マーケットレポート

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「マーケットの最前線」

2020年4月20日

第225回「驚いたことに、まだパニックの兆候が全くみえていない」石原順

石原順 石原順

  • 「1930年代の大恐慌以来で最悪の景気後退」というIMFの見方

    国際通貨基金(IMF)は4月14日に最新の世界経済見通しを発表した。新型コロナウイルスによって経済活動が停滞し、1930年代の大恐慌以来で最悪の景気後退になるとの見方をとっている。

    株式は短期間でかなり売り込まれた。日経平均もかってないスピードで31%下げた。ところが、驚いたことに、まだ「パニックの兆候」が全くみえていない。確かに、追加証拠金の請求がいくらか発生し、投機家がいくらか一敗地にまみれた。ところが、同時に、ほとんどの投資家が回復期待から機を逃すまいと構えている。FRBが不良債権をすべて買い入れるという無限大QE(QE-INFINITY)を宣言したからだ。

    ●日経平均(日足)とフィボナッチのリトレースメント
    ①日経平均日足フィボナッチ 20200420.png
    出所:筆者作成

    株価の世界的な大暴落は、一旦は落ち着いている。しかし、30%程度の下げは通常の景気後退期の平均的な下げ率に過ぎない。次は、「2番底」という恐怖が襲ってくる確率は小さくない。この暴落相場を買い支えたのは、各国政府と中央銀行である。相場の世界でマニピュレーション(価格操作)ほど脆いものはない。米国の連銀が不良債権のゴミ箱と化すなか、もう資本主義の市場メカニズムなど誰も信じていないのである。

    『ブラックスワン』の著者であるナシーム・タレブは、3月30日のブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「新型コロナウイルス感染拡大のようなパンデミック(世界的大流行)は予見可能であった」と述べている。筆者はコロナウイルスのパンデミック相場について、そこまで言う気はないが、現在のバブル崩壊は必然なのである。2011年から10年間積み上がったバブルが、この程度の小さな修正でリセットされることはないだろう。


    「QE-INFINITY(無限大QE)」で半値戻しを達成

    米国では、「そろそろ新型コロナウイルスの感染者数もピークアウトするのではないか?」という思惑と、FRBの無限大介入で、足元のNYダウは下げ幅の半値戻しを達成した。米国株の派生商品といわれる日本市場の日経平均もそれに連動した。しかし、ここからさらに戻すことが出来るのか、正念場に差し掛かっているといえよう。


    ●NYダウ(日足)とフィボナッチのリトレースメント
    ②NYダウ日足フィボナッチ 20200420.png
    出所:筆者作成

    このチャートにあるようにNYダウは前回の高値から3割余り下落し、その安値から50%戻してきている。相場の格言では「半値戻しは全値戻し」と言われるが、こうした上昇を見て「弱気市場」が終わったと考え、市場に戻ってくる投資家もいるかもしれない。しかし、ウイルスによる影響は短期的には終息しない。


    ●モルガンスタンレーは12月に2番目のコロナウイルスのピークがくると予想
    ③モルガンコロナピーク 20200420.png
    出所:ゼロヘッジ

    以下のチャートは銀行の超過準備金とS&P500の推移を示したものである。2010年代、金融危機に伴い行われたQE1とQE2の結果として、あふれかえった流動性によって株式市場は上昇した。2014年頃には、バーナンキが「財政の崖」に対応すべくQE3を実施、株価の上昇に弾みがついた。

    さらに、2016年以降、BOE, ECB, BOJだけでなくスイスの中央銀行も量的緩和を行い、世界的にQEのオーバードライブの領域に入っていく。株価は米中の関税の問題などを経て、2020年まで長きにわたって上昇し続けてきた。そして今や、なんでもありの「QE-INFINITY(無限大のQE)」によって、半値戻しを達成した。

    ●銀行の超過準備金とS&P500の推移(青:超過準備金  オレンジ:S&P500指数)
    ④銀行の超過準備金 20200420.png
    出所:REAL INVESTMENT ADVICE

    FRBは、第二の「金融危機」を食い止めるために、大規模なQE、つまり「QE-INFINITY(無限大のQE)」を断行しており、それによって銀行の過剰準備金が積み上がっている。銀行に流れ込んだこの過剰流動性は本来の貸し出し等には回らず、資産市場にあふれ出している。このため、市場は現在、流動性のフラッシュによるラリーが演出されている。しかし、企業業績というファンダメンタルズを伴わない相場は、早かれ遅かれラリー疲れをしてしまう可能性が高いだろう。これから、株価は経済ダメージの深刻さ、収益の大幅な減少など、様々なマイナス要素を株価に織り込んでいく可能性が高い。ではどんなマイナス要素なのか。次に見ていこう。


    2008年との比較から考える2020年相場

    現在の下げ相場は1929年型なのか、あるいは1987年型なのかということが注目されているが、ゼロヘッジの記事「Market Completes A 50% "Bear Market" Retracement(市場は"弱気相場"の50%の理とレースメントを完了)」で2008年との比較がなされていた。一部抜粋してご紹介しよう。

    ウイルスによる「経済停止」の影響は、いくつかの理由で2008年以上に悪化するだろうとしている。その理由は次の通りである。

    ●2008年には、経済はすでに減速し、失業率はすでに上昇しており、企業は収益に対する影響に合わせて調整をし始めていた。また、住宅ローン市場で引き起こされた「危機」にもかかわらず、企業や消費者活動は「オープン」のままだった。 不動産業界や金融業界以外では、他の多くのセクターはわずかに影響を受けただけだった。

    ●2020年は多くの企業が準備できていな不意を突いて経済のシャッターが突然下された。自ら起こしたのではないビジネスの「シャットダウン」に対する準備ができていなかった。

    ●2020年には、失業率の急増とビジネスのシャットダウンが相まって、経済における総消費は2008年よりも実質的に深い影響を受けるだろう。

    ●2008年とは対照的に、破たんする企業が多くあり、ほとんどの企業の回復は非常に遅く、残りは需要が戻るまで再雇用するのが非常に遅くなる。


    ●リーマンとCOVID19の時のS&P500の推移
    (オレンジ:リーマン 左目盛り  COVID19:青 右目盛)
    ⑤リーマン COVID19 SP500 20200420.png
    出所:REAL INVESTMENT ADVICE

    2008年を振り返ってみると、ベア・スターンズの破たんによって、FRBはすでに3月上旬から銀行の救済を始めていた。積極的な金利の引き下げを行い、当時、5.25%の金利引き下げを断行した。(現在の利下げ幅はわずか1.5%)ベア・スターンズ後、市場は一時的に反発し、その直後に新たな高値を記録するが、その一方で、経済危機は依然として存在していた。

    それから最大の落ち込みは約半年後の2008年9月に起こった。重要なのは、リーマン・ブラザーズの破たん後、財政政策や銀行支援プログラムなどの基本政策を通じて、政府が積極的に介入し、市場は10月下旬の安値から20%近く反発し、市場は短期的には買われ過ぎの状態となった。その後、失業率が急上昇し、消費と投資が縮小、企業の収益が直近のピークから半減するなど、経済荒廃という現実が目の前で展開され始め、FRBが量的緩和の第1ラウンドを開始するまで、市場は11月下旬に26%下落した。

    現在の市場が直面することになる経済荒廃であるマイナス要素はどんなことなのか?記事によると市場はまだこの荒廃を価格に盛り込んでいないと言う。

    A complete shutdown of the economy.
    経済の完全閉鎖

    15-million jobless claims in 3-weeks
    3週間の1500万人の失業保険申請

    20%+ unemployment
    20%超の失業

    20-25% negative GDP growth
    GDPの20-25%の縮小

    30% of mortgages in forbearance
    30%の住宅ローンの延滞

    A dramatic drop in both personal and corporate consumption
    個人消費と企業消費の劇的な減少

    A massive reduction in capital expenditures and private investment
    設備投資と民間投資の大幅な削減

    A crushing of consumer and business confidence
    消費者と企業の信頼感の破砕

    A depletion of consumer and corporate savings
    消費者と企業の貯蓄の枯渇

    さらに重要なことは、市場は企業収益への影響がものすごく少ないと見ていることである2019年第4四半期の結果をまだ参考にしている。

    Q1-20 earnings are expected to only decline by 2.36%
    2020年第1四半期の利益は2.36%の減少に過ぎないと予想

    Q4-20 earnings will decline just 2.71%, and;
    2020年第4四半期の収益はわずか2.71%減少

    Q4-21 earnings are expected to surge by 19.62%
    2020年第4四半期の利益は19.62%増加する見込み

    このような「見込み」の減少の少なさは経済的な弱さと整合していない。これから荒廃は起こりつつあるし、続くだろう。さらに、一株利益を支え株価上昇の大きな要因となった自社株買いは終わってしまった。


    ラリー・ウィリアムズの日経平均予測

    ラリーは日経平均に強気である。彼のフォーキャストラインは上昇基調で、少し下げてから月末にプルバックしている。「日経は引き続き値をあげて行くと思うが、それでもプロテクションが必要で、トレーリングストップは●週の安値か●月末の安値におくべきです。まだ上げ基調で、調整局面は少し後で訪れるでしょう」と述べている。


    ●ラリー・ウィリアムズの日経平均予測
    ⑥LW日経平均予測 20200420.png
    出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2020年4月20日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。



    日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com/

    を参照されたい。




    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。

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