マーケットレポート

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「マーケットの最前線」

2019年11月18日

第203回「富裕層の8割がボラティリティの上昇(株式市場の下落)を懸念している」石原順

石原順 石原順

  • 日銀のステルステーパリングを警戒する日本株市場

    「なぜ日銀は買わないのか?」10月からの上昇相場が一巡したここ数日、そうした疑問を持たれた方も多いのではないだろうか。日経平均株価が大きく下げる局面では必ずと言って良いほど、市場のクジラがその存在感を示していた。ところが、今月に入り日銀はETFの購入に動いておらず、日経平均株価が調整局面となる中、日銀の資料によると10月9日に704億円購入して以来、ETFの買い入れを行なっていない。

    日銀は年6兆円のペースでETFを購入しており、今年も残すところ1ヶ月半となったが、まだ2兆円の買い余力を残している。営業日で単純計算すると毎日600億円以上のETF購入が可能となるが、さすがに副作用も大きいことを日銀自らが自覚しているのか、あるいは現在の水準では買えないということなのか、その真意は計りかねるが、マーケットが軟調展開になっても日銀が出動してこないことに対してステルステーパリングとの指摘もある。

    日銀が買わないことに対して市場が疑心暗鬼になり不安定になっているという指摘もあるが、そもそも一国の中央銀行がその株式市場に直接手を入れてETFを購入し、ETF市場の約7割を中央銀行が保有しているということ自体が異常事態なのである。ところが異常も常態化すれば、それは常識となってしまう。

    調整している背景について、米中の貿易交渉が足踏みしていることや、香港情勢の激化による香港株式市場の値下がり、さらには中国の経済成長率が鈍化していること等、もっともらしい理由が述べられているが、結局、日本株は売られ過ぎていた反動による出遅れの修正に過ぎない。パッシブ運用の拡大を背景に、指数が上昇すれば買わざるを得ない状況になっているだけで、PERが14倍を超えてくるとその勢いには陰りが出てくるのは当然だろう。

    一方の米国市場は再び最高値圏で推移している。強気相場が継続しており、投資家はリスク選好モードに移行しつつあるという。JPモルガンチェースやシティと言ったウォール街の大手銀行2行は金のポジションを解消したそうだ。9月にFRB(米連邦準備制度理事会)が安易なQEの再開に移行したため、株価が上昇することには疑問の余地はない。9月からの「隠れQE」の発動で市場にはジャブジャブのカネがあふれ、世界各国が利下げに向かっていることから金融相場が展開されている。目先の企業業績が悪くても、来期はいいだろうという根拠のない楽観から業績相場とはなっていない。

    FEDの総資産とS&P500の推移
    ①FED総資産とSP500 20191118.png
    出所:セントルイス地区連銀

    少なくとも来年の2月までは連銀の隠れQEで市場はジャブジャブである。したがって、それまでは株は下げないという見方が一般的だ。しかし、市場の底流では、いくつか静かな崩壊が始まりつつある。例えばIPO市場やCLO市場での混乱に加え、実際に企業の破たんも起こっている。先日、米乳製品最大手のディーン・フーズがチャプター11を申請した。最大顧客だったウォルマートとの契約を失ったあと、赤字が続いていたという。食品を含む消費財は、不況にも強い企業と見なされているが、こうした企業の破たんは潮目の変化を伝えるきっかけなのかもしれない。


    富裕層の8割がボラティリティの上昇を懸念

    UBSウェルスマネジメントの調査によると、少なくとも投資可能な資金を100万ドル以上持っている投資家は、来年末までに「重要な」株式市場の下落があると考えていることがわかった。また、回答者の約5分の4はボラティリティが増加する可能性が高いと答えており、55%は2020年末までに大幅な市場売却があると考えている。

    実にほぼ80%がボラティリティの上昇を懸念しているのは驚くべき数字であろう。株式市場はジリジリ上昇してドスンと下がる傾向がある。市場が不安定な時期には、株価は大きく値下がりする傾向がある。ただし、富裕層投資家のこうした警戒は短期的な見通しに限られており、今後10年間の投資リターン関して言えば、回答者の約70%は楽観的だと言う。

    世界の富裕層は2020年に混乱が起こるかもしれないと考え、事態に備えている。UBSグローバル・ウェルス・マネジメント(GWM)の調査で分かった。富裕層投資家を対象に行った調査によると、3400人を超える回答者の過半数が来年末までに大幅な相場下落を予測しており、平均資産の25%相当を現在現金で保有している。(中略)リポートによれば、回答者の5分の4近くはボラティリティが上昇する可能性は高いとみており、55%は2020年末までに大規模な売り浴びせがあると考えている。調査は8-10月に、投資可能な資産100万ドル(約1億900万円)以上を持つ投資家を対象に行われた。回答者の60%は手持ちの現金をさらに増やすことを検討しており、62%は資産クラスのさらなる多様化を計画している。

    ブルームバーグ2019年11月12日「世界の富裕層投資家、大規模な株売りに備える-UBSウェルス調査」

    そうした富裕層の動きと一致するのだろうか。企業のインサイダーは約20年で最も速いペースで株を売っていることがわかった。例えば、先日、米配車大手ウーバー・テクノロジーズの創業者で前最高経営責任者(CEO)のトラビス・カラニック氏が保有していたウーバー株21%近くを売却したことが報じられた。上場に伴い売却が禁じられる「ロックアップ」期間が終わったためで、売却したのは2000万株以上、約5億4700万ドルに相当する。

    フィナンシャルタイムズの記事(Insider stock sales rise to two-decade high in the US:米国におけるインサイダーの株式売却が20年ぶりの高水準に)によると、CEOやCFO、取締役会メンバー、そしてベンチャーキャピタル等を含むインサイダーは9月中旬までに190億ドルの株式を売却したと言う。年に換算すると260億ドルに達する見込みであり、これはドットコムバブルの中で経営陣が370億ドルの株式を売却した2000年以来の大きさになると言う。ウォルマートの創業家であるウォルトンファミリーのメンバーが、合計22億ドルの株式を売却した他、化粧品のエスティローダーや衣料品グループのルルレモンの幹部等が最も活発な売り手だった。

    また、年に3回12,000社を調査するIHS Markitのグローバルビジネス見通しによると、データが最初に収集された2009年以来最悪の水準に落ち込んだことが分かった。マークイットの世論調査ではこの先1年の活動、雇用、利益の見通しに対する楽観論はいずれも金融危機以降の最低水準にあった。また、予想投資支出の減少が報告された他、予想インフレ率は3年ぶりの低水準となった。


    破綻の引き金は債券市場

    2020年代に米経済がリセッション(景気後退)に陥る場合、その引き金として最も可能性が高いのは債券市場バブルの巻き戻しだと、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストらが予想した。
    トミー・リケッツ 、マイケル・ハートネット両氏を含むストラテジストらは11日のリポートで、11兆ドル(約1200兆円)余りのマイナス利回り債券の存在や約1%のオーストリア100年債利回り、記録的低水準になお近い世界の債券利回りを指摘。今後数年には、中央銀行が「ひもを押す」という「政策の無能」に陥ることが金利ボラティリティの急上昇を招き、「最低の金利と最大の利益」という10年にわたる強気の組み合わせを終わらせると共に「資産価格のピーク」を示すだろうとストラテジストらは分析。さらに、当局が現代貨幣理論を実践しインフレ上昇を招くまで国債を発行するなどの政策ミスを犯すことも要因になると指摘した。「利回りの無秩序な上昇は、ウォール街がレバレッジを減らす際に大きな痛みを引き起こす可能性が高く」、必然的にその直後に、経済にさらなる痛みをもたらすだろうと続けた。債券市場のバブルは向こう10年の間に巻き戻すとの見通しの下で、債券バブル破裂のシナリオに対して、金融資産に代わり金や米財務省短期証券(Tビル)、実物資産を介してヘッジすることを勧めた。

    ブルームバーグ2019年11月12日「債券バブル破裂が次の米リセッションの引き金となる公算大-BofA」

    富裕層と言われる投資家やビジネスオーナーの多くはひどい時代が来ると気配を嗅ぎ取っているようだ。2020年には混乱があるのではというコンセンサスは広がってきている。準備に残された時間は限られていることを頭に留めておいて欲しい。


    NYダウと日経平均のテクニカル分析

    ●NYダウ先物(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル
    ②NYダウ日足標準偏差VM 20191118.png
    出所:パンローリングカスタムチャート

    ●NYダウ先物(週足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル
    ③NYダウ週足標準偏差VM 20191118.png
    出所:パンローリングカスタムチャート

    ●NYダウ先物(月足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル
    ④NYダウ月足標準偏差VM 20191118.png
    出所:パンローリングカスタムチャート

    標準偏差ボラティリティでは日足と週足共に買いトレンドが継続している。しかしいずれもSTDとADXの動きは緩慢で、力強い上昇と言うには物足りない。月足では相場がプラス1σの外に飛び出しているが、明確なトレンドにはまだなっていない。

    一方、日経平均は週足ではまだ買いトレンドが継続しているものの、日足ではいったん買いトレンド終息し、この後調整に入ることが想定される。


    ●ドル建て日経平均先物(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル
    ⑤日経平均日足標準偏差VM 20191118.png
    出所:パンローリングカスタムチャート

    ●ドル建て日経平均先物(週足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル
    ⑥日経平均週足標準偏差VM 20191118.png
    出所:パンローリングカスタムチャート

    ●ドル建て日経平均先物(月足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル
    ⑦日経平均月足標準偏差VM 20191118.png
    出所:パンローリングカスタムチャート

    上を買うには慎重さが必要になる局面であろう。」とお伝えした通りの展開と言えるであろう。引き続き、調整局面にあることを意識しつつくれぐれも慎重なトレードを心がけたい。


    ラリー・ウィリアムズの日経平均予測

    ラリーは日経平均に強気だが、目先の相場に関してはレンジ相場を想定しているようだ。

    今週の「ラリーTV(ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析)」では、「フォーキャストラインによると、今後、上下に振れるレンジ相場になるでしょう。しかし、シーズナルパターンは● 月初めまで堅調です。通常、日経平均はこの時期に上げてから下げてきます。これは私の見解ですが、高値を更新した直後に、ストップを上げて保護します。ターゲットは 2●●●● 円ぐらいでしょう。そのレベルでは利確をオススメします。」と、述べている。


    ●ラリー・ウィリアムズの日経平均予測
    ⑧LW日経平均予測 20191118.png
    出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2019年11月18日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。有料レポートのため、チャートおよび文章の一部を隠しています。


    日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』
    https://ishiharajun.wordpress.com/
    を参照されたい。




    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。

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