マーケットレポート

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「マーケットの最前線」

2018年1月 9日

第108回「トレンドが一目瞭然!標準偏差ボラティリティトレードの教科書」石原順

石原順 石原順

  • 標準偏差ボラティリティトレードはあらゆる商品とタイムフレームに拡張が可能である

    相場の分析にはファンダメンタルズ分析とテクニカル分析がある。取引する金融商品をどれにするのか絞り込んだり、マーケットテーマを見定めたりするためにはファンダメンタルズ分析は必要であろう。

    だが、筆者の独断でいえば、相場を分析するうえで最も重要なのは「価格そのものの分析」、つまりテクニカル分析です。トレンドを測る移動平均線から始まり、一目均衡表、相場の買われすぎ・売られすぎを示すオシレーター系のRSI等、様々なチャート分析の手法があるが、絶対の法則は存在しない。そんなものがあれば、そもそも相場が成立しないだろう。

    筆者の辿り着いた結論は、相場とは確率に賭けるゲームであり、その優位性の優劣でパフォーマンスが決まるということである。

    相場には方向性を持っている「トレンド相場」と無秩序に動いている「調整相場(ランダム相場)」がある。現在の相場が「トレンド相場」なのか、あるいは「ランダム相場」なのかを見定めるのに有効なのが「標準偏差ボラティリティ(Standard Deviation)」である。

    タートルズの総帥リチャード・デニスが、「タートルトレーディング戦略はもう通用しない」と発言したのは15年以上も前になるが、トレーディングや市場の環境が激変し、昔流行った売買手法のほとんどは、現在の市場では通用しない。しかし、筆者が使っている「標準偏差ボラティリティトレードモデル」だけは、長きにわたって効力を発揮している。

    「標準偏差ボラティリティトレードモデル」では、相場に方向性が出てくると、標準偏差ボラティリティとADX(アベレージ・ディクショナル・インデックス)が上昇する。標準偏差ボラティリティとADXが低い位置から上昇する場合は、相場が保ち合いを離れ、強い方向性をもつシグナルとなる。

    相場に大きなトレンドが発生する可能性のある局面は、標準偏差ボラティリティが上昇し、ボリンジャーバンドの±1シグマ(個別株および株式インデックスのみ0.6シグマを使用)をブレイクしたときである。相場がボリンジャーバンドの±1シグマ(株式インデックスの場合は0.6シグマ)の外側にあるうちはトレンド相場が継続しており、ポジションを持ち続けるという手法だ。
                                      
    ワイルダーが考案したADXはDI(方向性指数)の平均(アベレージ)で、価格の変動幅を指数化してトレンドの強弱を指数化したものだ。一般的なADXと波形が違うという質問を山ほど受けてきたが、筆者はワイルダーのオリジナルADX、すなわち、ADXを電卓で計算する簡易法である<修正平均ADX>を使っている。標準偏差ボラティリティとADX(アベレージ・ディクショナル・インデックス)の2つの指標が低い位置から一緒に上昇している時は、相場が保ちあいを離れ強いトレンドが発生したという判断になる。

    よく誤解されるが、標準偏差ボラティリティとADXはトレンドの強弱を表す指標であり、相場が上昇しているのか、下落しているのかを示す指標ではない。

    標準偏差ボラティリティは、ジリ高・ジリ安相場には弱いという弱点があるが、確率の勝負においては最もロジカルな指標であることは間違いないだろう。相場の逆張り・順張り・オプション取引など、何にでも使える便利な指標である。筆者は、長年この指標でトレンドの有無を確認してきた。それはこれからも変わらないだろう。


    ●標準偏差ボラティリティとトレンドの判定:サンプル ドル/円(日足)
    上段:13日標準偏差ボラティリティ(青)・26日標準偏差ボラティリティ(黄)
    ①標準偏差ボラティリティとトレンド.png


    相場に強いトレンドが出ているサインは、標準偏差ボラティリティ(パラメーター:26)とADX(パラメーター:14)の2本のラインが一緒に上昇しているところである。売買注文のタイミングは、ボリンジャーバンド(パラメーター:21)で判断する。チャートのローソク足がボリンジャーバンドの±1シグマのラインを外側に飛び出したところがエントリー(新規注文)のポイントである。必ず標準偏差ボラティリティとADXのラインの傾きを確認して、トレンド相場であることを確認することがマストである。あとは、ローソク足が±1σの内側に戻ったら、エグジット、すなわちポジションを手仕舞うだけだ。


    ●日経平均CFD(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル
    上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ
    中段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
    下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド
    ②日経平均CFD日足.png

    ●日経平均CFD(4時間足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル
    上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ
    中段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
    下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド
    ③日経平均CFD4時間足.png

    ●日経平均CFD(1時間足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル
    上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ
    中段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
    下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド
    ④日経平均CFD1時間足.png

    ●ドル/円(4時間足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル
    上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
    中段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
    下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド
    ⑤ドル円4時間足.png

    ●ドル/円(1時間足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル
    上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
    中段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
    下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド
    ⑥ドル円1時間足.png

    ●ドル/円(30分足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル
    上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
    中段:修正平均ADX(14)=赤・標準偏差ボラティリティ(26)=青
    下段:赤色の期間=買いトレンド・黄色の期間=売りトレンド
    ⑦ドル円30分足.png

    トレードの結果を「損小利大(そんしょうりだい)」にするには、相場についていくという順張りの手法が最適である。標準偏差ボラティリティとADXでトレンドを判定し(トレンドの判定)、ボリンジャーバンドの±1シグマでロスカットを設定する(損失限定)。そして、相場が±1シグマの外にある限り利食いはしない。相場が±1シグマの外にある限り、利益は伸びていく(利益の極大化)。

    標準偏差ボラティリティやADX、またボリンジャーバンドのパラメーターを変えることは問題ないが、筆者はパラメーターの最適化は一切しない。標準偏差ボラティリティは26、ADXは14、またボリンジャーバンドは21で固定している。


    2018年のテールリスクはボラティリティの上昇とジャンク債金利の上昇

    2018年のテールリスクはボラティリティの上昇と金利の上昇である。ゴルディロックス相場の生命線は低ボラティリティ(低ボラ期の株は一本調子に上げて行く)である。S&P500のオプション価格であるVIX指数の動きを注視したい。そして、債券金融バブルの象徴、あるいはバブル崩壊の炭鉱のカナリアと言われるジャンク債(High Yield債)の動向には特に注意を払いたい。


    ●VIX指数(月足)2000年~2017年
    株の長期投資(5年~10年投資)の買い場は緑の矢印である。株はボラティリティ(変動率)がピークアウトし、低下していく過程で上昇する商品である。2008年の金融危機以降、大きな買い場が3回あった。
    上段:VIX指数(俗称:恐怖指数)
    下段:14ヶ月ATR(緑)
    ⑧VIX指数月足.png

    ●iShares iBoxx $ High Yield Corporate Bond ETF(日足)
    炭鉱のカナリアと呼ばれるジャンク債のETF。ゴルディロックス相場の長期延命観測で、現在、買いトレンド(ジャンク債金利低下トレンド)が発生している。
    上段:14日修正平均ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
    中段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)
    ⑨iBoxxとhighield.png

    ●BofA Merril Lynch US High Yield Effective yield
    ⑩BofA.png
    出所:セントルイス連銀

    ●BofA Merril Lynch EURO High Yield Effective yield
    ⑪BofA Euro.png
    出所:セントルイス連銀


    今週のATRチャネル

    今週は週足を掲載しておく。

    ATR(アベレージトゥルーレンジ)はTR(窓開けを含めた1週間の最大値幅)の平均である。ATRチャネルは動的に変化する予想レンジであり、利食いや相場反転のポイントとして、筆者にとっては有効なツールとなっている。

    下のチャートは、過去X週間のATRを過去X週間の加重移動平均線にプロットしたものである。3本のATRのバンド幅はATRの1.6倍、3.2倍、4.8倍である。このATRチャネルは、すべての市場と時間枠(タイムフレーム)に拡張が可能である。

    ATRチャネルは、筆者が相場の天井と底の発見、すなわち、相場の転換点をとらえるのに用いている道具(ツール)で、相場がATRバンドの3.2倍の外(オレンジの帯)にある時、ADX(8)とSTD(26)の両方がピークアウトすると、相場が反転する可能性が高い。


    ●日経平均CFD(週足)
    上段:ATRチャネル
    下段:ADXsmoothed8(赤)・標準偏差ボラティリティ26(青)
    ⑫日経平均ATRチャネル.png

    ●NYダウCFD(週足)
    上段:ATRチャネル
    下段:ADXsmoothed8(赤)・標準偏差ボラティリティ26(青)
    ⑬NYダウATRチャネル.png

    ●ドル/円(週足)
    上段:ATRチャネル
    下段:ADXsmoothed8(赤)・標準偏差ボラティリティ26(青)
    ⑭ドル円ATRチャネル.png

    ●ユーロ/ドル(週足)
    上段:ATRチャネル
    下段:ADXsmoothed8(赤)・標準偏差ボラティリティ26(青)
    ⑮ユーロドルATRチャネル.png


    日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』

    https://ishiharajun.wordpress.com

    を参照されたい。



    石原順 プロフィール
    1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファンドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。
    相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍中。

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