マーケットレポート

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「マーケットの最前線」

2020年4月27日

第226回「コロナ禍でヒト・モノ・カネの動きが止まり、1929年の世界恐慌以来の危機を迎えている」石原順

石原順 石原順

  • QEインフィニティでソ連のソーセージ工場になったウォール街

    日銀は本日4月27日に予定されている金融政策決定会合で、現在、年80兆円としている国債購入のめどを撤廃し、必要な量を制限なく買えるようにする方向で議論、企業が資金調達で発行するコマーシャルペーパー(CP)や社債については購入上限額を倍増する見込みだと言う。

    一方、WSJ紙は、FRBが州や地方の債務を購入する検討をしており、さらにはこのプログラムを中小企業だけではなく、病院や大学などの非営利団体にも提供していくと伝えた。まさにQEインフィニティ(無限大量的緩和)が拡大されつつある。

    4月20日のマーケットウォッチの報道「Warren Buffett's favorite stock-market indicator 'scares the bejeezus' out of this investor」によると、グローバルマクロモニターブログのゲイリー・エバンスは、「FRB(米連邦準備制度理事会)が4月9日にジャンク債を救済して金融市場を効果的に完全に国有化し、ウォール街はソ連のソーセージ工場になってしまった後、すべての分析はこれから出てくるものも含めて全く無意味となってしまった」と発言した。

    ゲイリー・エバンスが目にしているのは『ウォーレン・バフェットお気に入りの評価指標』であり、こんな状況においても株価は割高な水準に位置している。「失業率は大恐慌以来の最悪のレベルに向かい、ロサンゼルスの労働力の半分以上が失業しており、不確実性が依然として支配している」という状況にもかかわらず。


    ●バフェット指標(株=ウィルシャー5000の時価総額÷GDP)
    ウォーレン・バフェットのお気に入りの米国株式市場のバリュエーション(投資の価値計算)は現在も2000年のITバブルのピークの水準に位置している。黄色の帯の部分が、バフェット指標が教えてくれるバリューゾーン(投資価値の生まれる場所)
    ①バフェット指数 20200427.png
    出所:マーケットウォッチ

    米国労働省が発表した先週一週間の新規失業保険申請件数は443万件、今回を含む過去5週間をさかのぼると合計で2645万件の申請があった。これは、金融危機の2009年以降に増えた雇用数2244万人を上回っており、1ヶ月余りでこの10年の増加分を帳消しにしたことになる。

    コロナ禍でヒト・モノ・カネの動きが止まり、1929年の世界恐慌以来の危機を迎えている。この大恐慌以来といわれる未曽有の不景気に対処するためには、さらなる債務の積み増しかないとばかり、FRBはQEインフィニティ(無限大量的緩和)、トランプ米大統領は「CARES(コロナウイルス支援・救済・経済保障)法」によって、昔のソビエト連邦のような社会主義政策に踏み出した。皮肉なことに、トランプ大統領はフランクリン・ルーズベルトになってしまっているのである。バーニー・サンダース氏が民主党候補選びから撤退したのは当然だろう。 

    先日、米国のトレーダーが、「リーマンショックで監獄にいった奴は一人もいない。今度の不良債権もFED(米連邦準備制度)がQEインフィニティでみんな引き受けてくれる。だから、買うんだよ!」と言っていた。やったもん勝ち! だと。ジャンク債のゴミ箱と化してしまった連銀の政策によって、今後は企業も国家の救済政策頼みになっていく。徐々に自助努力をやめることになり、経済はダイナミズムを失っていくだろう。
    世界は国家資本主義というMMT(現代金融理論)的な政策に向かっているが、借金を返す必要がないという理論はいわゆる学者の机上の理論であり、現実には機能しない。今はとりあえず救済が優先だろう。しかし、もう足抜けできなくなった「金融政策のホテルカリフォルニア化」は、今後2~3年の歳月の中で、取り返しのつかない事態を招くだろう。


    デフォルト(債務不履行)の嵐がやってくる?

    クレディ・スイス・グループは23日の決算発表で、貸し倒れに備えて5億6800万スイス・フラン(約630億円)を引き当てたことを明らかにした。引当額はアナリスト予想の2倍以上、また資産価格下落に伴い4億4400万フランの評価損も計上し、不良債権は今後も増える可能性があるとの見通しを示した。

    ゼロヘッジの記事「"The Default Cycle Has Officially Started"(デフォルトサイクルがまさに始まった)」によると、銀行が貸倒引当金を積み増し、合計で200億ドルを超える準備金を用意しているとのこと。また、前述のようにFRBがQEインフィニティを実行しているにも関わらず、大量のデフォルトの波が起きており、数千万世帯が突然職を失い、米国経済は破綻しつつあるとしている。


    ●銀行の貸倒引当金が増加している
    ②貸倒引当金 20200427.jpg
    出所 ゼロヘッジ

    ムーディーズによると、住宅ローンを持つ米国人の30%ほど(約1500万世帯)は、米国の経済が夏の間またはそれ以降も閉鎖され続けた場合、住宅ローンの支払いが滞る可能性があると予測している。


    ●ローンの支払いをすでに停止した世帯の数が急上昇している
    ③ローン支払い停止世帯数 20200427.png
    出所 ゼロヘッジ

    同様の動きは、特に格付けの低いクレジット、つまり借金が多い企業においても起こりつつある。ムーディーズのリストでは、B3ネガティブ以下の格付けは311社と過去最高となり、サービス、石油・ガス、ゲーム、およびレストランのセクターが最も多くを占めている。2009年の信用危機と2016年4月のコモディティ関連の低迷の期間に達した前回のピーク(291社)を上回った。この急上昇は、コロナウイルスの発生、原油価格の急落、および不況の高まりの結果であり、多くのセクター、地域、市場に深刻で広範囲にわたる信用ショックをもたらしている。その影響は前例のないものである。


    ●B3以下の格付となる企業数が増加している
    ④B3以下 20200427.jpg
    出所 ゼロヘッジ

    今後の見通しについてムーディーズは次のように述べている。

    「投機的格付けに対するデフォルト予測は、2020年末に13.4%、2021年3月末までに14.4%まで上昇すると想定される。2009年の金融危機の際に記録された14.7%にほぼ匹敵する水準である。この予測は、今年上半期の世界経済の急激な落ち込みと、米国の失業率が第2四半期に8.7%に急増するという予想に基づいており、その後の3四半期で6%〜7%に落ち着くだろう」

    さらに悲観的なシナリオ(赤い線)として、ウイルスによる混乱が2021年まで続き、より広く深い経済的混乱を引き起こした場合、米国のデフォルト率は17.7%に上昇するとしている。


    ●前例のないマーケットの混乱の中、投機的格付けのデフォルト率が急上昇している
    ⑤投機的デフォルト率急上昇 20200427.jpg
    出所 ゼロヘッジ

    すでにJCペニーやニーマン・マーカスといった小売業の苦境が伝えられているほか、衛星サービス会社のインテルサットやオフショア掘削業社のダイヤモンド・オフショア・ドリリングは予定されていた利払いをスキップしたと言う。また、ギャップは、今後12カ月の事業継続に必要となる十分な資金がない恐れがあると公表した。デフォルトの大きな嵐が到来しそうだ。


    永遠に終わる「私たちが知っている資本主義」

    一部の企業は、こうした苦境を背景に政府に対して金融支援を要請している。また、FRBがQEインフィニティによって投機的格付け企業の債務も購入するほか、前述のWSJ紙の報道にあったように中小企業や病院、また非営利団体まで救うと言うことになれば、あらゆる事業体が国のお抱えとなる。

    著名投資家で億万長者のレオン・クーパーマン氏がCNBCの番組に出演し、「私たちが知っている資本主義は永遠に終わる可能性が高い」と語った。また、市場は現在のレベルではかなり高く評価されており、今後S&P 500インデックスで2200まで下がる可能性があると述べた。


    ●S&P500(日足)
    ⑥SP500日足 20200427.png

    クーパーマン氏は、コロナウイルスの経済的救済策の一環としての政府からの企業への支援が資本主義を変化させているとし、次のように述べた。

    「政府がダウンサイドにおいて企業を保護すると言うことは、政府はアップサイドにおいてその企業を規制するあらゆる権利を持つことになる」

    また、米国の政治についてはさらに左派よりの動きが強まり、誰が新たな大統領になったとしても税金は上げる必要があると述べた。そして「白い騎士」であるウォーレン・バフェット氏の動きが静かだと言うことは株式市場にとって長期的に悪い兆候だと指摘したと言う。


    ラリー・ウィリアムズの日経平均予測

    日経平均の日足を見ると、ADX(平均方向性指数)と標準偏差がともに下落中で、典型的な調整相場となっている。この局面は相場が上がっても下がってもあまり意味はない。方向性がないからだ。

    ただし、ADX(平均方向性指数)と標準偏差もともに調整が進んでおり、ここから数週間の動きで次のトレンドを模索することになろう。


    ●日経平均(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル
    ⑦日経平均日足 標準偏差VM 20200427.png

    筆者とは違って、ラリー・ウィリアムズは日経平均に強気なようだ。世界的に対策がうたれ、異次元の過剰流動性が株価を押し上げるとみているようである。

    ●ラリー・ウィリアムズの日経平均予測
    ⑧LW 日経平均予測 20200427.png
    出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2020年4月27日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。

    今週のラリーTVでは、「まだ、とても強い上昇相場の中にいて、特に日経は上昇が期待できます。これまで解説してきていますが、先週、何がおきたのか、上記のチャートをご覧ください。アキュムレーションが新高値をつけそうです。プルバックでロングすると解説しました。この先、このマーケットは上昇するでしょう。これまでのレンジを上へ抜け出して、強い上昇相場になるでしょう。問題はどこまで上がるのか?おそらく、●●,000 円だと思います。ダウと同じく日経も●●の高値圏まで試す展開になると思います。それだけ上昇が期待できる市場です。ロングを保持するか、買いシグナルを探してください」と、とても強気のコメントを発している。


    日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com/

    を参照されたい。



    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。

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