マーケットレポート

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「マーケットの最前線」

2020年4月 6日

第223回「どれだけのキャッシュを持っていたとしても買いに入るならそれを5つに分割すべきだ」石原順

石原順 石原順

  • CEO信頼感指数はすでに経済と雇用の腰折れを示していた?

    新規失業保険申請件数が再び急増した。2日の米労働省の発表によると、先週の新規失業保険申請件数は665万件と前週の2倍余りに増加し、市場予想の376万件を大幅に上回った。米国においてはロックダウンの影響により、店舗やレストランなどが一時的なクローズに追い込まれている。現在、人口の約8割が自宅待機状態にあると言う。

    ダラス連銀のカプラン総裁は、CNBCとのインタビューで、米国の失業率が2月の3.5%から10%前半から半ばに急速に悪化する恐れがあると予想し、コロナウイルスの感染拡大防止に向けた外出制限措置によって大きな影響を被っているサービス部門が危機を脱するのは「一段と困難」になるとの見通しを示した。

    改めて雇用情勢には注目しておきたい。なぜ、雇用が重要なのか。高い失業率によって消費者からの需要が不足すれば、その需要縮小によって生産者は防御的に生産を減らす行動をとる。そうした行動が積み重なることによって経済は不況のサイクルへと入っていく。さらに消費が鈍化し、景気後退が定着すれば、より多くの企業がレイオフの実施を余儀なくされる。米国経済の7割を占める消費に影響を与えるのである。

    過去を振り返ると失業保険申請件数が歴史的に低い水準にあるところからピークアウトして増加に転じるとリセッション入りとなっていたことが分かる。直近では、新規失業保険申請件数の4週平均がリセッション警告となる28万を割り込んでいた(申請件数が減少しており低水準にあった)が、そこから一気に増加している。前回、そして今回の数字を織り込めば、さらに4週平均の件数は増加することになる。一方、フルタイム雇用の割合は50%を超えていたところが、46%程度まで急低下している。


    ●フルタイム雇用の割合と新規失業保険申請件数
    オレンジ:人口に対するフルタイム雇用の割合(左目盛) グレー:失業保険申請件数の4週平均(右目盛)
    ①フルタイム雇用と新規失業保険申請.png
    出所 ゼロヘッジ

    今回、コロナウイルスの感染拡大を防ごうと防御的に外出規制を行なっている関係で、歴史的な水準まで失業保険の申請件数が増加している。米国においては、企業はすぐにレイオフして失業保険を申請させる。その一方で、失業者も保険で一時しのぎをすることには慣れている面はあるが、リセッション入りにつながる雇用情勢の悪化はコロナウイルス以前から予想されていた。

    雇用情勢の悪化に先行する指標がある。米カンファレンスボードが発表するCEO信頼感指数である。CEO信頼感指数は43を割り込むとリセッションを示唆するとされている。過去1980年や1990年、さらには2000年10月には30近辺まで低下し、その後、失業保険申請件数が急増すると言うサイクルを繰り返している。また2008年10月には20台まで低下し、そのタイミングで失業保険申請件数が大幅に増加している。

    すでに2019年7月の時点でCEO信頼感指数は40を割り込み、30近辺まで低下しており、1990年と同程度まで落ち込んでいた。昨年の時点からリセッションに対する懸念を企業のトップレベルの人々は持っていたと言うことになる。


    ●CEO信頼感指数と失業保険申請件数
    オレンジ:CEO信頼感指数(左目盛)  紺:失業保険申請件数(右目盛)
    ②CEO信頼指数と失業 20200406.png
    出所 ゼロヘッジ

    今後、失業の増加に伴って、個人消費支出の減少が企業の収益にさらなる圧力をかけると、経済は悪いスパイラルに入っていく。利益の低下はさらなる失業の増加につながる。コロナウイルスに端を発した経済の混乱は実はそれ以前に始まっていたが、コロナウイルスの感染拡大と言うブラックスワンによって予想以上にはるかに長く続き、はるかに深刻になるだろう。


    借金漬けによる成長の鈍化、ジャパナイゼーションに陥る世界

    FRBは引き続き金融危機よりも大きな経済的なショックを相殺するための戦いを行っており、その目的を達成するために、武器となるすべての可能な金融ツールを利用するとしている。FRBをはじめとした中央銀行は今や「銀行に対する最後の貸し手」ではなく、より広範な経済に対する貸し手となっている。

    FRBのバランスシートは過去最高の5.5兆ドルに達し(3月25日現在)、ジェフリー・ガンドラックは、「おそらく米国の経済・金融刺激策は10兆ドル(約1074兆円)規模に達し、米国の債務が急拡大する中でドルは下落する可能性が高い」との見通しを語った。現在のQEの急増は、確かに別のバブルの膨張に成功するかもしれないが、経済活動を刺激するために将来の消費を引き続き前進させる能力には限界がある。


    ●連銀のバランスシート
    ③連銀バランスシート 20200406.png
    出所:ゼロヘッジ

    1980年代、レーガン政権とブッシュ(父)政権時代、米国経済は赤字を大幅に拡大して、経済の浮揚を模索したものの、経済成長率は8〜6%程度にとどまり、過去のような急成長は望めなくなった。クリントン時代には7%程度で安定しており、その後、2008年の金融危機を境に負債の全体的な増加が経済成長の伸びを奪うレベルまで急上昇した。

    米国は赤字を拡大し、経済をなんとか維持しようとしているが、現在、経済成長率は記録的な低水準にある。負債がさらに増加することによって、より多くの資金が未来へ向けた生産的投資から負債サービスや社会福祉へと転用され続けている。GDPの2倍の政府債務を抱える日本と同様の現象が起きているのである。

    米国において1ドルの経済成長を生み出すには、約3ドルの借金が必要だと言う。債務が急増する中、経済成長の崩壊をなんとか押し留めるためには、このコストは今後、5ドル以上に上昇する。つまり、借金がなければ、経済成長もない世の中になってしまったのである。


    ●GDPに対する債務の割合と経済成長
    赤:GDPに対する連邦債務の割合(右目盛)  青:GDP成長率(左目盛)
    ④GDP債務割合 20200406.png
    出所 ゼロヘッジ

    ●証拠金債務(レバレッジ)、株式、ジャンク債の関係
    オレンジ S&P500 紫:証拠金債務(レバレッジ)  青:ジャンク債のイールド
    ⑤証拠金債務 20200406.png
    出所:ゼロヘッジ


    一つ確かなことは、FRBはもう二度と金利を上げたり、金融政策を引き締めたりすることは出来ない。世界の中央銀行は、長年の金融支援を通じて投資家の自己満足感を拡大させた一方、潜在的なリスクに対しては意図して盲目的にさせてきたのである。まさに、世界が避けようとしていたジャパナイゼーション(日本化)に陥っている。


    「誰も市場の正確な底をつかむことは出来ない」エラリアン氏

    アリアンツの主任経済顧問であるエラリアン氏は現在の相場について、「市場はまだ下降トレンドなので買いにははいらない」と指摘した。一方で、ポートフォリオを拡大したい投資家に対しては、「どれだけのキャッシュを持っていたとしても5つにそれを分割すべきだ。」数ヶ月にわたる市場におけるドルコスト平均を提案した。

    ドルコスト平均戦略については「あまり先端的な手法ではない」という人がいることは知っているとした上で、「しかし誰も今後どう動くはわからないと思う。今まで見たことがないからだ。」と。そして誰も市場の正確な底をつかむことはできないと付け加えた。

    投資家に対して「全てを売る」時は過ぎ去ったとしたものの、しか全てが晴れたという時期には達していないと。「もし全てが晴れたと思うのなら、インデックス買いが良い。しかしそうはまだなっていないと思う」

    さらには、内部留保がない、もしくは少ない会社、キャッシュフローがかなりマイナスで負債の償還が迫っている会社もしくは社債については「売り」推奨をした。「高収益社債をやっているにしても、株をやっているにしても、もし信用度の低い企業を追っているとすれば気をつけるべきだ。」と彼は注意を促した。

    CNBC「El-Erian says he wouldn't buy into market yet, but offers a plan for those who feel they must(エラリアン:まだ「買い」で市場に入らない。しかしもし入りたい人がいればプランのオファーはする。)」

    米国で大手シェールオイルメーカーであるWhiting Petroleum社の破たんが伝えられた。2億6200万ドル(約282億円)相当の債務不履行が明らかになったと言う。エラリアンの指摘するように信用度の低い企業には注意が必要だ。こうした企業の破たんはまだ始まったばかり。今後、連鎖的な破たん懸念はますます高まるだろう。


    ラリー・ウィリアムズのNYダウと日経平均予測

    米著名投資家のラリー・ウィリアムズは4月4日に収録されたラリー・TVで、「NYダウやS&P500は来週以降反発する可能性があり、日経平均も同様にみているようだ。この分析はファンダメンタルズを一切考慮せず、彼の使っているフォーキャストライン(予測先行指標)に基づいた予測である。


    ●ラリー・ウィリアムズのNYダウ予測
    ⑥LW NYダウ予想 20200406.png
    出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2020年4月6日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。有料レポートのため、チャートおよび文章の一部を隠しています。

    ●ラリー・ウィリアムズの日経平均予測
    ⑦LW 日経平均予想 20200406.png
    出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2020年4月6日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。有料レポートのため、チャートおよび文章の一部を隠しています。



    日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com/

    を参照されたい。




    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。




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