフレ、富裕税、預金カット、通貨切り下げなどで減価していくだろう。今週、CFR(米国外交問題評議会)は、『ドル覇権を放棄する時が来た』という論文を発表した。1971年のニクソンショックから始まった金融実験が終わりつつあることを示唆している。

    論文には「何年もの間、アナリストは中国や他の大国が経済的または戦略的な理由でドルを放棄し、外貨準備を多様化することを決定するかもしれないと警告してきた。今日まで、世界的なドルの需要が枯渇していると考える理由はほとんどない。しかし、米国が世界の主要な準備通貨の発行体としての地位を失う可能性がある別の方法がある。国内の経済的および政治的コストが高すぎるため、自主的にドルの覇権を放棄する可能性だ。と指摘している。

    しかしながら、短期的な視点になると景色は少し異なっているようだ。マーケットウォッチの記事「What stock-market history says about a falling dollar(株式市場の歴史が語るドルの下落とは)」によると、ドル安は一般的に特に海外で収益を上げている大規模な多国籍企業を中心とした企業の株式にとってはプラスと見られていると言う。

    次のチャートは1988年以降、ドル安の場面において株式市場と各セクターのパフォーマンスを示したものである。S&P500とドルの長期的な相関関係はやや反比例になっており、ドルの下落に合わせて株式が上昇する傾向が示されている。

    情報技術や素材などの「海外からの売上高の割合が大きい」セクターの企業は、ドル安になると株価がアウトパフォームしている。対して公益セクター(ユーティリティー)や一般消費財(Consumer Discretionary)など、内需セクターは劣後している。


    ●ドルが弱い期間のパフォーマンス(青) 全期間(オレンジ)
    ①ドルが弱い期間 20200811.png
    出所:マーケットウォッチ

    また、過去のドル安時代には、米国以外の先進国株式や新興国株式がアウトパフォームする傾向があったが、これは「国際経済の見通しがより良好で、海外投資の機会がより優れていたことが一因ではないかと分析。代わりに、米国の大型株やITなどのより質の高い資産クラスやセクターとともに、市場のリーダーシップを潜在的に活用し、パンデミックの進展や次期選挙における潜在的な不確実性に対してヘッジするためには米国株へのヘッジが有効だとしている。


    ホワイトハウスへの13の鍵を手にするのはトランプかバイデンか?

    ナスダックが最高値を更新する中、トランプ大統領が再び株高について以下のようにツイートした。
    ②ホワイトハウスへの13の鍵 20200811.png

    「ナスダックは史上最高値を更新した!もし、寝ぼけたジョーが大統領になったら、あなたの仕事、株式、そして401Kを含めてすべて崩壊するだろう。中国と他の国々がわれわれを所有するだろう!」

    バイデン氏の勝利によって、市場はクラッシュする(株高はオレの手柄だ)とまくし立てている。トランプ氏が選挙に絡んだ株式市場についてツイートをするのは今回が初めてではない。先月初めには、自分が再選されない場合には、株式市場は「何もないところまで落ちるだろう」とツイートした。

    ファイブ・サーティ・エイトの直近の調査結果(8月5日現在)によると、バイデン氏への支持が増え、トランプ氏との差が広がっている。


    ●米大統領の候補者の支持率
    ③米大統領の候補者の支持率 20200811.png
    出所:ファイブ・サーティ・エイト

    1984年以降、米大統領選挙の結果を的中させ「Prediction Professor(予言教授)」のニックネームで知られる政治史学者がいる。アラン・リヒトマン氏である。彼は2020年の選挙をどう見ているのだろうか。リヒトマン氏の予測が特に注目されたのは、前回、2016年の大統領選挙において、トランプ大統領が民主党のヒラリー・クリントン氏を破って勝利することを予測したからである。

    リヒトマン氏は自身が生み出した「13 Keys to the White House(ホワイトハウスへの13の鍵)」に基づいて、当てはまる(YES)か、当てはまらない(NO)かで勝者を予測すると言うもので、これらの要因のうち「NO」が6つ以上あると現職大統領が負ける可能性が高くなると判断する。

    13の要因(鍵)は次の通りである。

    1. 政策を実施する権限が強いか?
    2. 党内での指名争いがほとんどないか?
    3. 所属している党から現職大統領が出ているか?
    4. 強力な第3党の候補者が存在しないか?
    5. 短期的な経済指標
    6. 長期的な経済指標
    7. 国家の方針に対する現政権の影響力が強いか?
    8. 社会不安がないか?
    9. 現政権にスキャンダルが無いか?
    10. 外交・軍事的失態が無いか?
    11. 外交・軍事的成功があるか?
    12. 現職大統領はカリスマ性がある国民的ヒーローか?
    13. 現職大統領に対抗する候補はカリスマ性がある国民的ヒーローか?

    11月の大統領選に向けて、サイトが開設されており、数ヶ月おきに予測が更新されている。8月6日現在では、与党共和党に当てはまらない項目(NO)が6つあり、リヒトマン氏は民主党バイデン氏の勝利を予測している。

    米国の株式市場の上昇を一貫して自分の手柄と主張し続けてきたトランプ大統領、確かに大統領就任当初の彼のビジネスフレンドリーな取り組みは、株式市場の強気派を活気づけるものであったのは間違いない。FRBのパウエルを攻撃し続け、壮大な金融緩和を断行させており、コロナの感染拡大が終息の兆しも見せていない中、米国株式市場は最高値圏を爆走している。

    しかし、株式市場の成功だけでは、米国の分断はますます深く大きくなるばかりである。JPモルガン・チェースによると、バイデン氏の勝利は株式市場にとって「ニュートラルからわずかにプラス」になると指摘している。大統領が誰になろうと、過剰流動性があれば株式市場は安泰と言うことになるのだろうか。


    ラリー・ウィリアムズの日経平均予測

    ラリー・ウィリアムズは現在の日経平均相場を、「大きなレンジ取引」と定義して、トレンドは期待できないとしている。

    「日経平均は引き続き、大きなレンジ取引で上げては下げています。この状態は● 月まで続くでしょう。しかし、コマーシャルズが買い始めています。その状況は、前回、コマーシャルズの買い強く押し上げていませんでした。しかし、大きな不安定な相場が続いています。アメリカの株式市場と違って、日経平均は高値を更新していません。そのため、大きなレンジ相場の継続で、トレンドは期待できません。仮に動き出すと下降基調になるでしょう。超短期トレーダーは日経の売りシグナルを探しましょう。●曜か●曜に●曜の安値を割ると売りシグナルとなります。」


    ●ラリー・ウィリアムズの日経平均予測
    ④LW 日経平均予測 20200811.png
    出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2020年8月11日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。



    日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』
    https://ishiharajun.wordpress.com/
    を参照されたい。




    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。




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