マーケットレポート

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「マーケットの最前線」

2020年3月30日

第222回「相場はファーストイン・ファーストアウト!企業のCEOは売り時を知っていた?」石原順

石原順 石原順

  • 126ヶ月に及ぶ最長拡大から一転、急速に逆回転を起こす米国経済

    米国の失業者数がスカイロケットのように急上昇している。26日に米労働省が発表した前週(21日終了週)の新規失業保険申請件数は、前週比300万1000件増加の328万3000件と過去最高となった。コロナウィルス感染拡大を避けるために経済活動を停止させることによって一気にレイオフが増えた。

    2008年と1980年の景気後退期における申請件数は4週間合計でそれぞれ200万程度であったことを考えると、今回のコロナウィルスのショックでは、以前の収縮時に比べ圧倒的に短い期間で労働市場が急速に悪化していることがわかる。これまで最終的には雇用が重要な指標となると指摘してきたが、史上最長の経済成長拡大期から一転、急速に逆回転を起こしている。


    ●米新規失業保険失業件数はコロナウィルスの感染が拡大する中、急増加している
    ①米失業件数とコロナ.png
    出所 ヤフーファイナンス

    ●過去の景気拡大期の平均は42ヶ月、今回は126ヶ月
    ②過去の景気拡大期 20200330.png
    出所 Real Investment Management

    では、経済回復期の後に続く市場の収縮(調整)はどの程度になるのだろうか。収縮(調整)期間の平均市場下落率はマイナス29.13%、そのうち、トップ7の経済回復の後におきた市場の収縮(調整)は平均でマイナス36%であった。


    ●景気拡大期の長さ(月数)とそれに続くマーケットの調整(%)
    ③景気の長さとマーケット調整 2020330.png
    出所 Real Investment Management

    S&P500指数は3380台まで上昇した。それにマイナス36%を当てはめると2163、さらに1920年代の最大の調整率である約80%を当てはめると676となる。


    Dr. Doom(終末博士)が輝く弱気相場

    このS&P500が最高値から5分の1となる676まで下落すると言う指摘は大袈裟なのだろうか。ダウ平均の史上最高値が29,500とすると、80%の下落は5900ドルとなる。

    前回のレポートで、現在の米国株の動きと1929年の動きが似ているとするチャートをご紹介した。1929年当時、大幅調整の後、いったん反発する局面もあったが、元の高値の水準には到底及ばず、結局、下値を切り下げながら、大幅に下落することになる。350近辺が高値で最終的に約50まで下落している。下落率は85%、7分の1まで下落している。S&Pで676、ダウで5900は決してありえない話ではなさそうだ。


    ●NYダウの1929年と2020年のアナログモデル
    ④アナログモデル 20200330.jpg
    出所 ゼロヘッジ

    Dr. Doom(終末博士)として名高い経済学者のヌリエル・ルビーニ氏がプロジェクト・シンジケートに「A Greater Depression?(大恐慌以上になるのか?)」と題する論文を寄稿した。米政府が2兆ドル規模の景気刺激策を実施するほか、G20首脳はテレビ会議を開催し、各国の対策を通じて世界経済に5兆ドルを供給すると発表した。危機における政府の役割は重要であり、しかも過去の経験から、その対策は迅速にそして大胆に打ち出すことが求められると考えられている。しかし、今回は最終的に財政ファイナンスに追い込まれると指摘している。

    COVID-19からの世界経済へのショックは、2008年の世界金融危機(GFC)、さらには大恐慌よりも速く、より深刻だ。過去2回の危機の時には株式市場は50%以上崩壊し、信用市場は凍結し、大規模な倒産が続き、失業率は10%を超えて急上昇し、GDPは年率10%以上で縮小した。しかし、これらが起こるには約3年かかった。しかし、今回の危機では同様に悲惨なマクロ経済と財務の悪化が3週間で起きた。

    総需要の全ての要素(消費、資本支出、輸出)は、かつてないほどひどく落ちている。金融市場と実体経済が急落する垂直線のように見える。大恐慌と第二次世界大戦の間でさえ、今日の中国、米国、ヨーロッパのように、経済活動の大部分が文字通り閉鎖されることはなかった。

    今後についての最良のシナリオは、GFCよりも深刻な景気後退(累積累積グローバル生産量の減少)である。それはその景気後退の寿命が短く、今年第4四半期までにはプラス成長に回帰するというものだ。その場合、トンネルの向こう側に光が現れると市場は回復し始める。

    しかし、最良のシナリオにはいくつかの条件を想定している。

    第一に、米国、欧州、その他の大きな影響を受ける経済は広くCOVID-19の試験、追跡、治療措置、強制検疫、中国が実施したような本格的なロックダウンを展開する必要がある。また、ワクチンが大規模に開発され、生産されるには18ヶ月かかるであろう。抗ウイルス薬やその他の治療薬を大規模に広げていく必要がある。

    第二に、GFCの後に3年かかったことを1ヶ月以内で実行している金融政策立案者は、危機時に型破りな政策を実施する必要がある。つまり、ゼロまたはマイナス金利、フォワードガイダンスを強化、銀行、ノンバンク、マネーマーケットファンド、そして大企業の最後の救済者として信用市場を緩和させるということだ。FRBは、世界市場における巨額のドル流動性不足に対処するために国境を越えたスワップラインを拡大したが、銀行は中小企業への貸し出しを奨励するためのより仕組みが必要だ。

    第三に、政府は、家計への直接現金支払いの「ヘリコプター落下(マネー)」を含む大規模な財政刺激策を展開する必要がある。ショックの規模を考えると、先進国の財政赤字はGDPの2~3%から約10%以上に増加するだろう。民間部門の崩壊を防ぐのに十分な大きさのバランスシートを持っているのは中央政府だけだ。

    しかし、これらの赤字資金による介入は完全にマネタイゼーションされるべきだ。もしその介入が標準の政府債務で資金を調達されれば、金利は急激に上昇し、回復は揺りかごの中で押しつぶされるだろう。状況を考えると、ヘリコプターマネーを含む現代通貨理論を信奉する左翼主義者に長く提案された介入が主流となるだろう。

    残念ながら、最良のシナリオでは、先進国の公衆衛生対応はパンデミックを封じ込めるために必要なものにはるかに及ばず、現在議論されている財政政策パッケージはタイムリーな回復のための条件には量もスピードも及ばない。したがって、新しい大恐慌が昔の大恐慌よりも悪くなるリスクは高い - そして日に日に上昇している。

    パンデミックが止まらない限り、世界中の経済と市場は自由落下を続けるだろう。しかし、パンデミックが多かれ少なかれ封じ込められても、全体的な成長は2020年末までに戻らないかもしれない。結局のところ、それまでに、別のウイルスシーズンでは新しい突然変異で始まる可能性が非常に高い。多くの人が期待している新しい治療法は期待よりも効果が低い場合がある。したがって、経済は再び縮小し、市場は再び暴落する。

    さらに、巨額赤字解消によって高インフレを生み出し、特にウイルスによるマイナスの供給ショックが潜在的な成長を減らすとすれば、財政対応は壁に突き当たる可能性がある。そして、多くの国は、単に自分の通貨でそうした借入を賄うことができない。新興市場の政府、企業、銀行、家計を誰が救済するのだろうか?

    プロジェクト・シンジケート 2020年3月24日「A Greater Depression?(よりひどい大恐慌になるのか?)」


    なぜ、多くのCEOが史上最高の経済活況の中、会社を去ったのか?

    人生においても相場においてもタイミングがすべてであり、時には単に幸運に恵まれることもあろう。しかし、企業のエリートにカテゴライズされる人の中で、あまりに多くの人が同時に「幸運」に恵まれるのは奇妙ではないだろうか。金融市場が高値に向かって順調に上昇して2019年、過去最高となる1480人のCEOが辞任し、さらには企業のインサイダーと言われる人々は株式市場が崩壊する直前に、数十億ドル相当の自社株を売却していた。

    フォーチュンの「the great CEO exodus of 2020(CEOの大脱出2020)」及び、ゼロヘッジの記事「Why Did Hundreds Of CEOs Resign Just Before The World Started Going Absolutely Crazy?(世界がひどく狂い始める直前に、なぜ何百人ものCEOが辞任したのだろうか?)」から引用してご紹介する。

    NBCニュースが発表したデータによると、去年1月から10月末までに1,332人以上が辞任したと言う。不況の真只中においては、企業のCEOが追われるように会社を後にするのは珍しいことではないかもしれないが、企業収益が順調に伸び、株式市場が記録的な高値となる中で、このように多くのエグゼクティブが辞任したことは注目に値するだろう。

    世界経済が減速しているという兆候はいくらでもあったが、株式市場が高値を追い続ける中、多くの専門家が景気後退の後ズレを予測するなど、差し迫った景気後退は予想されていなかった。それなのになぜ多くのCEOが同じようなタイミングで次に進む時がきだと判断したのであろうか。

    以下は、2019年に退任することを選択したビッグネームのCEOたちの一部である。もちろん退任せざるを得ないそれぞれ個別の事情が浮上したケースもあるが、ボーイング、ユナイテッドエアライン、ギャップ、マクドナルド、ベストバイ、ナイキなど、現在、コロナウィルスの影響をもろに受けている企業のトップも少なくない。

    •Boeing -- Dennis Muilenburg
    •United Airlines -- Oscar Munoz
    •Alphabet -- Larry Page 
    •Gap -- Art Peck 
    •McDonald's -- Steve Easterbrook 
    •Wells Fargo -- Tim Sloan 
    •Under Armour -- Kevin Plank 
    •PG&E -- Geisha Williams
    •Kraft Heinz -- Bernardo Hees
    •HP -- Dion Weisler
    •Warner Bros. -- Kevin Tsujihara
    •Best Buy -- Hubert Joly
    •New York Post -- Jesse Angelo
    •Colgate-Palmolive -- Ian Cook
    •MetLife -- Steven Kandarian
    •eBay -- Devin Wenig
    •Nike -- Mark Parker

    CEOの大量流出は2019年で終わったわけではない。2020年1月と2月にそれぞれ約200人が職を離れており、年初から合計すると前回の金融危機時におけるエグゼクティブ辞任数を上回っている。
    2020年に辞任した有名CEOの一部である。

    •Bob Iger, CEO of Disney
    •Ginni Rometty, CEO of IBM
    •Matt Levatich, Harley-Davidson CEO
    •John Legere, T-Mobile's CEO
    •Jeff Weiner, LinkedIn CEO
    •Ajay Banga, Mastercard CEO
    •Keith Block, co-CEO of Salesforce
    •Tidjane Thiam, CEO of Credit Suisse
    •Randy Freer, Hulu CEO

    さらに、ウォールストリートジャーナルによると、企業トップたちは、市場が完全に落ち込む直前に、数十億ドル相当の自社株を売却していたと言う。結果論ではあろうが、企業エリートの多くは市場退出の完璧なタイミングを知っていたように見える。おそらく、彼らは本当に幸運だったのかもしれない。いずれにせよ、手遅れになる前に株式を売却できた人にとってはうまくいったということである。

    決して彼らを批判しているわけではない。ここで共有したいのは、相場は「ファーストイン・ファーストアウト」であると言うこと。最後まで相場に付き合っていてはいけないのである。相場は常にバブルとその崩壊を繰り返している。それでも儲けたいという欲望から、投資家は最後まで相場と付き合ってしまうことになる。バブルだとわかっていても、売った後に相場が上昇するとたまらず買ってしまい、高値づかみをして、結局は安値で投げさせられ大きな損失を出してしまう。大きな損失を出せば、その後の投資効率は大きく下がってしまう。相場とはそういうことの繰り返しだ。幸運を手にするには彼ら企業CEOのように人よりも先に相場から降りることである。


    NYダウと日経平均のテクニカル分析

    NYダウも日経平均も日足をみると強い売りトレンドはいったん収束した格好となっている。標準偏差ボラティリティとADXがピークアウト(天井をつけ下落)すると、トレンド期とは逆方向にバイアスがかかった乱高下相場」となりやすい。現在の高いボラティリティレベル環境ではレバレッジを上げないこと。即刻、市場から退場になる可能性がある。ジェットコースター相場に参戦するなら、資産管理を徹底されたい。現状、売買するなら株価インデックスのETFがよいだろう。


    ●NYダウ(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル
    標準偏差ボラティリティが低い位置から上昇する場合は、相場が保ち合いを離れ強い方向性をもつシグナルとなる。一方、標準偏差ボラティリティとADXがピークアウト(天井をつけ下落)すると、トレンド期とは逆方向にバイアスがかかった乱高下相場となりやすい。
    上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
    下段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(緑)
    ⑤NYダウ日足 標準偏差VM 20200330.png

    ●日経平均(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル
    標準偏差ボラティリティが低い位置から上昇する場合は、相場が保ち合いを離れ強い方向性をもつシグナルとなる。一方、標準偏差ボラティリティとADXがピークアウト(天井をつけ下落)すると、トレンド期とは逆方向にバイアスがかかった乱高下相場となりやすい。
    上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
    下段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(緑)
    ⑥日経平均日足 標準偏差VM 20200330.png

    「株式市場」は「経済」ではない。世界の景気実態を正確に反映しているのは株式市場ではなく原油市場であり、いくらPKOを入れても最終的には原油市場が株価の先行指標となるだろう。


    ●NY原油先物(赤)VSNYダウ(青)
    ⑦原油VSダウ 20200330.png



    日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』
    https://ishiharajun.wordpress.com/
    を参照されたい。



    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。


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