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「マーケットの最前線」

2019年8月 5日

第188回「1998年の相場や2008年の相場と似ている現在の株式市場」石原順

石原順 石原順

  • 貿易戦争はFRBの手に負えない!?

    筆者は8月が円高・株安の本番だとして、レポート、ラジオ、メルマガなどで警鐘を鳴らしてきた。今、まさに円高・株安が到来している。
    また、2008年のリーマンショックで金融資本主義、新自由主義、グローバリゼーションと言われるこれまでの成長モデルは終わったと指摘してきた。

    米国が好景気と言ったところで、わずかトップ1%が良いだけで、資本主義の成立と繁栄に不可欠となる中間層は没落してしまっているのである。今のまま新自由主義を続けていても貧富の格差は広がるいっぽうで、事実上、中間層は消滅に向かっている。このためデフレ圧力は高まり、金利には下げプレッシャーがかかることになる。

    ケインズが<経済の死>と言ったレベルにまで下がってきた現状の長期金利の低下は、金融資本主義、新自由主義、グローバリゼーションと言われる成長モデルが終焉を迎えていることを表しているのかもしれない。

    ●米国の貿易赤字とトランプの政策転換
    金融資本主義、新自由主義、グローバリゼーションと言われる成長モデルが終焉を迎えている
    リーマンショックで金融資本主義や新自由主義は終わった。リーマンショック後、FRBはデフレ回避という大義名分の「バブル飛ばし(損失先送り策)」をやってきた。金融資本主義が格差の拡大と富の偏在で終焉を迎え、保護主義・孤立主義が台頭。

    ①米国貿易赤字 20190805.png
    出所:セントルイス地区連銀

    現在のトランプ関税は、1930年のスムートホーリー法の再来だ。

    *《Smoot-Hawley Tariff Act》1930年に米国のフーバー政権下で成立した関税法。1929年に始まった大恐慌の際、国内産業保護のため農作物など2万品目の輸入関税を平均50パーセント引き上げた。報復措置として多くの国が米国商品に高い関税をかけたため、世界貿易が停滞。恐慌を深刻化させたとされる。

    トランプ大統領の誕生は米国の建国史上、初めての政権交代であり、現代の革命である。彼は政治家ではなくビジネスマンである。反体制は、結局は体制に取り込まれてしまい、体制の補完装置となるだけだが、トランプは従来の政治家と同じ土俵に上がっていないところが革新的なのである。

    貿易戦争について、米中どちらが有利になるとか不利になるとか、的外れな報道がなされているが、歴史が明らかにしているように、貿易戦争の末路は共倒れである。トランプは世界がどうなろうと知ったことではない。国内問題第一主義だからだ。それがいいとか悪いとかではなく、トランプの登場は、貧富の格差が促した歴史の必然であり、彼は就任以来、全くぶれずに当初の目的に添って政治を行なっている。

    <トランプの戦略>は以下の3点だ。

    ①グローバル企業の生産体制を破壊し、生産拠点を米国に戻す(米国人の雇用の確保)。

    ②同盟国から米軍を撤退させ、軍事的に独立させる。その過程で軍事兵器を売り込み、貿易赤字を縮小させる(トランプ大統領は戦争するふりをするが、実際に戦争はしない)。

    ③貿易戦争(関税・数量規制)の終着点は貿易不均衡の是正と米国の赤字解消であり、最終的には「プラザ合意2.0」が発動される可能性

    トランプがこうした政策をビジネス的、プロレス的に進める中で、FRBは貿易戦争の激化を解決できるわけではない。それでも、今後、市場はFRBに早期の利下げや、利下げが終わればQEなどを催促することになろう。筆者がずっと述べてきた<金融政策のホテルカリフォルニア化>である。

    「強気の投資家は、"茹でカエル"のようなものだ。貿易戦争は長く続き、どれだけ紛争がヒートアップしているか気づいていない。彼らはまだ害を受けることなく、株式市場から抜け出すことができるが、殆どはそうしないだろう。彼らはコックが火を消し全てが大丈夫になることを願っている。貿易戦争が終わるまで株式投資かを取り巻く環境は日々、少しずつ悪くなる。鍋が沸騰し、投資家が火傷をした時(損失を被る時)にようやく理解されるだろう。」(Project Syndicateの2019年5月27日 「Japan Then, China Now あの時は日本、いまは中国」)との指摘にあるように、ここからの金融緩和で相場は"少しずつ悪くなる"だろう。"茹でカエル" にならないようにしたい。


    ウォーレン・バフェットは暴落する前に株を売り、暴落すると株を買うという逆張り投資家

    ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイの現金比率は2016年以降上昇し、現在手元現金が1,110億ドル(約12兆円)に達している。投資するものがないので自社株買いをする(バフェットとしてはそれが一番安全だということだろう...)と言っているが、次の危機に備えた動きだろう。

    バフェット指数(米国株式市場の時価総額の名目GDP[国内総生産]に対する比率)が150%近い現状では、バフェットは少なくとも長期の買いポジションを持つ時期ではないという判断のようだ。

    ●バークシャー・ハサウェイの現金ポジションとS&P500の推移
    ②バークシャ現金 20190805.png
    出所:https://www.marketwatch.com


    バブル相場にロジックはないが、それでも高すぎるバフェット指数とシラーPER

    NYSEとナスダックの合計時価総額を米国の名目GDPで割った値であるウォーレン・バフェット考案の<バフェット指数>(100%を超えると過熱水準)をみると、現在は150%と過去最高水準にある。エール大学のロバート・シラー教授が考案した<シラーPER>も現在30倍を超えているが、過去の相場で<シラーPER>が30倍を超えたのは2000年のドッドコムバブル時と世界恐慌がおこった1929年の2回しかない。通常のPERも歴史的に高水準にあるが、悪材料が出ても市場は材料視しておらず、その楽観は過剰と判断される水準に達している。現在の相場はファンダメンタルズが正当化する範囲を超えているが、これこそがバブル相場の特徴である。バブル相場にロジックはない。「まわりはみんな儲けている・・自分だけが取り残される」という焦りや恐怖の心理的相場は、相場から合理性を奪ってしまうのである。

    ●バフェット指数は150%近辺まで上昇
    ③バフェット指数 20190805.png
    出所:www.gurufocus.com

    ●シラーPERはITバブル以来の水準
    ④シラーPER 20190805.png
    出所:www.multpl.com

    バークシャー・ハサウェイの現金ポジションの前回のピークは、金融危機直前の2007年末の433億ドルである。2008年にはリーマン危機の最中、ゴールドマンサックスの株を安く手に入れて大もうけしたが、2008年末の現金ポジションは255億ドルに減っていた。

    ウォーレン・バフェットは暴落する前に株を売り、暴落すると株を買うという逆張り投資家だ。これは、なかなかできることではない。人間の心理に素直に従って投資行動をすると、暴落する前に株を買い、暴落すると株を売らざるを得ないというバフェットと逆の行動になってしまうのである。


    2019年の米国株相場は1998年および2008年と似ている

    今後の米国株市場はどうなるのだろうか?運用者の間では周知の事実だが、2019年の米国株式相場は1998年の米国株式相場と相似しており、1998年の相場をなぞる形で進行している。1998年相場が2019年相場の先行指標となっているのである。

    これはチューダーファンドが昔よく使っていたアナログモデルという相場の将来予測方法である。今後もこの通り動くわけではない。しかし、8月の米国株式市場はヤバイという声が多い。


    ●2019年(黒)と1998年(青)のS&P500の推移
    ⑤SP500 2019と1998 20190805.png
    出所:ゼロヘッジ

    ●2019年のS&P500相場(上段)と1998年のS&P500相場(下段)
    ⑥SP500 2019と1998 上段下段 20190805.png

    ●1998年のS&P500相場は8月と10月のダブル底
    ⑦SP500 1998ダブル底 20190805.png

    もう一つのアナログチャートは、リーマンショック相場と現在の相場である。2006年1月からのNYダウの動きと2016年12月からの現在までのNYダウの動きは非常に似通っている。

    いずれにせよ8月から10月までの相場は注意を要する位相であろう。


    ●2006年1月からのNYダウの動きと2016年12月からの現在までのNYダウの動き
    ⑧NYダウ 2006からと2016から 20190805.png


    新コンテンツ『石原順の日本株トレンドウォッチ』サービス開始!

    8月から岩井コスモ証券で『石原順の日本株トレンドウォッチ』という新しいサービスが始まっている。

    ●『石原順の日本株トレンドウォッチ』
    ⑨トレンドウォッチ画像 20190805.png
    ⑨-1 20190805.png
    ⑨-2 20190805.png

    強いトレンドが発生している期間は、「上昇トレンド銘柄一覧」か「下降上昇トレンド銘柄一覧」のなかに掲載されるが、新たに売りトレンドや買いトレンドが発生した銘柄には★マークが付くようになっている。投資は自己責任であり、最終的な売買の判断は読者ご自身でしなければならないが、強い買いトレンドや売りトレンドが発生中の銘柄を筆者のトレンド分析に基づいて抽出する『石原順の日本株トレンドウォッチ』が、読者の株式投資の参考になれば幸いである。

    銘柄は引け後毎日夕方に掲載される。詳細はサービスの開始前にまた紹介したい。このサービスは岩井コスモ証券の顧客限定サービスであり、口座のない方はぜひ岩井コスモ証券に口座を開設してくださるようお願いします。

    これから筆者のブログ『石原順の日々の泡』
    https://ishiharajun.wordpress.com/
    でもトレンド銘柄を記事として取り上げていく予定である。乞うご期待!

    (石原順)

    ●アドバンテスト(日足)とトレンドシグナル
    ⑩6857 20190805.png
    出所:岩井コスモ証券FLASHチャート

    ●スズキ(日足)とトレンドシグナル
    ⑪7269 20190805.png
    出所:岩井コスモ証券FLASHチャート

    ●TDK(日足)とトレンドシグナル
    ⑫6762 20190805.png
    出所:岩井コスモ証券FLASHチャート

    ●シチズン(日足)とトレンドシグナル
    ⑬7762 20190805.png
    出所:岩井コスモ証券FLASHチャート


    ラリー・ウィリアムズの日経平均予測

    ラリー・ウィリアムズは先週、日経平均の予測を大きく外している。もともと大局観は違うが、短期的にも筆者は強気の予想に違和感があったので取り上げなかった。

    今週のラリーは9月までは弱気に転換したようだ。


    ●ラリー・ウィリアムズの日経平均予測
    ⑭LW 日経平均予測 20190805.png
    出所:ラリー・ウィリアムズの週刊マーケット分析(ラリーTV)2019年8月4日 ラリー・ウィリアムズおよび国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載。有料レポートのため、チャートおよび文章の一部を隠しています。



    日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com/

    を参照されたい。



    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。

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