マーケットレポート

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「マーケットの最前線」

2019年11月 5日

第201回「世界経済は19兆ドルに及ぶ社債の時限爆弾に直面している」石原順

石原順 石原順

  • <隠れQE>でバブルが延命、想定通りリスクオン相場に

    <隠れQE>でバブルが延命している。世界は人為的に作られた流動性で溢れている。だが、株が上がれば上がるほど、金融当局は利下げもQEもやりにくくなる。そうなると、株は下がる。これが人為的に作られた相場のパラドックスである。

    NYダウ(日足)とPPT(株価下落防止チーム)の動向
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    10月30日の米FOMCは予想通り0.25%の利下げとなった会見でパウエルFRB議長が「予防的利下げの休止」を示唆した。10月から量的緩和を再開(隠れQE)しており、来年の3月までは株の下落がない限り利下げは打ち止めだと言われている。

    ●米国はQE3終了後5年ぶりに量的緩和を再開
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    ●FEDのバランスシート(青)とNYダウ(赤)の推移(2007年~2019年)
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    資産縮小時の株価(グラフの黄色の部分の時期)は上がらなかったが、運用者の間ではこれからはリスクオンだという声が飛んでいる。

    ●NYダウ(日足)標準偏差ボラティリティトレードモデル
    20191105④.png

    ●日経平均(日足)標準偏差ボラティリティトレードモデル
    20191105⑤.png

    国際金融資本の自作自演(マッチポンプ)相場か!?

    今回のレポ市場の危機は、「JPモルガンがFEDQEに追い込むために意図的にレポ市場の金利を高騰させたものである」という報道が出ている。

    9月上旬から、JPモルガンの政府専用のマネーマーケットファンドは、オーバーナイト市場から資金を引き上げ始めたのである。マーケットに突然流動性がなくなったため、レポ市場において一夜にして金利が急上昇するという危機が起こった。

    民主党の大統領候補のフロントランナーであるエリザベス・ウォーレンは、ムニューシン財務長官に書簡を送った。短期金利が急上昇を引き起こした理由に疑問を持つウォーレンは、FEDや財務省に対して「JPモルガンを調査せよ」と、要求している。

    エリザベス・ウォーレンがムニューシン財務長官に送った書簡
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    出所:ゼロヘッジ

    「短期金融市場が変調に見舞われた際、JPモルガンにはそれを沈静化させるだけの資金も意思もあったが、規制によってそれが阻まれた」と、JPモルガンのダイモンCEOは反論している。

    しかし、以下の記事を読むと、レポ金利急上昇はJPモルガンやゴールドマンがバブル延命のために金融当局と仕組んだ自作自演の〝隠れQE〟作戦であったことがうかがわれる。

    ムニューシン米財務長官、銀行規制緩和の検討は「理にかなう」

    (2019年10月30日 ブルームバーグ)

    ムニューシン米財務長官は金融危機後に大手行に対して厳格化された流動性規制について、短期金融市場での資金不足に備えて緩和する用意があることを示唆した。

    ムニューシン氏は29日のインタビューで、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)やその他銀行と、流動性問題を回避する方法について協議したと明らかにした。11日間の中東・インド歴訪で最初に訪れたテルアビブで、「銀行からは日中流動性を巡る問題が指摘されており、これを規制当局が検討するのは理にかなう」とコメント。現行の規制枠組みでもリスクを高めることなく日中取引の流動性を高めるうまい方法が存在するかもしれないとした。

    ムニューシン長官は先月のレポ市場の混乱について、法人税支払期限に絡んだ銀行システムからの資金流出という「技術的な問題」が主因だとする一般的な認識を示した。この機能障害を受けて、米金融当局は資金注入を続け、短期金利の上昇を抑制している。

    長官は混乱を招いた技術的な要因を金融当局が解決したと確信していると述べ、再燃しないとの見通しを示した。さらに、規制関連の問題はいずれも、これとは別個の問題だと指摘した。

    ただ銀行からは、金融危機後に導入された厳格な流動性要件が市場混乱要因の一つだったとの指摘がある。短期金融市場が変調に見舞われた際、JPモルガンにはそれを沈静化させるだけの資金も意思もあったが、規制によってそれが阻まれたと、ダイモン氏はこれまでに述べている。

    JPモルガン・チェース(日足)
    JPモルガン日足 20191105.png

    JPモルガンのダイモンCEOは、「9月中旬のレポ金利急騰はリーマンショック(金融危機)後の規制が問題だ」と主張し、ワシントンを走り回っているといわれるが、運用者の間では「PPT(市場の急落を阻止するチーム)とFED(連銀)が組んだ自作自演相場だ」と言われている。

    世界経済は19兆ドルに及ぶ社債の時限爆弾に直面しているとIMFが警告

    先日、「世界の銀行過半数、景気下降局面への準備できていない」というレポートがマッキンゼーから出ていたが、今回は「世界経済は19兆ドルに及ぶ社債の時限爆弾に直面している」というIMFの警告を紹介する。

    なぜ、債券王ジェフリー・ガンドラックやポール・チューダー・ジョーンズが、「次の金融危機の引き金は社債市場がトリガーになる」と言っているかが分かると思う。この10年、ジャンク債バブルで金融システムは回ってきたが、借金の借り換えができなくなったときにどうなるのか、世界経済は両建てのポンジスキームになっているのである。

    「低金利によって、企業が19兆ドル(15兆ポンド)にも及ぶ債務を抱えており、次に世界的な不況が起きた際の時限爆弾になるリスクがある」とIMFは指摘していて、「もし10年前の半分ほどの深刻さの景気後退があったとしたら、8つの主要国(米国、中国、日本、ドイツ、英国、フランス、イタリア、スペイン)の企業債務のほぼ40%が返済不能になる」としている。

    Global economy faces $19tn corporate debt timebomb, warns IMF

    (10月16日 ガーディアン)

    ●世界経済は19兆ドルに及ぶ社債の時限爆弾に直面しているとIMFが警告
    ●最新のマーケット見通しによると、米国、中国、英国を含む8つの主要国が脆弱であるとしてリストアップされている
    ●IMFは、日本と米国の株価は過大評価されているようだと指摘

    Low interest rates are encouraging companies to take on a level of debt that risks
    低金利によって、企業が19兆ドル(15兆ポンド)にも及ぶ債務を抱えており、次に世界的な不況が起きた際の時限爆弾になるリスクがあるとIMFは指摘した。

    IMFは、世界の金融市場に関する見通しを半年ごとに更新しているが、もし10年前の半分ほどの深刻さの景気後退があったとしたら、8つの主要国(米国、中国、日本、ドイツ、英国、フランス、イタリア、スペイン)の企業債務のほぼ40%が返済不能になるとした。

    IMFは、先進国と発展途上国の両方で中央銀行が実施した刺激策によって、企業の多くが、返済に苦労しているにも関わらず、過剰債務に陥れる副作用があったと指摘。。

    IMFは歴史が繰り返されるのではないかという懸念している。

    ワシントンに本拠をおくこの組織の当局者は、債務の蓄積が世界の金融システムを非常に脆弱にすることを恐れており、加盟国に対し、起こりうる市場崩壊の兆候についての警告が見過ごされた2000年代初頭の過ちを繰り返さないように伝えている。

    IMFは、米国と日本の株価は過大評価されているが、その一方で、債券市場の信用スプレッド(リスクに対して投資家が要求する見返り)は、世界経済の状況を考えると低すぎるようだと指摘した。

    GFSR(国際金融安定性報告書)を担当するIMFのシニアレベルの2人、Tobias Adrian氏とFabio Natalucc氏は、次のように述べている。「急激かつ突然の金融状況における引き締めは、これらの脆弱性を明らかにし、資産価格の評価に圧力をかける可能性がある」

    GFSRとともに公開されたブログ投稿で、Adrian氏とNatalucc氏は次のように述べている。「8つの主要経済国の企業は、債務を積み上げており、それを返済する能力が弱体化している。」

    「われわれは重要な経済減速の潜在的影響に注目している。それは、2007年から2008年の世界的な金融危機の半分ほどの深刻さである。われわれの結論は慎重である。利払い費用を収益で賄うことができない企業が負っている負債(私たちはリスクのある企業負債と呼ぶ)は19兆ドルまで上昇する可能性がある。これは、調査した経済圏の全社債のほぼ40%である。」

    2008年の金融危機以降、銀行に対する規制は強化されたが、IMFは、リスクが企業部門を含む他の場所に転移したと述べている。債務に対する金利の支払いに税控除を与えることを各国が再び検討する必要があると考えており、それが企業に借入を通じて資金調達することを促した。

    Adrian氏とNatalucci氏は、中央銀行が採用した安易な金融政策は、投資家をより高い利回りを求めて賭けに出ることに追い込み、短期的には金融市場を後押しするのに役立ったが、中期的には不安定性と低成長のリスクにさらした。

    「投資家は、中央銀行の行動とコミュニケーションを金融政策サイクルにおける転換点と解釈した。GDPによって測ることができる経済の約70%は、より緩和的な金融スタンスを採用している。この変化には長期利回りの急激な低下が伴った。一部の主要経済国では、金利はマイナスである。驚くべきことに、マイナスの利回りを持つ国債と社債の総額は約15兆ドルに増加した」と述べた。

    過去6か月間、年金基金や保険会社など、銀行に分類されていない金融機関における脆弱性が増していると彼らは付け加えた。GDPで測定される経済の80%において、システム的に重要な金融セクターにおけるリスクが上昇した。これは、金融危機に匹敵するレベルである。

    「保険会社、年金基金、資産運用会社などの機関投資家は、金利が非常に低いため、利回りを求め、よりリスクが高い流動性の低い証券を引き受けて、目標とするリターンを生み出している」

    「たとえば、年金基金はプライベートエクイティや不動産などの代替資産クラスに対するエクスポージャーを増やしている。考えられる結果は何であるか。投資ファンドのポートフォリオにおける類似性は市場の売却を増幅させ、年金基金による非流動的な投資は市場における伝統的な安定化の役割を制約する可能性がある。加えて、生命保険会社による国境を越えた投資は、市場全体に影響を及ぼす可能性がある。」

    景気後退はいつ来るのか?

    債券王のジェフリー・ガンドラックは、ドイツの金融情報サイトFINANZ und WIRTSCHAFT(金融と経済)」のインタビューで、「重大な混乱に備えよ」と述べ、次の金融危機に向けての準備を怠っていない。

    ガンドラックはインタビューの中で、

    Q:投資家に何をお勧めするか?

    A:「市場の大きな変化につながるので、投資家は次の世界的な不況に向けて位置取りをする必要がある。」

    Q:景気後退はいつ来るのか?

    A:「それが1年後なのか、4年後なのかは問題ではない。いま準備を始めないとすると、景気が良い間はうまくいくかもしれないが、不況になるとそれによって得られる利益よりもその投資によってもたらされる問題のほうが圧倒的に大きくなるだろう。」

    と述べている。

    ガンドラックはかねがね、「手遅れになるまでしがみつくな。たとえ、今を犠牲にしても」と述べているが、

    筆者の相場信条である「ファーストイン・ファーストアウト(人より先に入って先に出る)」と同じことだ。

    相場の最終波動にはしがみつかないということが大切だ。たとえ、最後の上げを取り損ねることになっても、最後の買い手になってはいけない。

    日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』
    https://ishiharajun.wordpress.com/
    を参照されたい。

    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファン ドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市 場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当 する現役ファンドマネージャーとして活躍中。

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