マーケットレポート

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「マーケットの最前線」

2019年9月 2日

第192回「今週正念場を迎えるNYダウのアナログチャートモデル・トランプは意図的に経済と株価を弱めているのか!?」石原順

  • ナバロ氏発の景気後退に備えよ

    レポートやラジオで述べてきたように、関税第4弾や中国を為替操作国に指定を決めたのは、トランプとピーター・ナバロ米国家通商会議(NTC)委員長である。この2人の確信犯の行動は基本的にブレない上に、2人とも反ウォール街である。

    ナバロは米中戦争の裏側でウォール街や富裕層は中国と結託し、ホワイトハウスに攻撃を仕掛けていると不満をあらわにしている。

    筆者はナバロがWSJ(ウォールストリートジャーナル)への寄稿で「景気後退に備えよ」と警告し、トランプも現在の株価の下落をさほど気にしていないようだ。

    しかし、いまだに市場は来年に大統領選挙が控えているトランプは株が下がるようなことはしないだろう」という思い込み、米中の冷戦は年内に休戦するのではないかといった楽観的な期待が大きい。しかし、9月1日に米国は中国製品への追加関税を発動した。


    トランプ政権が対中追加関税を発動-米中合意のめど立たず
    (2019年9月1日 ブルームバーグ)

    トランプ政権は1日、約1100億ドル(約11兆7000億円)相当の中国製品への追加関税を発動した。世界経済に打撃を与えている米中貿易戦争が一段とエスカレートした。

    今回の15%の対中追加関税は、アパレルや履物といった消費財や「アップル・ウオッチ」などの一部ハイテク製品が対象となる。

    ノートパソコンや携帯電話などの約1600億ドルの中国製品には、12月15日に新たに15%の追加関税が課される。トランプ大統領が年末商戦への影響を和らげるため対中関税を一部先送りした。

    トランプ政権は貿易戦争長期化への懸念を否定しているが、米国の経済団体は新たな関税を撤回し、米中貿易協議を再開するよう求めていた。

    同大統領は関税が発動した1日、「今も中国に話をしている。協議する方針に変わりはない」と記者団に発言。関税の「負担を強いられている」のは米国ではなく、中国だとの主張を繰り返した。また米農産物に関する中国の報復で打撃を受ける米国の農家は、連邦政府による資金給付で「損害を補う以上」の状況だとも述べた。「中国がわれわれを食い物にするのをこれ以上許してはならない」と話した。

    中国も報復措置

    中国の報復措置も発動された。約750億ドルの米国製品が対象で段階的に実施。1日には米国産豚肉、牛肉、鶏肉や他の農産品に10%、大豆に5%の追加関税が適用された。12月15日に小麦やモロコシ(ソルガム)、綿花に10%の追加関税が課される。中国は9月から米国産原油に5%の追加関税を課すが、液化天然ガスへの新たな関税はない。

    米国産自動車にも12月15日から25%の追加関税が再開される。一部の車種には10%が上乗せされる。自動車に対する既存の一般的関税を考慮に入れると、米国車にかかる関税率は最高50%になる。

    中国は米国が圧力を掛ける戦術を繰り返し非難しており、同国当局者は長期的な対立に備えている兆しがある。

    中国国営の新華社通信は関税発動後の論説で、「米国の経済的な戦争挑発と戦う中国の決意はより強くなっており、対抗措置はさらに毅然(きぜん)とし、計画的で狙いを定めたものだ」と指摘。「ホワイトハウスのタリフマン(関税男)が学ぶべき」1つの事実は「中国経済が進行中の貿易戦争でもたらされた圧力に抵抗するのに十分力強く、回復力があるということだ」と主張した。

    全米民生技術協会(CTA)のゲーリー・シャピロ会長は関税を使って中国に合意への圧力を掛けるトランプ政権の手法が逆効果となっていると指摘。

    同会長は「米企業は絶えず変化する貿易ルールにより多くの資金を使う必要があり、技術革新や新製品、米国経済の健全性への資金が少なくなっている」と述べた。


    トランプとしては、米中通商戦争の激化させることで、パウエルFRBにさらなる「利下げ」というカードを切らせようとしている。トランプは来年の大統領選を見据えた動きに出ているのである。

    債券王のジェフリー・ガンドラックは8月23日に、「トランプは危険なゲームをしようとしている。FRBに利下げさせ金融緩和がタイム・ラグの来年夏(8月)あたりに効いてくるように現在は意図的に経済を弱めている。」と語っているが、これは筆者が以前から述べている見方と同じである。選挙は三か月前の景況感が重要なのである。トランプとしては、来年の8月以降に株価が上昇軌道を走ればベストなのである。

    ナバロやトランプは、株価急落の理由をパウエルFRBの愚かな政策のせいだとしており、パウエルは利下げをせざるを得ない状況に追い込まれていく。しかし、利下げのノリシロは2%しかなく、FRBが今年後半に追加利下げに動けば、景気後退や金融危機になった時に打つ弾がなくなってしまう。次の景気後退や金融危機にFRBはQE4(量的緩和第4弾)で対処するしかない。

    だから、10年単位でみた株の大きな買い場はQE4である。QE4が実施されるには、金融危機や株の暴落という大義名分が必要である。

    米国の利下げなど、株の買い場でもなんでもない。市場はさらに催促をするだろう。ウォーレン・バフェットが現金を温存し、株を買っていないのはQE4を待っているのである。

    催促相場によって株価はどこまで下げるのであろうか? 投機筋のターゲットは昨年12月のクリスマスの安値である。


    ●NYダウ(週足)と波動カウント
    ①NYダウ週足サイクル 20190902.png


    今週が正念場!?1998年と2019年のNYダウのアナログチャートモデル

    1998年と2019年のNYダウのアナログチャートモデルが示唆するのは、ここから相場が大きな下落に見舞われる可能性があることだ。1998年はプーチンが米国の金融破たんを狙って画策したロシアの計画的デフォルト(債務不履行)があり、ロシア危機が起こった年だ。ドル/円は147円から108円まで一気に急落し、筆者もえらい目にあった記憶がいまだ生々しく残っている。1998年はロシア債に投資していたヘッジファンドLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)が、オーバーポジション(レバレッジの掛け過ぎ)で破綻し、また日本では1997年から1998年にかけて拓銀・山一などの金融機関がドミノ倒し的に倒産した厳しい経済環境だった。


    ●NYダウ(日足) 1998年と2019年のアナログモデル
    ②NYダウ日足 アナログ 20190902.png


    ●NYダウと新月転換
    ③NYダウ新月転換 20190902.png
    出所:Galactic Trader

    ●NYダウCFD(日足)
    ④NYダウCFD日足 20190902.png
    出所:TradingView

    今週の相場で大きく下落するのか否か、1998年と2019年のアナログモデルは正念場に入ってきている。NYダウCFDの日足をみると、本日の時点では30日の新月でトップアウトした形状となっており、今週のNYダウの動向が注目されよう。

    1998年の株価推移をみると、8月に下げて9月は戻すが10月にもう一度下げてダブルボトム(底)をつけるというのが1998年相場のパターンである。

    <アナログチャートモデル>はチャーダーファンドの副社長だったピーター・ボリッシュが考案し、「ブラックマンデー(暗黒の月曜日)」を当てたことで脚光を浴びたパターン分析である。この分析手法は、相場は一定のパターンを繰り返すという相場のフラクタル構造や相似性に着目したものだが、米国では非常に人気が高い分析手法だ。


    ●Paul Tudor Jones - Trader Documentary 1987
    ポール・チューダーやピーター・ボリッシュが登場するブラックマンデーのドキュメンタリー
    ⑤ポールチューダー 20190902.png
    出所:https://www.youtube.com/watch?v=cy43vfYaxk0
    YouTube

    相場はニュースによって作られるのではない。長くマーケットと格闘した人なら分かるだろうが、ニュースは相場が作るのである。そして、相場は行きたいところに行く。


    ブラックマンデーの回顧

    以下の記事は、マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート「The Gloom, Boom & Doom」2017年11月号『1987年から30年で何が変わったのか!』のなかのブラックマンデーの回顧である。パンローリングから許可をもらって掲載している。

    【1987年夏まで、米国だけでなく世界中に浮かれたムードが漂っていた。ところが、1987年夏までに、米国株が買われ過ぎている状況を懸念する予測者が出てきた。同年に株価が40%を超える上昇をみせたことを思い出してほしい。

    ロバート・プレクターもそのひとりである。彼は1978年に『エリオット波動入門』を執筆したときには、ダウ平均が3000近くにまで上昇するだろうと強気を唱えていた(そして、誰にも信じてもらえなかった)。その彼が1987年9月初旬には弱気に転じたのだ。しかし、これは過半数の見解ではなかった。

    10月19日ブラックマンデー直前直後の日々は、私をひどく揺さぶった。極めて混沌としていたからだ。 自分の顧客も個人的にも稼ぐことはできた。しかし、ソロスのような賢明な人物でさえ2週間で資産の32%を失ったのだ。とすれば、私にも起こる可能性があると考えた。そこで、私は売り玉を減らし、しばらくの間、相場から離れると誓った。

    ●NYダウ(日足)1986~1987年のチューダーのエリオット波動カウントとブラックマンデー
    ⑥NYダウ ブラックマンデー 20190902.jpg

    先ほどロバート・プレクターが1987年9月に弱気に転じたと述べた。しかし、暴落直前に大量の売りを仕掛けて富を築いたファンドマネジャーは、友人のポール・チューダー・ジョーンズだった。彼が80年代に叩き出した運用成績はソロスよりもはるかに優れている。彼は1987年を約100%のリターンで終えたのだ!

    ポールは私が今まで会った中で最も偉大で、最も誠実なトレーダーである。彼には持って生まれたトレードの本能があるにちがいない】

    (マーク・ファーバー)

    出所:The Gloom, Boom & Doomマーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート2017年11月号『1987年から30年で何が変わったのか!』・国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載


    『石原順の日本株トレンドウォッチ』 筆者のブログで毎日2銘柄をピックアップしてチャートを掲載中

    岩井コスモ証券で『石原順の日本株トレンドウォッチ』という新しいサービスが始まったが、予想以上の反響をいただいて筆者も驚いている。

    ●『石原順の日本株トレンドウォッチ』
    ⑦トレンドウォッチ 20190902.png

    強いトレンドが発生している期間は、「上昇トレンド銘柄一覧」か「下降上昇トレンド銘柄一覧」のなかに掲載されるが、新たに売りトレンドや買いトレンドが発生した銘柄には★マークが付くようになっている。投資は自己責任であり、最終的な売買の判断は読者ご自身でしなければならないが、強い買いトレンドや売りトレンドが発生中の銘柄を筆者のトレンド分析に基づいて抽出する『石原順の日本株トレンドウォッチ』が、読者の株式投資の参考になれば幸いである。

    銘柄は引け後毎日夕方に掲載される。

    筆者のブログ『石原順の日々の泡』
    https://ishiharajun.wordpress.com/
    で毎日2銘柄をピックアップしてチャートを掲載しているので、レポートの読者の方はそちらも参照していただきたい。

    ⑧トレンドウォッチ2銘柄 20190902.png

    新コンテンツ紹介「石原順のトレンドウォッチ」は口座をお持ちでない方もご視聴可能です。

    ● 必見!「米国株買い+日本株売りの保険付き運用術とは!?」

    ⑨トレンドウォッチバナー 20190902.jpg

    https://www.youtube.com/watch?v=xeapQ8XElNs

    このサービスは岩井コスモ証券の顧客限定サービスであり、口座のない方はぜひ岩井コスモ証券に口座を開設してくださるようお願いします。

    「日経225売り+NYダウ買い」のマーケットニュートラル取引なら、岩井コスモ証券の「くりっく株365」が便利です。

    (石原順)

    ⑩くりっくバナー 20190902.jpg


    ラリー・ウィリアムズの日本市場予測

    ラリー・ウィリアムズは「9月の株式市場は良くない月」といいながら、日経平均には強気で買い場を探しているようだ。一方で、先週同様、日本円については円高をみているようである。

    現状の日本市場で円高・日本株高というのは考えにくいので、今週もそこらへんが疑問ではある。筆者がみている日経平均のチャートをみてみると、現状は強含みのレンジ相場といった状況である。


    ●ラリー・ウィリアムズの日経平均予測
    ⑪LW日経平均予測 20190902.png
    出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2019年9月2日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。有料レポートのため、チャートおよび文章の一部を隠しています。

    ●ドル建て日経平均(日足)
    筆者のみているテクニカル指標である日経平均のトレンドサイクルは買い転換しているが、現状の相場はMACDの形状をみるとレンジである。
    ⑫ドル建て日経平均 20190902.png
    出所:パンローリング カスタムチャート

    ●ラリー・ウィリアムズの日本円通貨先物予測
    ⑬LW 日本円通貨予測 20190902.png
    出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2019年9月2日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。有料レポートのため、チャートおよび文章の一部を隠しています。


    日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com/

    を参照されたい。




    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。

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