マーケットレポート

プロの視点からわかりやすいレポートを提供します。

「マーケットの最前線」

2019年12月 9日

第206回「ラリー・ウィリアムズの日米株式市場予測」石原順

石原順 石原順

  • 米中の問題はささいなこと!?シーズナリーサイクルから見るNYダウ

    米国株式市場は引き続き、米中の貿易合意をめぐるヘッドラインをきっかけに大きく下げたり上げたりしている。先日は、米中貿易交渉の合意が2020年に後ずれする可能性についてトランプ大統領が発言し、大幅な調整がもたらされることころがあった。しかし米中の問題は結局、後講釈に過ぎない。過去20年のNYダウの平均的な季節変動を確認すれば分かるように、この時期は感謝祭ラリーの後の反動で米国株市場が下げやすい時期なのである。

    ●NYダウのシーズナリーサイクル
    ①NYダウシーズナリーサイクル 20191209.png
    出所:エクイティクロック

    そもそも米中の貿易合意は株式市場にとってそれほど重要な問題なのか。米CNBCの人気投資番組「マッドマネー」の司会者ジム・クレーマーは「貿易戦争が本当に重要だったら、ダウ平均が何度も最高値を記録することはなかっただろう。交渉は緊張しているかもしれないが、中国の問題はほとんどの人が気づいているように思うよりはるかに小さい」とコメントしている。まるでプロレスラーのような風貌のジム・クレーマーは元ヘッジファンドマネージャーでCNBCの人気コメンテーターとして活躍している。

    彼によると株式市場を取り巻く明るい環境として、以下の5点を指摘している。
    ① 米国経済の大部分はサービス指向であり「完全雇用にかなり近い」。
    ② 貿易戦争は、デジタル化と医療分野における革新という「強力かつ長期的傾向」に影響を与えない。
    ③ 関税が債券価格の上昇を引き起こし、利回りが低下するため、高配当株への投資が増加する。
    ④ クレイマーが「WATCH*」として注目している小売業者は、サプライヤーに対する価格交渉力がある。
    *WA=ウォルマート, T=ターゲット, C=コストコ, H=ホームデポ
    ⑤ インデックスは工業株への依存度が低いため、「考えているほど関税による影響はない」

    ジム・クレーマーは日本によくいるタイプの万年強気のコメンテーターである。米中の問題で不安を持っている大衆投資家にとってはいつも耳障りのいい発言をしてくれる存在だ。
    FRBが「QEではないQE」を実施して以来、米国の株式市場はファンダメンタルズとはかい離したところにまで浮上する金融相場となっている。この金融相場はPOMOが続く来年1月までは継続するものと想定されている。

    好調だった労働市場にも変調の兆し

    しかし、これまで好調を維持していた経済指標にも陰りが見え始めている。ISM製造業景況感指数だけではなく、頼みの綱だったISM非製造業も市場予想を下回った。また、これまでほぼ完全雇用を達成していた雇用情勢にも変調の兆しが見られつつある。現在のマーケットを支える好調なファンダメンタルズは唯一、個人消費である。年末商戦の皮切りとなるブラックフライデーやサイバーマンデーの売上げはオンラインを中心に堅調を維持している。

    今後、もし完全雇用状態で改善余地のほとんどない雇用情勢が変化し、それが賃金に影響し、消費に影響すると言う流れが起こった場合、経済を支える重要な背骨が揺らぐことになる。また、米国の完全雇用であるが、中身を見てみると雇用の質は決していいとは言えない。

    ゼロヘッジの記事(Mauldin: America's "Full Employment" Hides A Dirty Secretモールディン:アメリカの「完全雇用」は醜い秘密を隠す)によると「いわゆるギグ経済で働く若者は増えており、複数のパートタイムの仕事をしている人の数は増えている。そして、パートタイムの仕事は一般的に高給の仕事ではない。おそらく身体的に問題なければ、どんな仕事でも得ることができるが、仕事があったとしても、それで本人と家族を養うのは昔に比べて難しくなっている。1990年から2018年の間に、低賃金/低時間の仕事と高賃金/高時間の仕事の間のインフレ調整後の賃金格差はほぼ4倍に拡大した。」と指摘されている。

    ●インフレ調整後の「質の高い仕事」と「質の低い仕事」の週ごとの賃金
    ②インフレ調整後の賃金 20191209.png
    出所:ゼロヘッジ


    FRBのシングル・マンデート「株価の維持」?

    「金融政策は『ホテルカリフォルニア化』するリスクがあった。いつでもチェックアウトできるが決してホテルを去ることはできないという、イーグルスのヒット曲だ」という発言をしたのは、フィッシャー元ダラス連銀総裁だが、FRB(米連邦準備制度理事会)の2019年の金融政策の転換は、金融政策が完全にホテルカリフォルニア化している証左であろう。

    中央銀行の金融政策は昨今、薬物中毒に例えられるように、もう金融緩和依存をやめられないのである。したがって、現在の金融緩和は金融システム全体が破綻するまでは続けることができるし、資産価格もそれにつれて上昇しうる。

    ●FEDの総資産
    ③FEDの総資産 20191209.png
    出所:セントルイス地区連銀

    今年のエイプリールフールに、FRBの「株価の維持」というシングル・マンデート(単一の、委任された責務・権限)姿勢を揶揄した「The Fed Guarantees No Recession For 10 Years, Permanent Uptrend For Stocks & Housing(連銀が今後10年リセッションは起こらないと保証、永続的に上昇する株式市場と住宅市場)」(ゼロヘッジ)というブラックジョーク的な記事が掲載されたが、いまやこれが冗談ではなくなってきている。このコラムには、「これから10年、株式市場はリセッションも下落もないと連銀が保証、S&Pは5,600まで上昇する」と書かれている。


    ●これから10年、株式市場はリセッションも下落もないと連銀が保証、S&Pは5,600まで上昇する!
    ④株式市場 20191209.png
    出所:ゼロヘッジ

    このコラムの記事は以下の一文で締めくくられている。

    "This is an April Fool's Day whimsy. But how far it is from what the Fed elites actually believe is unknown."
    「この記事はちょっとしたエイプリールフールの気まぐれである。しかし、連銀のエリートたちが本当に信じていることからどれほどかけ離れているかは知る由もない。」


    筆者は安易な空売りの提案を控えている

    米国が現在目指している政策は、「短期金利の上昇+長期金利の低下」なのかも知れない。「強いドル」とは結果の話であって、「短期金利の上昇と長期金利の低下」こそが、現在の米国の国益なのだ。短期金利を高くして世界から資本を呼び込み、長期金利を低くして、集めた資本を民間に回す(住宅や設備投資を活発化させ景気を維持していく)ことで、バブルの延命を目指している可能性がある。

    米国の財政は金利が上昇すると赤字が増える構造となっているが、これが現在、実にうまくコントロールされている。現在のような国防費の増大と減税路線という積極財政が維持されているのは、不足分が米国債発行で補われているからだが、国債発行枠内でそれを可能にしているのは、長期金利が低いからなのだ。

    現在世界中で横行している政治家と金融当局の市場介入によって、債務(借金)が前例のない規模に膨れ上がっている。しかし、筆者は安易な空売りの提案を控えている。「まだ、インフレになっていない」からだ。

    この過剰流動性相場の終わりのシグナルはインフレだ。政策金利が上がるだけでは、株価は暴落しない。株価が暴落するのはインフレになったときである。インフレになれば、中央銀行は利下げも追加緩和もできない。日・米・欧の金融・財政政策ものりしろがほとんど残っていない。米国の景気拡大期は120か月超に及んでいるが、この先到来する景気後退期に、米国はQE4で対処せざるを得ないであろう。それも、インフレになったら不可能となる。

    果たして、中央銀行はインフレ(金利上昇)というバブル崩壊を起こさないでホテルを脱出することができるのだろうか?


    ラリー・ウィリアムズの日米株式市場予測

    ラリー・ウィリアムズは日米の株式市場に対して弱気転換した。「雇用統計を受けて米株式市場は金曜日に上昇したが、これはダマシになると思う」と述べている。

    「日経平均はアメリカの株式市場を先行していますが、ここではそれほど強くありません。このままで三度、上げてきています。シーズナルは下降と示しています。他市場をもとにしたフォーキャストラインは下降と示しています」と、日本の株式市場についても弱気なようだ。


    ●ラリー・ウィリアムズのS&P先物予測
    ⑤LW SP予想 2191209.png
    出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2019年12月9日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。有料レポートのため、チャートおよび文章の一部を隠しています。

    ●ラリー・ウィリアムズの日経平均予測
    ⑥LW 日経平均予想 20191209.png
    出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2019年12月9日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。有料レポートのため、チャートおよび文章の一部を隠しています。


    日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com/

    を参照されたい。




    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。


  • 口座開設費・管理費無料 口座開設
  • 初めての方へ
  • ネット取引 ログイン
  • くりっく365 取引所FX ログイン
  • くりっく株365 取引所CFD ログイン
  • マイナンバー提示のお願い
  • !当社を騙った詐欺行為の情報が寄せられています。十分にご注意ください!
  • 投資信託の販売会社における比較可能な共通KPIについて
  • 未公開株・社債等をかたった詐欺にご用心!【日本証券業協会】
  • 逆日歩を気にせずお取引!当社の一般信用取引で「売建」が可能な銘柄一覧「一般信用取引売建可能銘柄一覧」です
  • 「デイトレフリー」とは、信用取引で日計り取引(デイトレ)向けサービスです!手数料0円!金利0%!サービス開始!
  • 岩井コスモで始める外国債券投資

TOPへ戻る