マーケットレポート

プロの視点からわかりやすいレポートを提供します。

「マーケットの最前線」

2019年10月28日

第200回「ハイテク株爆買いと自社株買いという風が吹き止むタイミングは近い!?・ラリーの日経平均予測」石原順

石原順 石原順

  • 不景気の株高

    IMFは米国と日本の株価は過大評価されていると指摘しているが、経済指標が軒並み悪化するなかで、世界的な金融緩和(利下げ)とFEDの隠れQEによって金融相場が突如出現し、株価が高止まりするというバブル延命相場が展開されている。


    ●連銀のバランスシート
    ①連銀のバランスシート 20191028.jpg
    出所:ゼロヘッジ

    加えて安倍政権は11月の解散・総選挙を画策していると言われるなか、水面下では日経平均やドル/円の買い支えと思われる買いが入っているようだ。


    ●日経平均(日足)トレンドサイクルとMACD
    ②日経平均日足トレンドサイクルとMACD 20191028.png

    経済が悪化すればするほど株価が上がるという怪現象は、金融相場による不景気の株高とも言い換えられるが、ここにきての日経平均の上昇の要因は裁定売り残と信用の売り残の買戻しであろう。こうした市場の内部要因でも相場は大きく変動する。


    ●日経平均(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレード
    ③日経平均日足 順張りの標準偏差VT 20191028.png

    ゼロ金利やマイナス金利の時代、皆が株の高配当株を買うと同時にTOPIX先物を売るマーケットニュートラル戦略をとっているところが多い。昨年の4Qからその傾向が顕著になっている。


    ●日経平均(赤)とTOPIX(緑)の推移  2015年~2019年
    ④日経平均とTOPIX推移 20191028.png

    アベノミクス以降、日本は資本主義制度に危害を加える<統制経済>に向かっている。自作自演相場が延々続いているのである。

    陰鬱博士マーク・ファーバーは「エコノミストもファンドマネジャーも当局が介入するほど良い政策であると常に考えている。財政・金融政策によるあらゆる実験と介入に、過誤がある可能性、副作用がある可能性、さらなる介入で過誤を招く可能性があることを、つい忘れしまう。この教訓を旧ソ連や毛沢東時代の中国にあった中央計画当局から学んでいるはずなのに・・。経済政策の決定権者はまずは市場と資本主義制度に危害を加えないことからというお題目を何度も唱えているにもかかわらず、ほとんど何も処置をしないこと、ましてや何もしないことに抵抗を感じてしまう。さらなる量的緩和・政府の消費景気・公的資金援助・新しい規制・移転支出・マイナス金利によるあからさまな富の没収をしたいという気持ちを抑え難いのだ」と指摘している。


    ●FEDのバランスシート(青)とNYダウ(茶)の推移  2007年~2019年
    世界は人為的につくられた流動性で溢れている。この流動性の恩恵を受けることができた人たちは笑いが止まらない状態だが、流動性がストップしてしまうと悲惨な状況に襲われることになる。
    ⑤FEDのバランスシート 20191028.png


    驚くべきグラフ1:企業支出の急減速と成長企業神話の崩壊

    以下のチャートはS&P500企業による現金支出を一年前と比較したものである。ご覧の通り2019年第1四半期は前年比で5%増加したものの、第2四半期は13%減少と大幅なマイナスに落ち込んだ。今年の4月以降、企業支出に急ブレーキがかかっていることがお分かり頂けるだろう。

    ●S&P500企業による現金支出
    ⑥SP500現金流出 20191028.png
    出所 ゼロヘッジ

    WeWorkの失敗が私たちに教えてくれたことがあるとすれば、栄光の物語の亀裂、特に「利益とマージン」を無視した「いかなるコストをかけても成長」という企業の物語に亀裂が現れ始め、投資の決定に影響を与えているということであろう。わずか数ヶ月の間にソフトバンクの孫正義は、ウォール街で最も賞賛されている投資家の1人から、単純な基本を理解していないだけでなく、無知な10代の少女が絹のような長い髪を追いかけ、それは数十億の損失を意味するが、投資家をバスの下に投げ込み、虚栄の投資に追い詰めた。
    しかし、さらに深く掘り下げると、これまでの無制限の成長の主な源泉、つまり企業と投資家によって無制限に行われてきた現金支出が終わりに近づいていることが明らかになった直後にWeWorkがクラッシュした。ゴールドマンは、第2四半期の現金支出(設備投資への支出、自社株買い、配当を含む)が前年比13%急落したことを示した。まずWeWorkのトラブルが現れ、銀行家たちが会社の公開を急いだのは偶然ではなかったのだろう。

    これは非常に重要なポイントである。なぜなら、モルガン・スタンレーのMichael Wilson氏が指摘しているように、ビジネス支出の減速は、特にWeWorkのような急成長企業に影響を与える可能性が高いからである。もしその企業が、消費者による支出ではなく企業の支出に依存している場合は特にである。
    ゼロヘッジ2019年10月22日「One Bank's Stunning Chart Showing The Second Tech Bubble In All Its Glory(1つの銀行が示した栄光の中で2番目のテックバブルを示す驚くべきチャート)」


    ソフトバンクグループが設立した10兆円ファンド(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)は、米国内のベンチャーキャピタルの年間投資額に匹敵する圧倒的な資金力を持っており、ベンチャーキャピタリストの間からは「常識外れ」との声も聞かれていた。また、投資先のベンチャー企業に敢えて高い評価額を提示し、投資を受けない場合はライバル企業に投資をすると迫り、その評価額を吊り上げていたという話もある。シリコンバレーに本拠を置くフェノックス・ベンチャーキャピタルの共同代表パートナー兼CEOアニス・ウッザマン氏のインタビューからその一端を覗き見ることが出来る。


    ウッザマン氏:「SVFの登場によって米VC業界のバランスが崩れてきています。資本主義なので力のある者が勝つとはいえ、業界を混乱させているとは言えますね」

    ウッザマン氏はSVFのケタ外れの資金力を実感した自身の体験を一例に挙げた。フェノックスが半年ほど出資交渉を続けていたスタートアップがあった。この企業の時価を100~150億円と査定したうえで、その1割ほどにあたる約10億円を出資する方針だった。ところがある朝、新聞を開くと、SVFがこの企業に約500億円の投資をすることが決まった、というニュースが目に飛び込んできた。SVFによる投資の条件を前提に時価を計算し直すと1500億円ほどになった。フェノックスによる評価の10倍以上だ。ウッザマン氏は「話にならない」と判断し、出資を断念した。

    ウッザマン氏:「私たちはその数日前まで、『100億~150億円』を前提に交渉していたのですから。実際の価値はそこまでないのでは、と思っています。過去のさまざまなケースを踏まえて考えれば、将来IPO(新規株式公開)するにしても、M&A(合併・買収)されるにしても、エグジット(出口=投資回収)の段階で数千億円の価値を持つ会社になれるかは疑問です。もちろんSVFには彼らなりの考えがあるのだとは思いますが」
    ビジネスインサイダー2018年12月19日「ソフトバンク10兆円ファンド登場で激震のシリコンバレー、VCトップが語るその破壊力」)

    以前から筆者が指摘しているように、金融の世界では日本人とドイツ人が出てきたら終わりと言われている。約30年前のバブル絶頂期に三菱地所がニューヨークにあるロックフェラーセンタービルを高値で購入した話はその一例であろう。GAFAの分割を提唱しているニューヨーク大学のスコット・ギャロウェイ教授は、ソフトバンクについて「その昔、日本マネーがやたら高価格でロックフェラーセンターやゴルフ場を買い漁ったら、すぐに不動産が暴落した。また日本マネーがやってきて同じことをしている」と発言した。

    バブル末期には得体のしれないものが常識を超えるような高値で取引されることがあるが、WeWorkはその象徴だったのだろうか。日本のヤフーやアリババへの投資で大成功を納め、鳴り物入りで誕生したビジョン・ファンドであったが、今回の事態を受け、ビジョン・ファンド第2弾の資金集めが難航している。

    その一方、ソフトバンクは、従業員がビジョン・ファンド第2弾に出資するための資金として最大200億ドル(約2兆1300億円)を融資することを計画していると伝えられた。機関投資家が買わないから個人に社債を売り、今度は外部からの資金が調達できないので、社員に出資させるらしい。市場では警戒感が高まっており、ソフトバンクグループの社債保証コスト(CDS)が上昇している他、株価は相場がマイナス0.6σを下抜け、ADXが低い位置から上がり始めており下落トレンド入りとなっている。


    ●ソフトバンクグループ(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル
    ⑦ソフトバンクGの標準偏差VTM 20191028.png


    驚くべきグラフ2:二度目のハイテクバブルが終わりを迎えている?

    前述のゼロヘッジの記事からさらにグラフを見ていこう。それは二度目のハイテクバブルが終わりを迎えつつあるということを示したものである。前述のように企業の支出が減少する中、IT投資についても減少することが想定されている。しかし、過去1年ほど、ハイテク企業はその減速に影響されずにいた。ところが、さすがに最近のデータにおいて弱さが見え始めているようだ。

    企業によるソフトウェアおよびハードウェアに対する予算は、2020年に最も急激な減速が予想されているという。実際にいくつかのハイテク企業においては、受注の先送りや遅延が起きているそうだ。モルガン・スタンレーではハイテク企業に対して、去年7月から弱気スタンスを取っている。

    2018年7月からのハイテクセクターに対する弱気見通しは、2018年の第2四半期から設備投資が落ち込むだろうというわれわれの予測に基づくものであった。しかし、設備投資の減少にもかかわらず、2018年7月以降、ハイテクセクターはS&P500をアウトパフォームしてきた。

    モルガン・スタンレーによるチャートはこの前例のない分断を示している。これにより、2番目のハイテクバブルが2017年の夏に始まり、今年の夏にはこれまでになかった大きさまで膨らんでいたことが明らかになった。モルガン・スタンレーのチャートは栄光の第2のハイテクバブルが起きていることを示している。


    ●テック企業の相対パフォーマンスはテック企業の相対利益成長をアウトパフォームしてきた
    ⑧テック企業の相対パフォーマンス 20191028.png
    出所 ゼロヘッジ

    この歴史的な乖離をもたらしたものは何なのか。企業そのものに目を向ける必要はない。過去2年間、ハイテク企業はトランプ減税により、資金を本国に還流させた。そのおかげで比較する他の全てを見劣りさせる規模の歴史的な自社株買いが解き放たれた。ハイテク企業による自社株買いが、株価をファンダメンタルズから大きく乖離させたのである。


    ●S&P500企業によるセクター別自社株買い
    ⑨SP500の自社株買い 20191028.png
    出所:ゼロヘッジ

    どのように終わりが来るのか?ゆっくりと、しかし確実に、不快な事実が現れ始めている。モルガン・スタンレーは「景気の減速及び、ソフトウェア企業はこの減速に耐えることができないという証拠の積み上がり、さらには、ハイテクのより資本集約的な部分に関して需要の弱さが続いているため、われわれはアンダーウェイトを継続する」と結論づけている。二度目のハイテクバブルは終わろうとしているのか。

    2019年10月22日ゼロヘッジ「One Bank's Stunning Chart Showing The Second Tech Bubble In All Its Glory(1つの銀行が示した栄光の中で2番目のテックバブルを示す驚くべきチャート)」

    トランプ政権の減税によって、特に2018年後半は記録的なレベルの自社株買いが実施された。自社株買いは株式市場の最も強力な成長ドライバーの1つであった。しかし、ゴールドマンによると、2019年の自社株買い総額は15%減の7100億ドルになると予測されている。さらに減少は来年も続き、2020年には5%減少して6750億ドルになると予想されている。さらに、自社株買いは政治的逆風にもさらされている。エリザベス・ウォーレンやバーニー・サンダースと言った民主党所属の議員だけではなく、共和党のマルコ・ルビオ上院議員も自社株買いに反対している。
    ハイテク企業による高いパフォーマンスと自社株買いという強力な追い風が吹き止むタイミングが近づいている。相場の世界では「ハロゥイン後には戻ってこい」と言われ、確率的には投資に適した黄金の半年間がスタートする。去年はクリスマスに株式市場が急落し、「サンタ」の代わりに「サタン」がマーケットにやって来たと言われた。今年のクリスマスにはプレゼントをサンタがプレゼントを持ってやって来るのだろうか・・。

    ラリー・ウィリアムズの日経平均予測

    ラリーは日経平均に強気のスタンスを維持している。
    今週のラリーTVで、「日本と言えば、株式市場で起きている状況をお見せしたいと思います。日経225のチャー トをご覧ください。フォーキャストラインですが、市場はこのライン通りに動いています。この先、日経225は上昇すると示しています。また、シーズナルパターンも上昇を支持しています。日本の株式市場で気がついたことはありますか? この点に注目してください―新高値 9 月と 8 月の高値をすでに超えています。つまり、アメリカの株式市場より日経225の方が強いのです。日経 225 がアメリカの株式市場を先導してきていますので、米株市場は、今後、強く上げていくでしょう」と述べており、シーズナルパターンからももう一段の上昇を観ているようだ。

    ●ラリー・ウィリアムズの日経平均予測
    ⑩LW日経平均予測 20191028.png
    出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2019年10月28日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。有料レポートのため、チャートおよび文章の一部を隠しています。

    ●日経平均のシーズナリーチャート(過去20年)
    ⑪日経平均シーズナリーチャート 20191028.png
    出所:エクイティクロック



    日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』
    https://ishiharajun.wordpress.com/
    を参照されたい。



    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。

  • 口座開設費・管理費無料 口座開設
  • 初めての方へ
  • ネット取引 ログイン
  • くりっく365 取引所FX ログイン
  • くりっく株365 取引所CFD ログイン
  • !当社を騙った詐欺行為の情報が寄せられています。十分にご注意ください!
  • 投資信託の販売会社における比較可能な共通KPIについて
  • 未公開株・社債等をかたった詐欺にご用心!【日本証券業協会】
  • 逆日歩を気にせずお取引!当社の一般信用取引で「売建」が可能な銘柄一覧「一般信用取引売建可能銘柄一覧」です
  • 「デイトレフリー」とは、信用取引で日計り取引(デイトレ)向けサービスです!手数料0円!金利0%!サービス開始!
  • 岩井コスモで始める外国債券投資

TOPへ戻る